弾性線維形成因子DANCEを標的とした老化関連疾患の予防・治療法開発の研究

文献情報

文献番号
200619037A
報告書区分
総括
研究課題名
弾性線維形成因子DANCEを標的とした老化関連疾患の予防・治療法開発の研究
課題番号
H17-長寿-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中邨 智之(京都大学医学研究科先端領域融合医学研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 北 徹(京都大学医学研究科循環器内科学)
  • 古川 裕(京都大学医学研究科循環器内科学)
  • 室 繁郎(京都大学医学研究科呼吸器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は弾性線維形成に必須の分泌タンパク、DANCE(別名fibulin-5)を見出した。DANCE遺伝子欠損マウスの表現型はヒトの老化に非常に類似しており、皮膚は弾性が無くたるみ、肺気腫をきたし、動脈は蛇行して硬化していた。この結果は、DANCE欠損による弾性線維形成不全だけで老化の症状の多くを引き起こせることを示しているが、老化の表現型や老化関連疾患にDANCEの変化・減少が関与しているかどうかという研究はまだない。本研究では、老化関連疾患、特に弾性線維の断裂が病因とされる肺気腫・大動脈瘤についてDANCEの関与を明らかにするとともに、DANCEタンパクによる疾患の予防、弾性線維の再生技術確立を目指す。今期は、リコンビナントDANCEが無血清でも弾性線維形成を促進することができることを証明し、その分子機序の一端を明らかにした。
研究方法
無血清細胞培養における弾性線維形成アッセイ系を確立した。精製したリコンビナントDANCEタンパク、トロポエラスチンタンパクなどを用いて、細胞培養での弾性線維形成能、試験管内でのトロポエラスチン凝集促進能を検定した。
結果と考察
ヒト線維芽細胞は無血清では弾性線維を作ることができないが、精製リコンビナントDANCEタンパクを加えると弾性線維形成が促進された。また、DANCEはトロポエラスチンと結合するだけでなく、そのコアセルベーション(温度依存的凝集)を促進した。今回の知見はDANCEが単に弾性線維構成成分というだけではなく弾性線維形成をオーガナイズできる重要な分子であることを示唆している。
結論
DANCE/fibulin-5は強力な弾性線維形成誘導因子であり、単に弾性線維構成成分というだけではなく弾性線維形成をオーガナイズできる重要な分子である。

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200619037B
報告書区分
総合
研究課題名
弾性線維形成因子DANCEを標的とした老化関連疾患の予防・治療法開発の研究
課題番号
H17-長寿-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中邨 智之(京都大学医学研究科先端領域融合医学研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 北 徹(京都大学医学研究科循環器内科学)
  • 古川 裕(京都大学医学研究科循環器内科学)
  • 室 繁郎(京都大学医学研究科呼吸器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は弾性線維形成に必須の分泌タンパク、DANCE(別名fibulin-5)を見出した。DANCE遺伝子欠損マウスの表現型はヒトの老化に非常に類似しており、皮膚は弾性が無くたるみ、肺気腫をきたし、動脈は蛇行して硬化していた。この結果は、DANCE欠損による弾性線維形成不全だけで老化の症状の多くを引き起こせることを示しているが、老化の表現型や老化関連疾患にDANCEの変化・減少が関与しているかどうかという研究はまだない。本研究では、老化関連疾患、特に弾性線維の断裂が病因とされる肺気腫・大動脈瘤についてDANCEの関与を明らかにするとともに、DANCEタンパクによる疾患の予防、弾性線維の再生技術確立を目指す。
研究方法
無血清細胞培養における弾性線維形成アッセイ系を確立した。精製したリコンビナントDANCEタンパク、トロポエラスチンタンパクなどを用いて、細胞培養での弾性線維形成能、試験管内でのトロポエラスチン凝集促進能を検定した。DANCEタンパクに対するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を作成し、加齢によるDANCEタンパクの変化を調べた。またDANCEを高感度で測定できるELISAを試作した。
結果と考察
ヒト線維芽細胞は無血清では弾性線維を作ることができないが、精製リコンビナントDANCEタンパクを加えると弾性線維形成が促進された。また、DANCEはトロポエラスチンと結合するだけでなく、そのコアセルベーション(温度依存的凝集)を促進した。マウスにおいては、加齢によって大動脈組織中DANCE量の減少と皮膚組織中DANCEタンパクの切断がおこることが確認された。全長型DANCEタンパクには弾性線維再生能があるが、切断型DANCEタンパクには無いことを見出した。すなわち、全長型DANCE量が弾性線維再生能を反映しており、加齢によって弾性線維再生能は低下すると解釈することができる。新たに開発したELISAにより、ヒト血清中に比較的高濃度にDANCEタンパクが循環していることが明らかになった。
結論
DANCE/fibulin-5は強力な弾性線維形成誘導因子であり、単に弾性線維構成成分というだけではなく弾性線維形成をオーガナイズできる重要な分子である。加齢によって組織中DANCEは発現の低下や切断によって減少するが、DANCEの減少は弾性線維再生能低下を示すと考えられた。血中にDANCEは循環しており、血清中DANCE濃度、切断型DANCE濃度は老化関連疾患のマーカーとなる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
弾性線維形成の分子機構についてはよくわかっていないことが多いが、本研究ではDANCEという分泌タンパクが弾性線維形成に必須であり、DANCEタンパク自身に強力な弾性線維再生活性があることを示した。
臨床的観点からの成果
老化のターゲット分子が何なのかはまだまだ不明のことが多い。弾性線維など細胞外線維はターンオーバーが遅いため異常が蓄積しやすく、老化の表現型の多くは細胞外線維の劣化が直接的原因である。本研究では老化と組織中DANCEの変化の関連を明らかにし、DANCEが老化関連疾患の良い標的分子候補であることを示した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
平成17年7月4日の日経新聞朝刊に研究内容が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirai M et al.
Fibulin-5/DANCE has an elastogenic organizer activity that is abrogated by proteolytic cleavage in vivo.
J Cell Biol , 176 , 1061-1071  (2007)
原著論文2
Lotery AJ et al.
Reduced secretion of fibulin 5 in age-related macular degeneration and cutis laxa.
Hum Mutat , 27 , 568-574  (2006)
原著論文3
McLaughlin PJ et al.
Targeted disruption of fibulin-4 abolishes elastogenesis and causes perinatal lethality in mice.
Mol Cell Biol , 26 , 1700-1709  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-