歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発

文献情報

文献番号
200619061A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発
課題番号
H18-長寿-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 正寛(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下健二(国立長寿医療センター研究所)
  • 渡辺 研(国立長寿医療センター研究所)
  • 村上伸也(大阪大学 大学院歯学研究科 )
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター研究所)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯周病は40歳を超える国民の約50%以上が罹患する生活習慣病であり、その約10%は外科的処置を必要とする大きな骨欠損を伴う重篤な歯周病に罹患していることが「平成17年度歯科疾患実態調査報告」(厚生労働省医政局歯科保健課)より報告されている。このことは他の疾患と比較してもその有病状況は類を見ないほど高率で、厚生労働省が提唱・推進している生涯を通じて20歯以上を保つ「8020運動」の目標から大きく下回る現状が伺える。そこで本研究の目的は、生体外増幅したヒト顎骨由来間葉系細胞と、細胞移植製剤の安全性を確立し、広範な骨欠損を伴う歯周病患者に対する新たな細胞治療法を開発することを目的としている。
研究方法
インフォームドコンセントを得て、さらに本研究計画の主旨に同意して頂いた中高年層の患者から提供された抜歯時に切除された顎骨骨片より骨芽細胞を採取した。得られたヒト顎骨由来骨芽細胞に適した培養条件を、各種ヒト細胞培養用専用培地で検討すると共に、骨芽細胞への分化能力をin vitroで解析した。次に骨芽細胞の骨形成能力を解析するため、免疫不全症マウスへ皮下移植実験を行った。一ヶ月移植した後に移植片を取り出し、骨形成能力を組織学的に解析した。最後に得られた骨芽細胞製剤の安全性を調べるために、染色体診断を行った。
結果と考察
酵素消化法で骨芽細胞を採取した結果、ヒト間葉系細胞専用培地を用いることにより培養可能であることが確認された。得られた骨芽細胞を、HAOB(Human Alveolar bone derived Osteoblast)と命名した。HAOBはin vitroで骨芽細胞へ分化し、また免疫不全症マウスへ移植した結果、顕著な骨形成を誘導することが観察された。 HAOB3の安全性を調べるために、染色体診断を行った結果、核型に異常は観察されなかった。これらの結果より、HAOBは高い増殖活性を有しており、骨形成能力を有していることから、将来骨再生医療に有望な細胞製剤の候補であることが確認された。
結論
独自に開発したヒト顎骨由来骨芽細胞培養システムを用いて、65歳以上の中高年層からも骨芽細胞を採取することに成功した。この細胞はin vitroによる骨芽細胞分化誘導ならびに移植実験により高い骨形成能力を有する安全性の高い細胞集団が含まれていることが確認された。今後は患者由来の血清を用いて同様の効果が有るかを調べ、また高齢者の歯周病治療に使用できる細胞提供システムを速やかに構築することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2007-05-01
更新日
-