認知症・アルツハイマー病の予防および治療を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発

文献情報

文献番号
200619029A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症・アルツハイマー病の予防および治療を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発
課題番号
H17-長寿-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 弘(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬上 夏樹(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
  • 長尾 壽和(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,552,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)事象関連電位P300は、認知機能を反映すると考えられ、刺激の認知や期待・判断などに関連した頭皮上から得られる電位である。今回、認知症患者と健常者との間でのP300の特徴的な出現様式の違いを探った。
(2)「顎運動による脳刺激システム」を完成させ、認知症患者に適用した。
研究方法
(1)誘発電位・筋電図計測装置を用いて、事象関連電位P300を、健常者および認知症患者から計測した。
(2)咀嚼時の咬筋の筋電位をトリガーパルスに変換して、聴覚・視覚・体性感覚刺激装置を駆動し、フィードバック刺激を発生させることのできるシステムを開発した。このシステムを認知症患者に適用した。
結果と考察
(1)認知症患者の場合、音を認知してボタンを押すという関連付けについて、健常者に比べてP300のピーク潜時が遅延する傾向にあり、音を認知して顎の運動を開始するという少し複雑な関連付けについてについては、P300が現れにくい傾向にあった。顎の運動と関連させた事象関連電位P300は、認知症・アルツハイマー病患者の生理学的脳機能評価法として有用であることが示唆された。
(2)本研究において、事象を認知した後の咀嚼運動に連動して広範囲に脳を刺激することのできる『顎運動による脳刺激システム』を完成させることができた。受動型治療では、慣れ親しんだ楽曲と、それに関連する映像の同時刺激をおこなった。積極参加型治療では、慣れ親しんだ曲に躍動感のあるアレンジを加え、録音し、認知症患者にはその楽曲のリズムや音に合わせて顎運動をおこなってもらい、その運動の結果として聴覚・視覚・体性感覚を刺激するような感覚性情報が入力するようにした。ほとんどの患者で、若い頃の記憶がよみがえり、積極性が増した。記憶がよみがえり、意欲が上昇すること、異なる種類の運動を訓練により連合させることができるようになったことなどから、十分な効果が期待できると考えられる。
結論
顎の運動と関連させた事象関連電位P300は、認知症・アルツハイマー病罹患患者の生理学的脳機能評価法として有用であることが示唆された。さらに、認知症やアルツハイマー病の予防や治療を目的とする『顎運動による脳刺激システム』を完成させることができた。認知症患者に適応したところ、記憶の想起、意欲の上昇、運動連合学習などがみられ、このシステムの治療効果が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200619029B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症・アルツハイマー病の予防および治療を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発
課題番号
H17-長寿-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 弘(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬上 夏樹(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
  • 長尾 壽和(金沢医科大学 顎口腔機能病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
顎口腔領域の感覚・運動に関わる脳領域は広範囲である。そこで、認知症・アルツハイマー病などによる中枢神経機能低下と口腔機能との関連性を調査し、さらに、これらの疾患の予防と治療を目的とする『顎運動による脳刺激システム』の開発を計画した。
研究方法
金沢医科大学附属病院で加療している認知症またはアルツハイマー病患者のなかで、長谷川式簡易知能評価スケール、脳の画像、脳血流、機能的咬合歯スコアなどの項目の検査が可能であった高齢者を対象として、口腔機能低下と認知症・アルツハイマー病の進行度の因果関係を調べた。また、脳の認知機能について、認知症患者における事象関連電位P300の特徴的出現様式を調べた。
咀嚼時の筋電位をトリガーパルスに変換して、聴覚・視覚・体性感覚刺激装置を駆動し、フィードバック刺激を発生させることのできるシステムを開発し、このシステムを認知症患者に適用した。
結果と考察
