高齢者の終末期ケアに関する研究―各施設における標準的終末期ケアの確立に向けて―

文献情報

文献番号
200619054A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の終末期ケアに関する研究―各施設における標準的終末期ケアの確立に向けて―
課題番号
H17-長寿-一般-044
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 植村和正(名古屋大学医学部附属総合医学教育センター 内科学)
  • 益田雄一郎(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻(発育・加齢医学講座老年科学) 老年科学)
  • 安藤詳子(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻臨床看護学講座)
  • 飯島節(筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻リハビリテーションコース 高齢者リハビリテーション)
  • 小坂陽一((財)光ヶ丘スペルマン病院 内科 )
  • 水川真二郎(杏林大学高齢医学教室 老年医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,995,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々の研究の目的は、国民に自分の人生の終末期においてよりよい自己決定を行ってもらうための正確で分かりやすい情報を提供することである。そして、得られた成果を基に、国民に死の教育を行うためのツールの開発・事前の指示の方法の開発や、看取り場所、特に高齢者介護施設における介護職員向けの教育プログラムの開発を目指す。

研究方法
(1)療養型病床群における代理人よる終末期ケアの希望の表明を分析、(2)高齢者介護施設の施設長・職員を対象に、終末期ケアの提供と教育に関するニーズを調査、(3)介護老人保健施設の入退所状況と介護老人保健施設職員の意識を調査、(4)認知症の病名告知に関するアンケート調査を実施し、認知症患者に対する「病名の告知」のあり方について検討、(5)高齢者の経管栄養導入後の予後に関する危険因子を検討、(6)緩和ケア病棟における痛み計の臨床試行。
結果と考察
(1) 終末期ケアに関する医師による説明を標準化する必要性が示唆された。家族や医療者に終末期ケアに関する議論を行う際の指針や教育が必要であると考える。(2) 終末期ケア教育プログラム、事前指定書に類似した説明・同意書の開発、終末期ケアガイドラインの作成などが必要であることが分かった。(3) 介護老人保健施設を長期介護施設ひいては終末期ケアをも担う施設に転換する可能性を検討すべき時期にきていることが示唆された。(4) 多くの患者や家族は、認知症が進行し寝たきりとなった場合、延命のための点滴や栄養補給を望んでおらず、終末期医療に携わる医師の倫理観や哲学が治療方針を決定付ける大きな要素になることが示唆された。(5)経管導入後、短期間に予後不良となり、死亡する例において、特有の Risk Factor が存在する可能性が示唆された。(6) 痛み計を開発して臨床に普及することは、がん性疼痛の除痛率を確実に高めると期待できる。高齢者はがんに罹患しやすいため、高齢がん患者増加による課題の克服に貢献するものであると考える。

結論
自己決定に基づく終末期の看取り場所選定のあり方、そして高齢者終末期患者の様々な死に場所における標準的終末期ケアのあり方について、いくつかの側面から検証を行ってきた。こうした成果をもとに、国民的コンセンサスが得られる指針の作成と議論の際のツールの開発・評価が来年度以降の課題と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-07
更新日
-