大腿骨頚部骨折予防技術による施設介護高齢者の転倒恐怖緩和、生活機能及びQOLの維持・向上に関する研究

文献情報

文献番号
200619091A
報告書区分
総括
研究課題名
大腿骨頚部骨折予防技術による施設介護高齢者の転倒恐怖緩和、生活機能及びQOLの維持・向上に関する研究
課題番号
H18-長寿-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(国立長寿医療センター機能回復診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 徳田 治彦(国立長寿医療センター臨床検査部)
  • 長屋 政博(国立長寿医療センター機能回復診療部)
  • 奥泉 宏康(国立長寿医療センター先端医療部)
  • 加藤 智香子(名古屋大学医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒッププロテクターは、大腿骨頚部骨折予防に関して在宅高齢者においては無効とされ、介護施設生活者では有効性が認められてはいるものの、いまだ一定の評価が得られたとは言えない。そこで本研究では介護施設高齢者において、大腿骨頚部骨折予防の追加的検証とヒッププロテクターの他の効用として転倒恐怖、生活機能、QOLの維持向上に繋がるかを検討した。
研究方法
今年度は介護施設生活者を対象として無作為対照比較試験を計画し、参加基準は、介助車いす以上の移動能力で1つ以上の大腿骨頚部骨折リスクのある70歳以上女性とした。開始時調査は、病歴・薬歴、転倒・骨折歴、認知能力、ADL、踵骨超音波骨評価、血液生化学検査・骨関連検査で、MMSE15点以上の者には、転倒恐怖、身体活動量、QOL、筋力、バランス、歩行速度を評価し追跡した。開始後は、プロテクター装着状況、転倒と転倒傷害、転倒時装着が毎日記録された。
結果と考察
平成18年12月で43施設459名が登録、施設別無作為化により13施設が硬性プロテクター群、12施設が軟性プロテクター群、18施設がコントロールに割り付けられた。参加者は平均86.1才で、骨関連血液検査からは潜在的PTH分泌亢進状態及び骨代謝亢進状態にあることが示唆され、転倒頻度は、硬性プロテクター群0.4回/人年、軟性プロテクター群0.7回/人年、コントロール群1.3回/人年とプロテクター群で減少していた。8ヶ月の追跡期間のコンプライアンスは、1日に少なくとも1回以上使用する率は、硬性プロテクター86.0%、軟性プロテクター75.8%と高かった。骨折は23例で大腿骨頚部骨折は12例であった。大腿骨頚部骨折率はコントロール群4.8%、プロテクター群1.4%とプロテクター群の方が低かった。また、骨折全体の発生率もコントロール8.6%、プロテクター群3.2%とプロテクター群で低かった。これらについて硬性と軟性の製品差はなかった。MMSE15点以上の133名中3ヶ月評価が解析できたのは硬性プロテクター群24名、軟性プロテクター群18名、コントロール群42名で、両プロテクター群では転倒恐怖、歩数、SF-8に有意な変化はなかった。
結論
現時点の結果ではヒッププロテクターは直接効果として骨折予防には有用な可能性が示唆されたが、転倒恐怖やQOLなどへの間接効果はみられなかった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-