若い女性の食生活はこのままで良いのか?次世代の健康を考慮に入れた栄養学・予防医学的検討

文献情報

文献番号
200620002A
報告書区分
総括
研究課題名
若い女性の食生活はこのままで良いのか?次世代の健康を考慮に入れた栄養学・予防医学的検討
課題番号
H16-こども-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉池 信男(独立行政法人国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡 秀興(東京大学大学院医学系研究科発達医学教室)
  • 豊田 長康(三重大学医学部産婦人科学教室)
  • 瀧本 秀美(国立保健医療科学院生涯保健部)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院研修企画部)
  • 三浦 克之(金沢医科大学医学部公衆衛生学教室)
  • 佐々木 敏(国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
28,166,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
母性としての役割を考えると、極端なダイエットを含め、「わが国の若い女性の食生活はこのままで良いのか?」という懸念が大きい。次世代の国民の健康を確保という観点から、栄養学的・疫学的・臨床的検討を行うことを目的とする。
研究方法
①乳幼児検診受診者と同地域の20歳健診受診者の検診データとのレコードリンケージが行われている約5千人を対象に、その後約15年後の調査を行った。有効回答の得られた1124人に対して再度郵送調査を行い、追跡データを得た。②全国8施設で妊娠から末期および産褥期に詳細な栄養調査を行った。母体の非妊娠時の体位と妊娠時の栄養摂取量、身体活動量、体重増加、周産期予後との関連について検討を行った。③産科施設において197名の妊婦を縦断的に調査し、妊娠12、20、32、36週に、血清脂質、ケトン体等の測定、及び食事調査を行い、妊娠予後との関係を分析した。④中高一貫校の生徒を対象に出生時及び乳児期の栄養の状況等に関する調査を実施し、在学中に行われた健康診断データのレコードリンケージを行い、レトロスペクティブコホートとして解析した。⑤「妊産婦のための食事バランスガイド」を活用した食生活評価及び相談を行うとともに、先行研究のレビューにより栄養教育の理論的枠組みの検討を行った。
結果と考察
①男性においては出生時体重が低いほど30歳代における収縮期血圧は高く、女性においては低出生体重群において30歳代のヘモグロビンA1cが高い傾向があった。女性では出生時体重が低いほど腹囲/身長比が大きくなる傾向が認められた。②妊娠初期、中期、末期及び産褥期の摂取エネルギー量は各1783、1812、1788、1921kcalと基準よりもかなり少なかった。③高ケトン体血症は妊娠20週以降で20%を超え、32週で32.7%と高かった。④男子高校1年、2年生で、出生時体重とLDLコレステロールの間に関連が見られた。⑤実地での予備的検討及び栄養教育の理論的枠組みを踏まえて、教育ツール(リーフレット、手帳)を作成した。
結論
妊娠期間中の栄養(エネルギー、葉酸等)は、極めて不十分であり、血中ケトン体、葉酸濃度等による栄養学的モニタリングを検討する必要がある。食生活上の問題を是正するためには、従来からの“栄養素教育”から、「食事バランスガイド」等を活用した“底辺層”に対するアプローチが不可欠である。長期間のコホート研究については、データ解析・論文発表を行うとともに、継続的なフォローアップを今後の課題とする。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200620002B
報告書区分
総合
研究課題名
若い女性の食生活はこのままで良いのか?次世代の健康を考慮に入れた栄養学・予防医学的検討
課題番号
H16-こども-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉池 信男(独立行政法人国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡 秀興(東京大学大学院医学系研究科発達医学教室)
  • 豊田 長康(三重大学医学部産婦人科学教室)
  • 瀧本 秀美(国立保健医療科学院生涯保健部)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院研修企画部)
  • 三浦 克之(金沢医科大学医学部公衆衛生学教室)
