文献情報
文献番号
200620010A
報告書区分
総括
研究課題名
登録症例に基づく神経芽細胞腫マススクリーニングの効果判定と医療体制の確立
課題番号
H16-子ども-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
檜山 英三(広島大学・自然科学研究支援開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 升島 努(広島大学・大学院医歯薬学総合研究科先進医療開発科学講座分子治療デバイス研究所)
- 赤澤 宏平(新潟大学・医歯学総合病院医療情報部)
- 大瀧 慈(広島大学・原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野)
- 澤田 淳(京都市子ども保健医療相談事故防止センター・京-みやこ-あんしんこども館)
- 中山 雅弘(大阪府立母子保健総合医療センター・検査科)
- 杉本 徹(京都府立医科大学・大学院医学研究科小児発達医学)
- 林 富(東北大学・大学院医学系研究科発生発達医学講座小児外科学分野)
- 金子 安比古(埼玉県立がんセンター・臨床腫瘍研究所)
- 中川原 章(千葉県がんセンター・研究所)
- 福澤 正洋(大阪大学・大学院医学系研究科外科学講座小児成育外科学)
- 浜崎 豊(静岡県立こども病院・臨床病理科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
生後6ヶ月児を対象とした神経芽腫検査事業(マススクリーニング・以下マス)が、治療不要な腫瘍の過剰診断と死亡率の低下に関する一定の見解がなかったことから平成15年に休止が決定した。その休止の条件として①本症の罹患と死亡の正確な把握、②マスの実施時期変更等、新たな検査方法の検討・評価、③本症による死亡の減少を目指した臨床診断と治療成績向上のための研究の推進と実施体制の確立、の三点について速やかに対応することが検討会から示された。そこで、本研究はこれらの課題の解決を目的とした。
研究方法
①については、小児がんの公的データベースが存在しないことから、1981年から2000年までに発症し、5年後の予後調査が終了した学会登録例に、乳児スタディグループのデータを結合し、約5,000例(マス発見例2,255例)のデータベースを構築した。②に対して、前向き研究案を策定して提示した。③について、網羅的ゲノム解析、血清・尿のプロテオーム解析を行った。
結果と考察
①については、人口動態調査死亡票と小児慢性特定疾患データベースと照合から65%程度の症例が捕捉されていた。HPLCによる定量法のマスを受診した群では、6ヶ月以降の神経芽腫による累積罹患率が30.8、累積死亡率が2.7となり、非受診群(11.9、5.12)に比べ、有意に罹患率は上昇、死亡率は低下していた(P<0.01)。HPLC(high performance liquid chromatography)による定量法が導入された1990年以降では2才以降の年長児症例が半減していた。さらに、MYCN増幅例を検討すると、1才前半と2才以降の症例数が北米の報告に比べ有意に少なかった(P<0.05)。②に対して、後向き研究や無治療経過観察例データなどから前向き研究の実施時期は生後18ヶ月と決定し、プロトコールを提示した。③に対して、ゲノム異常は大きく4群に分類され予後良好腫瘍が層別できた。網羅的分子追跡法(マスマッピング)により、予後不良な神経芽腫に特異的な候補マーカーが見出された。主要施設で保存されているマス施行中の切除標本をバーチャルな形のバンキングとした。
結論
本邦の人口ベースの検討から6ヶ月マス受診群はHPLC導入後、明らかに死亡率が低下していた。生後18ヶ月がスクリーニングとして適した時期であり、新規候補マーカーを診断・治療効果の判定や、今後の新たな形のスクリーニングへ導入する予定である。さらに、研究の推進と実施体制の確立のために、多くの研究に利用できる検体バンクを構築した。
公開日・更新日
公開日
2007-04-10
更新日
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