新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究

文献情報

文献番号
200620008A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三科 潤(東京女子医科大学母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 裕(実践女子大学生活科学部)
  • 加我君孝(東京大学医学部耳鼻咽喉科学)
  • 福島邦博(岡山大学医学部耳鼻咽喉科学)
  • 朝倉啓文(日本医科大学産婦人科学)
  • 田中美郷(田中美郷教育研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新生児聴覚スクリ-ニングを実施して聴覚障害を早期発見し、早期支援により聴覚障害児とその家族のQOLを高めることである。我々はすでに、本邦における先天難聴の頻度は正常新生児においても出生2,000例に1例の高頻度である事を明らかにし、自動聴性脳幹反応(自動ABR)及び耳音響放射法(OAE)を用いたスクリ-ニングの有効性、および、早期発見・早期療育の効果を明らかにしてきた。本年度は以下の検討を行った。
研究方法
1)効果的なスクリーニング方法に関して、OAEおよび自動ABRの二段階スクリーニングの検討を継続した。所要経費が少なくかつ、要再検率が低い、有効な方法である。
2)ろう学校幼稚部および難聴幼児通園施設を対象に、3回目の難聴児早期指導機関の調査を実施した。18年度在籍の0歳児は517名で、この内スクリーニングで発見した0歳児は323名(62%)に達した。また、スクリ-ニング児の補聴器装用開始時期は5か月から6か月であり、スクリーニングなし例の13か月から36か月に比して著明に早期であった。
3)スクリーニングによる早期発見・早期支援の効果に関する検討:
(a) スクリ-ニングで発見された、高度難聴児の就学時の聴能および言語能力を検討した。知的な遅れがない例の言語発達は健聴児と同等であった。特に、人工内耳装用例の語音明瞭度、発話明瞭度および言語性IQは良好であった。
(b)難聴の発見年齢と就学年齢時の言語性IQ値の検討
 スクリーニング後、精査機関に紹介された新生児・乳幼児の平均受診年齢は6か月、難聴が気づかれて受診した幼児では平均3歳2か月であった。発見年齢が遅い程、就学時の言語性IQが有意に低かった。
結果と考察
4)早期発見例の家庭訪問支援を継続した。
5)軽度・中等度難聴乳児もスクリーニングにより早期発見でき、早期支援開始により、言語コミュニケーションの発達や、「きこえにくさ」の保護者の適切な理解を育める。
6)平成13年から18年度までに、17自治体で実施された新生児聴覚検査事業の問題点を検討した。全出生児を対象の事業は岡山県、長崎県、北九州市のみと少ない上に、3年間のみで事業を終了した自治体も多い。しかし限定的実施でも、公的スクリーニング実施により、周辺の自費スクリーニングが拡がる効果を生んだ。事業未実施県のスクリーニング実施率は低い。

