老年病の発症に関わる遺伝―環境ネットワークの解明

文献情報

文献番号
200619016A
報告書区分
総括
研究課題名
老年病の発症に関わる遺伝―環境ネットワークの解明
課題番号
H17-長寿-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三木 哲郎(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小原 克彦(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学)
  • 名倉 潤(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学)
  • 田原 康玄(愛媛大学大学院医学系研究科 統合医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
17,425,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年病の発症に関わる遺伝-環境ネットワークを解明する目的で、高血圧ならびに肥満や腎機能等の関連疾患の感受性遺伝子解析を行った。
研究方法
対象は、愛媛県下でコホート設定している一般地域住民および企業従業員とした。加えて、全国の共同研究者より供与を受けた地域由来サンプルも用いた。全てのサンプルを統合すると約14000例になり、我が国において最大の遺伝疫学コホートとなる。全ての対象者からは書面にて同意を得た。対象者のDNAは末梢血より定法に則って抽出し、全ゲノム増幅後に解析に供した。
結果と考察
ミレニアムプロジェクトで300個の候補遺伝子からスクリーニングされた遺伝子F上のSNP-1について、周辺領域のファインマッピングから約4kb下流により強く高血圧と相関するSNP-2を見いだした。このアミノ酸置換を伴うSNP-2を大規模集団サンプルで検討したところ、他の交絡因子を調整した上でも、高血圧の有意な危険因子となった。ゲノム網羅的なスクリーニングから、2次スクリーニング後も有意性を示した11SNPについて検証したところ、SNP-Bが交絡因子を調整後も高血圧と有意に相関した。腎機能低下の感受性遺伝子解析からは、推定GFR値に対し、ADRB149遺伝子多型が年齢との交互作用をもって有意に相関していたことから、この多型が加齢による腎機能低下の遺伝因子であることが示された。高血圧の有力な候補遺伝子多型であるCatalase遺伝子プロモーター領域のC-844T多型と本態性高血圧との関連を検討した成績からは、C-844T多型が中性脂肪との交互作用を介して高血圧と相関する可能性が示唆された。INSIG2遺伝子rs7566605多型との肥満との検討結果からは、白人に比して平均体重の低い日本人では、当該遺伝子多型は肥満の感受性遺伝子多型とはなり難いことが示された。
結論
本研究では様々なアプローチから老年病およびその基礎疾患に感受性を持つ遺伝子多型を、特に環境因子とのネットワークに着目して検討した。多因子疾患の遺伝因子は、個々には弱い影響力を示すものの総和として疾患発症に関与しているため、今後も、本研究のように大規模な集団サンプルを用いた検出力の高い解析を行い、エビデンスを蓄積していくことが疾患の遺伝的背景の全貌を捉える上で必要であるといえる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200619016B
報告書区分
総合
研究課題名
老年病の発症に関わる遺伝―環境ネットワークの解明
課題番号
H17-長寿-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三木 哲郎(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小原 克彦(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学)
  • 名倉 潤(愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学)
  • 田原 康玄(愛媛大学大学院医学系研究科 統合医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年病の発症に関わる遺伝-環境ネットワークを解明する目的で、遺伝-環境交互作用を踏まえた高血圧やインスリン抵抗性、肥満、腎機能、老化等の感受性遺伝子解析を一般地域住民を対象に行った。加えてMDR法を用い、高血圧に対する遺伝-遺伝交互作用の探索も行った。
研究方法
対象は、愛媛県下でコホート設定している一般地域住民および企業従業員とした。加えて、全国の共同研究者より供与を受けた地域由来サンプルも用いた。全てのサンプルを統合すると約14000例になり、我が国において最大の遺伝疫学コホートとなる。全ての対象者からは書面にて同意を得た。対象者のDNAは末梢血より定法に則って抽出し、全ゲノム増幅後に解析に供した。
結果と考察
ミレニアムプロジェクトの成果を基盤に行った高血圧感受性遺伝子解析では、14000例の集団サンプルを用いた検討から、アミノ酸置換を伴う遺伝子F近傍のSNP2が、種々の交絡因子を調整した上でも高血圧の独立した危険因子であることが示された。候補遺伝子アプローチでは、推定GFR値に対しADRB149遺伝子多型が年齢との交互作用をもって有意に相関しており、この多型が加齢による腎機能低下と関連することが示された。高血圧の候補遺伝子多型であるCatalase遺伝子のC-844T多型と本態性高血圧との検討からは、C-844T多型が中性脂肪との交互作用を介して高血圧と相関する可能性が示唆された。反面、幾つかの候補遺伝子多型については、種々の共変量との交互作用を含めて検討しても、血圧やインスリン抵抗性、肥満と相関しない可能性が示された。一方、MDR法を用い、従前の検討で得られた3つの高血圧感受性遺伝子多型について再解析したところ、2つの遺伝子多型間に交互作用が見出され、その影響力は各遺伝子多型単独より強く、遺伝-遺伝相互作用の探索におけるMDR法の有用性が示された。
結論
本研究では様々なアプローチから老年病およびその基礎疾患に感受性を持つ遺伝子多型を、特に環境因子とのネットワークに着目して検討した。多因子疾患の遺伝因子は、個々には弱い影響力を示すものの総和として疾患発症に関与しているため、今後も、本研究のように大規模な集団サンプルを用いた検出力の高い解析を行い、エビデンスを蓄積していくことが疾患の遺伝的背景の全貌を捉える上で必要であるといえる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多因子疾患の発症・進展に対し、総和としてはかなりの影響力を持つ遺伝因子も個々の影響力は比較的弱い。そのため疾患感受性遺伝子を特定するには、大規模なサンプルを用いた検出力の高い解析が必要である。本研究の成果の一つとして見出された高血圧感受性SNPは、14,000例からなる我が国最大の遺伝疫学コホートにおいて、種々の交絡因子を調整した上でも高血圧と有意な相関を示したことから、日本人における高血圧感受性SNPといえる。本研究は、このような信頼性の高い解析を為しえる点で極めて価値の高い研究である。
臨床的観点からの成果
現在までに種々の疾患感受性SNPが報告されてきたが、いずれもポジティブ/ネガティブな報告が混在しており一定の見解は得られていない。本研究により、日本人を代表する大規模遺伝疫学コホートにおいて、遺伝因子と疾患との相関がその影響力も含めて明らかとなったことにより、例えば疾患のリスク度を評価する判断材料として、感受性遺伝子多型を用いることが出来るようになる。
ガイドライン等の開発
高血圧や動脈硬化性疾患などの老年病に関して、将来、遺伝因子も含めた治療・予防ガイドラインを策定する際に大きく寄与する成果といえる。
その他行政的観点からの成果
我が国で最も有病率の高い高血圧とその関連疾患の感受性遺伝子の一端が明らかとなったことにより、例えば疾患のハイリスク者の効率的なピックアップが可能となり、それに基づく効果的な予防介入を通じて医療費の軽減ならびに国民の健康維持増進に寄与することができる
その他のインパクト
本研究の成果は、一般地域住民を対象とした講演等において活用され、疾患に対する医科学的理解を深めるとともに、疾病予防に関する意識を惹起することで、国民の健康増進に大きく貢献している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-