高齢者の腰痛症に係る効果的な診断・治療・リハビリテーション等の確立

文献情報

文献番号
200619096A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の腰痛症に係る効果的な診断・治療・リハビリテーション等の確立
課題番号
H18-長寿-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
戸山 芳昭(慶應義塾大学医学部整形外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(東京大学医学部整形外科学)
  • 菊地 臣一(福島県立医大整形外科 )
  • 四宮 謙一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外科)
  • 千葉 一裕(慶應義塾大学医学部整形外科 )
  • 持田 讓治(東海大学医学部外科学系整形外科 )
  • 武政 龍一(高知大学医学部整形外科)
  • 藤野 圭司(藤野整形外科医院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腰痛は国民生活に直接的、間接的に重大な影響を及ぼしており、その原因は、退行性疾患、椎間板変性、筋力低下、姿勢異常など多岐にわたる。そこで、その病態の解明、予後予測、新たな診断と治療方法、リハビリテーションプログラムの確立について研究をすすめ、エビデンスのある臨床データと基礎的知見を蓄積し、国民の生活機能改善への一助とすることを目的とした。
研究方法
1)骨粗鬆症性脊椎骨折患者のCTデータから3次元骨強度解析モデルを作製し、立位荷重と前屈位荷重のシミュレーションをおこなった。2)Logistic多変量解析によって、馬尾障害診断サポートツールの感度と特異度を評価した。3)腰痛患者における腰背部表面筋電図所見の特徴を解析した。4) VEGFを介する椎間板の生存シグナルを解析した。5)ヒト椎間板髄核と骨髄間葉系幹細胞の共存培養を確立した。6) 椎体形成術の低侵襲術式への改良を行った。7) 腰椎牽引時の椎体間距離および各椎体に作用する力の解析を行った。
結果と考察
1) 前屈位での予測骨折荷重が低い症例では、前方の皮質骨シェルと近傍の海綿骨密度が低い傾向にあり、骨折リスクは椎体に掛かる荷重方向に依存することが明らかになった。2) 感度0.86、特異度0.742、ROC曲線下面積0.906と信頼性の高い馬尾障害診断サポートツールが開発された。3) 腰痛患者は腰背筋が常に活動状態にあり、腰背筋の筋疲労度が大きく、腰背筋筋力訓練をおこなうことで筋疲労度が軽減することが示された。4) 椎間板組織において、VEGFはFlt-1を介した生存シグナルとして加齢変性に抑制的に作用する可能性が示唆された。5) 骨髄間葉系幹細胞との共存培養で活性化された髄核細胞の挿入は、機能的に優れた安全な細胞移植療法と考えられた。6) Biportal手技の椎体形成術は除痛効果に優れており、さらに低侵襲で安定した術式となった。7) 腰椎牽引荷重によって発生した2方向の応力は前屈姿勢による椎間板圧縮に拮抗し、腰痛緩和に有効的に働くことが示唆された。
結論
腰痛に悩む国民にとって有効な還元効果が得られるよう、エビデンスに基づいた医療の視点から、効果的な診断基準やガイドラインの作製、疫学的データに基づくサポートツール、さらに低侵襲の治療方法と効果的なリハビリテーションプログラムの確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
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