  • 佐々木 敏(国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若い女性や妊婦の食生活の問題点を検討した研究の多くは、食習慣の一断面や特定の疾病との関わりを臨床的な観点からとらえる等のものであり、「次世代の健康の確保」という長期的な視野に立って仮説を置いた疫学的研究はわが国ではほとんど無い。若い女性及び妊娠期の女性で栄養素摂取量が十分では無いことについては、国民健康・栄養調査やこれまでの我々の解析等ですでにわかっている。出生時低体重が成人後の生活習慣病発症(高血圧、糖尿病、循環器疾患等)の一因になることが欧米での長期追跡研究で明らかになっているが、わが国では分担研究者の三浦らの報告のみである。このような背景から本研究を開始した。
研究方法
栄養学、産科学、疫学、母子保健学の視点から、総合的なアプローチを行った。研究の主要なコンポーネントは、次の3点である。①若い女性の“やせ願望”・体重減少に関連する心身の健康リスクの検討、②妊娠中の栄養状態に対応した体重管理・栄養指導に関する検討、③出生体重とその後の生活習慣病リスクとの関連についての検討。これらの検討を踏まえながら、妊婦に対する栄養教育教材の開発と栄養教育上理論背景及び評価を行った。
結果と考察
妊娠期の経時的な血液や尿等の分析から、エネルギーの摂取不足に起因すると思われる高ケトン体血症が、妊娠中期及び末期に増加することが明らかとなった。日本人集団を対象とした30年以上の長期追跡調査から、出生時体重と成人後のアレルギー性疾患発症との関連が示唆された。妊娠中の体重増加量と出生体重やその他のアウトカムとの関連について多施設データのpooled analysesを行い、疫学的な観点から堅固なエビデンスを得た。そして、全国の産科施設において実際にどのような栄養評価・管理がなされているかを明らかにした。さらに、2006年2月に厚生労働省より発表された「妊産婦のための食生活指針」を実際の普及啓発や教育指導の場で活用するためのツール及びマニュアルを開発した。
結論
妊娠期間中の栄養(エネルギー、葉酸等)は、極めて不十分であり、血中ケトン体、葉酸濃度等による栄養学的モニタリングを検討する必要がある。食生活上の問題を是正するためには、従来からの“栄養素教育”から、「食事バランスガイド」等を活用した“底辺層”に対するアプローチが不可欠である。長期間のコホート研究については、データ解析・論文発表を行うとともに、継続的なフォローアップを今後の課題とする。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
妊娠期の経時的な血液や尿等の分析から、エネルギーの摂取不足に起因すると思われる高ケトン体血症が、妊娠中期及び末期に増加することが明らかとなった。日本人集団を対象とした30年以上の長期追跡調査から、出生時体重と成人後の疾患発症との関連が示した。妊娠中の体重増加量と出生体重やその他のアウトカムとの関連について多施設データのpooled analysesを行い、疫学的な観点から堅固なエビデンスを得た。全国の産科施設における栄養評価・管理の実態を明らかにした。
臨床的観点からの成果
「妊産婦のための食生活指針」「妊娠期における至適体重増加チャート」「妊婦のための食事バランスガイド」(実際に普及啓発し、より効果的な栄養教育・指導につなげるためのツールを開発しており、今後、地域保健、病院等での実践的な展開が期待される。
ガイドライン等の開発
「健やか親子21」推進検討会(平成18年度)から発表された「妊産婦のための食生活指針」「妊娠期における至適体重増加チャート」「妊婦のための食事バランスガイド」(2006年2月)の基礎データの多くを提供した。上述のガイドラインやツールは、わが国ではこれまでまったくつくられたことのなかったものである。
その他行政的観点からの成果
本研究を基礎としてつくられたガイドライン等は、妊婦や若い女性に対する食生活及び栄養教育・指導上の拠り所となるものであり、その策定のエビデンスを提供したことの社会的意義は大きく、母子保健行政上重要な意味をもつ。
その他のインパクト
研究成果については、学術雑誌、学会発表に加え、インターネットやメディアを通じての情報発信も積極的に行った。本研究班での成果を含めて、妊娠期の栄養・食生活の重要性に対する認識が飛躍的に高まり、関連学会の招待講演、栄養士会等における研修・セミナーの講師依頼を研究班メンバーが多数受け、新しい知見・考え方の普及に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
46件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-