長谷川式簡易知能評価スケールが低いほど、機能的咬合歯スコアが低く、脳の萎縮が顕著になり、脳血流量も低下していたことから、脳機能を維持するたには口腔機能を低下させないことが重要であることが判明した。
音を認知して顎の運動を開始するという少し複雑な関連付けについてについては、P300が現れにくい傾向にあった。顎の運動と関連させたP300は、認知症・アルツハイマー病患者の生理学的脳機能評価法として有用であることが示唆された。
今回、『顎運動による脳刺激システム』を完成させることができた。慣れ親しんだ楽曲と映像の同時刺激による受動型治療と、本研究で作成した躍動感のあるアレンジ曲にあわせて顎運動をおこなってもらう積極参加型治療をおこなった。ほとんどの患者で、記憶がよみがえり、積極性が増し、訓練によって複雑な運動とそれらの組み合わせが可能になったことから、十分な効果が期待できると考えられる。
結論
脳の知的機能を低下させないためには口腔機能を低下させないことが重要であることが示された。顎の運動と関連させた事象関連電位P300は、認知症・アルツハイマー病患者の生理学的脳機能評価法として有用であることが示唆された。さらに、認知症やアルツハイマー病の予防や治療を目的とする『顎運動による脳刺激システム』を完成させることができた。認知症患者に適応したところ、記憶の想起、意欲の上昇、運動連合学習などがみられ、このシステムの治療効果が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
金沢医科大学附属病院で加療している認知症またはアルツハイマー病患者のなかで、長谷川式簡易知能評価スケール、脳の画像、脳血流、機能的咬合歯スコアなどの項目の検査が可能であった高齢者を対象として、口腔機能低下と認知症・アルツハイマー病の進行度の因果関係を調べたところ、長谷川式簡易知能評価スケールが低いほど、機能的咬合歯スコアが低く、脳の萎縮が顕著になり、脳血流量も低下しているという結果になった。このことから、脳機能を維持するたには口腔機能を低下させないことが重要であることが示唆された。
臨床的観点からの成果
咀嚼時の筋電位をトリガーパルスに変換して、聴覚・視覚・体性感覚刺激装置を駆動し、フィードバック刺激を発生させることのできる『顎運動による脳刺激システム』を開発し、このシステムを認知症患者に適用した。慣れ親しんだ楽曲と映像の同時刺激による受動型治療と、本研究で作成した躍動感のあるアレンジ曲にあわせて顎運動をおこなってもらう積極参加型治療をおこなったところ、記憶の想起、意欲の上昇、運動連合学習などがみられた。このシステムが認知症・アルツハイマー病の改善や進行防止に有用である可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
認知症患者から、画像提示と音楽刺激中の脳波を計測し、長谷川式簡易知能評価スケールに脳波周波数分析のパラメータを加えた新たな認知症・アルツハイマー病の進行度の判定基準の開発を進めた。
その他行政的観点からの成果
本研究課題により開発された『顎運動による脳刺激システム』は、重度認知症患者にも効果が期待できるため、将来的に、町立の高齢者医療施設との連携を検討している。
その他のインパクト
第51回日本口腔外科学会総会のレポートとして、主任研究者の発表内容が、以下の医学系新聞および歯科医学系新聞に掲載された。
(1)Medical Tribune Vol.39. No.17、2006年11月23日、P43
「脳機能維持には口腔機能を低下させないことが必要」
(2)Dental Tribune Vol.3. No.1、2007年1月号、P11
「脳機能維持には口腔機能を低下させないことが必要」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
様々な感覚情報を統合している大脳皮質連合野に、周期的活動を誘発するニューロン群が存在しており、この領域が周囲にNMDA受容体依存性の信号を配信することにより皮質間情報伝播が強化されるという仮説。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第51回日本口腔外科学会総会(福岡県北九州市)口腔機能低下と認知症・アルツハイマー病による脳機能低下との関連性。吉村 弘、増山 有一、長尾 壽和、瀬上 夏樹、金沢医科大学・顎口腔機能病態学講座
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiroshi Yoshimura
The potential of caffeine for functional modification from cortical synapses to neuron networks in the brain.
Current Neuropharmacology , 3 , 309-316  (2005)
原著論文2
Hiroshi Yoshimura, Makoto Honjo, Natsuki Segami, et al.
Cyclic AMP-dependent attenuation of oscillatory-activity-induced intercortical strengthening of horizontal pathways between insular and parietal cortices.
Brain Research , 1069 , 86-95  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-