男性ホルモン低下に起因する老年病の治療戦略とその機序に関する総合研究

文献情報

文献番号
200619056A
報告書区分
総括
研究課題名
男性ホルモン低下に起因する老年病の治療戦略とその機序に関する総合研究
課題番号
H17-長寿-一般-046
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院 老年病科)
研究分担者(所属機関)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学)
  • 柳瀬 敏彦(九州大学大学院医学研究院 内分泌代謝学)
  • 堀江 重郎(帝京大学医学部 泌尿器科学)
  • 熊野 宏昭(東京大学大学院医学系研究科 心身医学)
  • 若槻 明彦(愛知医科大学 産婦人科学)
  • 近藤 宇史(長崎大学医歯薬総合大学院 分子情報制御)
  • 山田 思鶴(老人保健施設 まほろばの郷)
  • 寺本 信嗣(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,373,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年病の発症・進展におけるアンドロゲン低下の意義とその治療法について検討することを目的とする。
研究方法
1)アンドロゲン低下と老年病との関連を検討する横断・縦断観察研究、2)アンドロゲン補充療法の効果を検討する介入研究、3)アンドロゲンの作用機序に関する基礎研究を実施した。
結果と考察
1)アンドロゲン低下と老年病との関連を検討する横断・縦断観察研究:男性生活習慣病患者(49歳、118名)では、テストステロン(T)濃度とメタボリックシンドロームおよびその構成要素(血圧、脂質、血糖)が関連した。閉経後女性患者(57歳、115名)では、DHEA-S濃度が血管内皮機能と独立した関連を示した。中年男性の唾液中T濃度は、若年者および高齢者よりも低値を示した。中高年男性うつ病患者では、DHEA-Sおよびコルチゾールが精巣レベルで視床下部-下垂体-性腺系を抑制していた。高齢男性睡眠時無呼吸患者では、無呼吸の重症度が尿中酸化ストレスマーカーと関連した。男性認知症患者では、T濃度が認知機能と正の相関を示したが、各種機能の1年間の経年変化とは関連しなかった。2)アンドロゲン補充療法および代替療法の効果を検討する介入研究:健常中高年男性に対する6ヶ月間のDHEA投与(25 mg/日内服)により、有害作用無く血中VCAM-1の低下を認めた。閉経後女性のエストロゲン補充療法に酢酸メドロキシプロゲステロンを併用することで脂質代謝と血管内皮機能は障害された。軽度認知機能障害を有する虚弱高齢女性に6ヶ月間のDHEA補充療法(25 mg/日内服)を実施し、非補充の対照群と比較検討した。対照群では認知機能スケールHDSRおよびMMSEが有意に低下したのに対し、投与群ではHDSRが有意な増加を示し、MMSEは維持された。3)アンドロゲンの作用機序に関する基礎研究:ヒト培養血管内皮細胞を用いた検討では、Tはnitric oxide分泌刺激作用を有し、その作用はアンドロゲン受容体を介した内皮型NO合成酵素の活性化によるものであった。DHEAは、心筋細胞および血管内皮細胞におけるAkt活性の増加と抗酸化物質グルタレドキシンの発現誘導を介して酸化ストレスによる細胞障害を抑制した。
結論
老年病の発症・進展にアンドロゲン低下が深く関係していると考えられ、今後研究を継続していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-07
更新日
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