老化に伴う認知症に有効な神経保護薬の臨床応用とその評価法の確立

文献情報

文献番号
200619084A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴う認知症に有効な神経保護薬の臨床応用とその評価法の確立
課題番号
H18-長寿-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 和佳子(国立長寿医療センター研究所 老年病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 新畑 豊(国立長寿医療センター 先端医療部 第二アルツハイマー型痴呆科)
  • 鈴木 樹理(京都大学霊長類研究所 人類進化モデル研究センター)
  • 辻本 賀英(大阪大学大学院 医学系研究科 細胞死制御)
  • 直井 信(財団法人国際岐阜バイオ研究所 脳科学研究部門)
  • 新田 淳美(名古屋大学大学院医学研究科 医療薬学、医学部附属病院薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
19,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老化に伴う認知症の進行を抑制するため、経口投与可能で安全性の高い神経保護薬を開発することを目的として研究を行った。マザードラッグであるpropargylamine化合物(PA)はB型モノアミン酸化酵素(MAO)の阻害剤として開発され、その一部(selegilineおよびrasagiline)は既に欧米でパーキンソン病患者に使用されているため安全性に問題はない。PAは酵素阻害とは独立した神経保護作用をもつことが、多くのin vivo、in vitroの実験で示されているが、その機序は不明であった。本研究課題の目的は1)PAによる神経保護効果を霊長類(ニホンザル)で検証し、ヒト治験を計画するために必要な情報(至適投与量、投与方法等)を得る。2)1)PAの治療効果を客観的に評価するためのバイオマーカーを検索する。3)神経保護薬としてのPAのターゲット分子を分子生物学的に解明する。ことである。
研究方法
1)および2)各群 5頭の成熟オスニホンザルに対し、種々の量のrasagilineの 4週間連日筋肉内投与を行った。投与前後のCSF中神経栄養因子量はELISA法にて測定した。。3)PAによる神経保護作用の機序を酸化ストレス、神経毒等によるアポトーシス細胞モデルをもちい検討した。
結果と考察
1)および2)0.25 mg/kg/day rasagilineによりニホンザルCSF中の神経栄養因子濃度は最も増加が顕著となり、4週間以上濃度増加は持続した。この結果はPAが神経保護に関わるタンパク質、特に神経栄養因子を脳内で誘導すること、さらにCSF中の分泌性因子(神経栄養因子)の測定により、薬剤の効果が客観的、定量的のみならず迅速に評価できることを示している。2)神経保護活性をもつPAはA型モノアミン酸化酵素(MAO-A)の酵素活性に関わる部位とは異なるsiteに結合することで、細胞死シグナルを調節することが見いだされた。
結論
PAはアルツハイマー病におけるamyloid beta proteinなどの疾患特異的なターゲット分子にはたらくのではなく、細胞の生存シグナルを高めることで神経細胞死を抑制することが示された。PAは老化に伴う認知症を全般的に防御することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
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