高齢者の腰痛に及ぼす脊柱変性、生活習慣要因および生活習慣病の影響と相互作用の解明

文献情報

文献番号
200619095A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の腰痛に及ぼす脊柱変性、生活習慣要因および生活習慣病の影響と相互作用の解明
課題番号
H18-長寿-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中村 利孝(産業医科大学医学部整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 英世(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 細井 孝之(国立長寿医療センター)
  • 井上 聡(東京大学医学部附属病院 抗加齢医学講座)
  • 斎藤 充(東京慈恵会医科大学 整形外科学講座)
  • 藤原 佐枝子(財団法人放射線影響研究所 臨床研究部)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 関節疾患総合研究講座)
  • 青柳 潔(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学)
  • 白木 正孝(成人病診療研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高齢者の腰痛に及ぼす脊柱変形、生活習慣要因および生活習慣病の影響を明らかにし、高齢者の腰痛の危険因子を包括的に検討すること、さらに、生活習慣やこれらの代謝異常への介入が腰痛発生にどのような効果があるかを検討することである。
研究方法
1)多施設共同研究として、肥前大島、広島、和歌山、長野、秋田、宇都宮の6つのコホートにおける60歳以上の男女高齢者のデータと、対照として日立コホートにおける60歳未満の勤労者のデータより腰痛と身体要因、生活習慣要因、生活習慣病などの共通項目を抽出しデータベースを作成。2)高齢女性の骨密度とGGCX遺伝子との関連を調査した。3)閉経後女性を対象に、ヒトWnt10bの遺伝子多型に関してBMDとの相関を、またWISP1のSNPと変形性脊椎症の指標と骨密度、遺伝子多型との関連を調べた。4)大腿骨頸部骨折患者25名と壮年、老年屍体25例を対象とし、コラーゲンの分子間の生理的架橋およびペントシジンを定量し各群で比較検討した。
結果と考察
1)多施設共同研究では、高齢者では3,004名、勤労者では46,950名のデータが集積された。腰痛有症率は女性が多く、年齢が高いほど高かった。腰椎骨量減少群では、有意に腰背痛が低下していた。また骨粗鬆症群が46%で、その他の群(22-25%程度)より高く、既存脊椎骨折数が多くなるほど高かった。腰痛群の骨密度は有意に低値で、骨棘形成は少なく、終板硬化は多かった。2)GGCX c.8762=AAのアレル型は、骨粗鬆症と脊椎変形性関節症の両者に対して予防的効果を持つことが示唆された。3)Wnt10bのSNPにおいては骨密度に有意差を認め、WISP1遺伝子のSNPは終板硬化を有する頻度が有意に高かった。4)コラーゲンの生理的架橋量は,骨折群では新旧の骨単位共に低値であり,ペントシジンは高値を示し、新しい骨単位に過剰のペントシジン形成が生じていた。
結論
1)高齢者の腰痛は年齢と共に増加し、女性、低身長者、骨粗鬆症群、既存椎体骨折群に有訴率が高いことがわかった。生活習慣要因、生活習慣病との関連は解析中である。2)遺伝的要因として、GGCX, Wnt10b, WISP1の遺伝子多型が骨粗鬆症や変形性脊椎症に関与していることがわかった。3)骨粗鬆症では、善玉である生理的架橋の低形成と,悪玉であるペントシジン架橋の過形成が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-07
更新日
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