BDNFを用いた認知症遺伝子治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200619083A
報告書区分
総括
研究課題名
BDNFを用いた認知症遺伝子治療法開発に関する研究
課題番号
H18-長寿-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木村 展之(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 誠(ディナベック株式会社)
  • 田代 朋子(青山学院大学)
  • 田平 武(国立長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では過去のin vitro検索結果を基に、BDNF発現ウイルスベクターを用いた認知症遺伝子治療法の確立に向け、アルツハイマー病モデルマウス(以下、Tgマウス)における同ベクターの治療・予防効果を検索することを主題目的としている。
研究方法
本研究では、Aβの過剰産生が認められるTgマウスにBDNF発現ウイルスベクターを接種することで、その治療効果の評価を行う予定である。そこで我々は、神経細胞に対する親和性が極めて高いセンダイウイルスに注目し、増殖性・組織障害性に関与するウイルス蛋白を欠損させたより安全性の高いセンダイウイルスベクターの作成を行う。次いで、実験対照群となるマウスの認知機能を行動学的に評価するための実験系を確立するため、実際に行動解析装置を導入して、検索を行う。
また、マウス脳室内へのベクター接種手技=マイクロインジェクション法の確立を行い、実際にBDNF発現ベクターを接種してその効果と安全性確認検索を行う。
結果と考察
まず、BDNF発現センダイウイルスベクターの構築・産生を行った。次いで、マウス脳室内への安定したベクター接種技術=マイクロインジェクション法の確立に成功した。
実際にマウス脳室内へBDNF発現ベクターを接種したところ、接種3日後からBDNFの発現上昇が確認され、接種14 日後において非常に有意なBDNF発現上昇が確認された。病理組織学的には、接種部位近辺でのアストログリア活性化および脳室辺縁における炎症細胞の浸潤が確認されたが、神経細胞そのものの大きな変性は認められなかったことから、同ベクターによる神経系へのダメージは深刻なものではないと予想された。
モリス水迷路を用いた行動学的検索により、10ヶ月齢のTgマウスにて有意な認知機能の低下が確認された。これらの結果をふまえ、来年度は実際にTgマウスへBDNF発現ベクターを接種し、認知機能障害および神経変性に対する予防・治療効果を確認する予定である。
結論
本研究によって、BDNFを神経細胞親和的に高発現できるウイルスベクターの開発・作成に成功したとともに、マウス脳室内へのウイルスベクター接種法=マイクロインジェクション法を確立することができた。この成果は、本研究班における研究目的外でも流用が可能な技術であることから、神経系研究領域において非常に大きな貢献となることは明白である。
また、実際にBDNF発現ベクターの効果および安全性が確認されたことから、来年度はこの成果を元にして、Tgマウスを用いたBDNFによる神経突起変性保護効果ならびに、認知機能障害の抑制効果を検索する予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-07
更新日
-