生体内酸化ストレスによる老年性疾患の発症機構の解明と予防

文献情報

文献番号
200619020A
報告書区分
総括
研究課題名
生体内酸化ストレスによる老年性疾患の発症機構の解明と予防
課題番号
H17-長寿-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石井 直明(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 丸山 直記(東京都老人総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,675,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老化や疾患の原因として最も注目されるのが酸化ストレスであり、その主な発生源が細胞小器官ミトコンドリアの電子伝達系であることが知られている。そこで、ミトコンドリアから発生する活性酸素の量を外部から制御できるマウスを作成して解析をおこなう。さらに抗酸化系に欠損を持つマウスの解析から、「生体内酸化ストレスによる老化と疾患の発生機構」の解明と、「その抑制機構」を見出すことを目的とする。
研究方法
ミトコンドリア電子伝達系複合体のサブユニットであるSDHCの変異遺伝子を導入し、ミトコンドリアからの活性酸素の発生量や発生時期をテトラサイクリンにより生体外部から任意に制御可能な条件付変異遺伝子組換えマウス(Tet-mev-1マウス)を作製した。このマウスと抗酸化物であるビタミンCの合成能力を欠損したマウス(SMP30マウス)の分子生物学・生化学・病理学的な解析をおこなった。
結果と考察
Tet-mev-1マウスは、生体内で活性酸素を産生するパラコートに感受性を示し、臓器・器官によって異なるものの、ミトコンドリアから活性酸素が過剰に産生され、酸化タンパク質の蓄積が認められた。このホモ(Tg/Tg)マウスは胎児期から離乳期にかけて成長の遅れが見られ、多くの組織・器官でアポトーシスが観察された。生後12週目には正常の大きさの身体に回復した。6ヶ月齢のヘテロ(Tg/-)マウスにおいては形態病理学的な異常は観察されなかったが、加齢とともに早老的な変化が出現すると予想される。SMP30マウスの解析から、ビタミンCが酸化タンパク質の蓄積を抑制することを明らかにした。
結論
ミトコンドリアから発生する活性酸素の生体への直接の影響を証明する手段は存在せず、また抗酸化物質の遺伝的な制御機構は明らかにされていなかった。Tet-mev-1マウスはミトコンドリアから活性酸素を過剰に発生し、またSMP30マウスは抗酸化物質であるビタミンCの合成が欠損していることから、生体内酸化ストレスの発生・制御機構を明らかにし、酸化ストレスを原因とする老化や老人性疾患のモデル動物として、老化の基礎研究のみならず臨床研究にも応用され、老化および老人性疾患の発症機構の解明から治療や予防まで幅広い分野で貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
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