結論
自動聴性脳幹反応(自動ABR)及び耳音響放射法(OAE)を用いたスクリ-ニングは有効であり、早期発見・早期療育の効果は明らかである。

公開日・更新日

公開日
2008-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200620008B
報告書区分
総合
研究課題名
新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三科 潤(東京女子医科大学母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 裕(実践女子大学生活科学部、東邦大学医学部新生児学)
  • 加我君孝(東京大学医学部耳鼻咽喉科学)
  • 福島邦博(岡山大学医学部・歯学部付属病院耳鼻咽喉科学)
  • 朝倉啓文(日本医科大学第二病院産婦人科学)
  • 田中美郷(田中美郷教育研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、新生児聴覚スクリ-ニングを実施して聴覚障害を早期発見し、早期支援により聴覚障害児とその家族のQOLを高めることである。
我々はすでに、本邦における先天難聴の頻度は正常新生児においても出生2,000例に1例の高頻度である事を明らかにし、自動聴性脳幹反応(自動ABR)及び耳音響放射法(OAE)を用いたスクリ-ニングの有効性を明らかにしてきた。
研究方法
1)正常新生児を対象に新生児聴覚スクリーニングを実施する場合には、第一段階にOAEを用い、要再検例にAABRを用いる、二段階スクリーニングが病院内でも、地域で行う場合でも、最も効率的であることを示した。
2)スクリーニングの普及度の調査において、日本産婦人科医会会員を対象とした調査において、平成18年の県単位のスクリーニング実施状況は、90%以上3県、70-90%:7県、50-70%:15県、30-50%:15都道府県、30%未満7県であった。
3)乳児の聴覚精密診断について、精密ABRの詳細な検査条件、聴性定常反応の活用法を示した。
4)平成16年から実践した家庭訪問支援は、支援を受ける家族のみならず、支援側にとっても有効な方法であることを明らかにした。
結果と考察
5)スクリーニング・早期診断・早期療育により、高度難聴児においても、就学時に健聴児と同等の言語力を獲得出来たことを明らかにした。特に、人工内耳手術例は語音明瞭度、発語明瞭度、言語性IQが高いことを示した。一方、スクリーニングを受ける機会が無く、発見が遅れた例においては、補聴開始月齢が高くなり、発見年齢が高いほど就学時言語性IQ値は低いことを示した。
6)聾学校および難聴幼児通園施設対象の調査を2回実施した。スクリーニングにより発見される難聴児は年々増加しており、18年度は0歳児517名中、62%になった。スクリーニング例の補聴器装用開始時期は平均5.3か月で、非スクリーニング例の平均25.5か月に比し、著明に早期であった。早期支援機関では、指導人員不足が指摘された。
7)平成18年度までに、17都道県で実施された新生児聴覚検査事業の問題点を検討した。
8)平成16年から実践した家庭訪問支援のマニュアルとして、家族支援プログラム、家族支援マニュアル等を翻訳した。啓蒙活動として、講演会、シンポジウム等を開催し、保護者用リーフレット作成した。
結論
新生児聴覚スクリ-ニングにより聴覚障害が有効に発見でき、早期発見・早期支援により高度難聴児においても、就学時には健聴児と同等の言語力を獲得出来たことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2008-03-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
自動聴性脳幹反応又は耳音響放射を用いて、出生病院入院中に実施する新生児聴覚スクリ-ニングにより、効果的に新生児期の聴覚障害を発見出来ることを示した。この結果、本邦における早期療育が必要な両側難聴の頻度は正常児からも2,000出生に1例あり、スクリーニング実施に値する頻度であることを明らかにした。また、スクリーニングで発見し、早期診断後の適切な早期療育により、殆どの高度難聴例においても、就学前の言語力は健聴児と変わらないレベルに達し得ることを示し、早期発見・早期療育による効果を明らかにした。
臨床的観点からの成果
正常児を対象にスクリーニングを実施する場合に、第1段階では簡便で検査機器および消耗品が安価な耳音響放射で検査し、refer例には自動聴性脳幹反応で検査する、2段階スクリ-ニングが、効率的かつ経済的に新生児聴覚スクリーニングを実施出来ることを示した。また、新しい支援の形態として、家族中心の支援として家庭訪問支援を実施し、家庭における音環境把握および保護者への支援に効果的であった。
ガイドライン等の開発
平成18年度に新生児聴覚スクリ-ニングマニュアル(改訂版)を作成した。
その他行政的観点からの成果
新生児聴覚検査事業がモデル事業として、平成13年度から平成18年度まで、18都道府県において実施された。
また、長野県は県独自の長野県新生児聴覚検査事業を平成14年から実施している。
その他のインパクト
NHK首都圏ニュースで新生児聴覚スクリ-ニングについての取材を受け、放映された。日本医師会テレビ健康講座、日本短波放送医学講座で新生児聴覚スクリ-ニングについての講演を行った。
平成16年及び18年に新生児聴覚スクリ-ニングおよび難聴児療育に関する公開シンポジウムを開催し、平成18年には米国の研究者による公開講演会を開催した。保護者向け、啓蒙リーフレットを作成し、日本産婦人科医会を通じて産科医療機関に配布した。また、改訂版の新生児聴覚スクリ-ニングマニュアルを作成した。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
59件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
新生児新生児聴覚検査事業(モデル事業H13~18年)長野県新生児聴覚検査事業(H14~)
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-