高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法の開発

文献情報

文献番号
200619092A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-034
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚運動系病態医学講座運動機能外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 大川 弥生(国立長寿医療センター研究所生活機能賦活研究部)
  • 木山 博資(大阪市立大学医学研究科機能細胞形態学講座)
  • 萩野 浩(鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 石田 健司(高知大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 高田 信二郎(徳島大学医学部・歯学部附属病院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法を開発するものである。
研究方法
 廃用症候群の実態調査は、徳島県、鳥取県、高知県の3県で実施した。まず、徳島県では、鳴門市における寝たきり老人数の調査と、介護保険における障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)と痴呆老人の日常生活自立度について調査した。さらに、脳卒中急性期に対する運動療法の効果を検討した。回復期リハビリテーション病棟では、転倒の実態調査を行った。介護療養病棟では、寝たきり度と嚥下障害との関連について調査した。
 高知県香北町では、高齢者の歩行特性および立位体幹姿勢と歩行との関わりについて調査した。そして、鳥取県では、関節リウマチ患者におけるADL、骨密度、大腿筋肉量、摂食嚥下機能について調査した。
 廃用症候群の基礎研究では、積極的に神経機能を回復させるための基礎研究を行った。
結果と考察
 平成17年度、鳴門市における寝たきり老人数は、人口63,235人中、247名であった。そして、寝返りができなくなると、痴呆老人の日常生活自立度が低下してくることがわかった。脳卒中急性期では、膝立腰あげなど下肢動作を組み合わせた運動療法が、麻痺側下肢筋肉量の低下を抑制することがわかった。さらに回復期リハビリテーション病棟での調査では、転倒した患者は、転倒しなかった患者に比べて、入院時FIMが低値であることが示された。介護療養病棟での調査では、寝たきり度が増悪すると、嚥下機能障害の合併率が高まることがわかった。
 高齢者では、姿勢が正常であれば、年齢が80歳を過ぎても、Gait parameterに変化がないことがわかった。関節リウマチ患者では、ADL障害が進行すると、それに伴って骨密度低下、大腿筋量減少、嚥下障害の合併率が高まることが判明した。
 基礎研究では、グルタミン酸トランスポーターやPAIII等の発現や投与が、神経の再生を促進させることを明らかにした。
結論
 高齢者における廃用症候群は、廃用性筋・骨萎縮にとどまらず、慢性的な易転倒の状態になること、嚥下障害を効率に合併することがわかった。これらの実態を踏まえ、今後、さらなる廃用症候群の病態解析と、運動療法や薬物療法など、臨床と基礎の両面から研究を進めていく所存である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
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