文献情報
文献番号
200619017A
報告書区分
総括
研究課題名
モノアミン系の加齢変化とうつ病の解明・予防に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
城川 哲也(日本福祉大学情報社会科学部人間福祉情報学科)
研究分担者(所属機関)
- 磯部 健一(名古屋大学大学院医学系研究科微生物・免疫学講座)
- 小阪 憲司(日本福祉大学情報社会システム研究所)
- 赤津 裕康(医療法人さわらび会福祉村病院長寿医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
加齢に伴うモノアミン系の相互作用を解明することは,高齢者のうつ病対策のヒントとなることが期待される.前年度までの研究から,加齢ラットの前頭葉におけるモノアミン系の相互作用を示唆するデータが得られ,マウスのうつモデルからは,5-HT代謝酵素の動態が得られた.さらに,脳卒中後うつ病(post-stroke depression: PSD)に着目し,PSDを認めた死後脳の生化学的分析によってモノアミン系の相互作用の解析を行った.
研究方法
(1)加齢ラットの解析加齢ラット(3-24月齢)の青斑核(LC)および背側縫線核(RD)から単一ニューロン活動を記録し,前頭葉における共通の投射部位での終末の分布と発芽の程度を電気生理学的に調べた.(2)マウスうつモデルの解析母親からの分離によるマウスのうつモデルを用いて,前頭葉,海馬,扁桃体における5-HT代謝に関与する酵素 TPH-2, IDO の活性について生化学的に検討を行った.(3)PSD症例のあった剖検症例において脳実質・髄液・血液サンプルを用いてNA,5-HT,NA transporter,5-HT transporter を定量し,NA系および5-HT系の相互作用について解析を行った.
結果と考察
(1)5-HT特異的神経毒の投与によって変性した5-HT神経終末に対して,抗うつ薬 maprotiline が5-HT終末の再生を促進したが,NA神経終末に対しては再生を促進しなかった.うつ病の回復にNA系から5-HT系への働きかけが重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
(2)母親からの分離によるうつモデル群では,対照と比較して,前頭葉,海馬,扁桃体において5-HTとキヌレニンの濃度が上昇していた.うつモデル群において THP-2 あるいはIDO が活性化され,5-HTのみならずキヌレニン濃度が上昇したことは,うつ発症への関与が考えられる.
(3)PSDを認めた死後脳の生化学的分析によるモノアミン系の相互作用の解析について,現時点では考察可能な結果を得ていないが,今後症例の抽出が終了すれば,PSD,加齢とモノアミン系の関連性に回答を出す事ができると考えている.
(2)母親からの分離によるうつモデル群では,対照と比較して,前頭葉,海馬,扁桃体において5-HTとキヌレニンの濃度が上昇していた.うつモデル群において THP-2 あるいはIDO が活性化され,5-HTのみならずキヌレニン濃度が上昇したことは,うつ発症への関与が考えられる.
(3)PSDを認めた死後脳の生化学的分析によるモノアミン系の相互作用の解析について,現時点では考察可能な結果を得ていないが,今後症例の抽出が終了すれば,PSD,加齢とモノアミン系の関連性に回答を出す事ができると考えている.
結論
(1)抗うつ薬 maprotiline が5-HT終末の発芽を促進することが確認された.これらの結果は,加齢に伴ううつの機序としてモノアミン系の相互作用が関与する可能性を示唆した.
(2)うつ発症に関与する5-HT代謝に関する酵素の役割を明らかにし,その機序を解明することがうつ病の予防につながると考えられる.
(2)うつ発症に関与する5-HT代謝に関する酵素の役割を明らかにし,その機序を解明することがうつ病の予防につながると考えられる.
公開日・更新日
公開日
2007-04-11
更新日
-