高齢者の脳血管障害の進展予防を目的とした漢方薬によるテーラーメード医療の開発

文献情報

文献番号
200619014A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の脳血管障害の進展予防を目的とした漢方薬によるテーラーメード医療の開発
課題番号
H17-長寿-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 博三(富山大学医学部和漢診療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 祥泰(島根大学医学部附属病院)
  • 済木 育夫(富山大学和漢医薬学総合研究所)
  • 嶋田 豊(富山大学医学部和漢診療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中発症の予防効果、脳卒中患者の機能障害や能力低下の抑制効果など漢方薬の脳血管障害に対する効果を多角的に検討するとともに適応病態を解明することを目的とした。
研究方法
1)多施設において無症候性脳梗塞患者を登録し、桂枝茯苓丸群、他の漢方薬群、対照群に分け3から8年間経過を観察し、精神症状、自覚症状、脳卒中発症等に与える影響を検討した。2)長期療養型病床群に入院中の脳血管障害後遺症患者で中等度の介護度を有する患者を無作為に当帰芍薬散投与群と非投与群の2群に分け、脳卒中機能評価と機能的自立度評価を実施し12ヶ月間経過観察した。3)当帰芍薬散をアルツハイマー型認知症の患者に3ヶ月投与し、その効果を事象関連電位および神経心理検査により検討した。4)脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP)における脳卒中発症前後の血漿プロテオーム解析し、SHRSP群、SHRSP+ベラパミル群、SHRSP+黄連解毒湯群を比較検討した。
結果と考察
1)平均約5年間経過後の結果では、桂枝茯苓丸の投与により精神症状において意欲低下を評価するApathy Scaleは、対照群が悪化傾向を示したのに対して桂枝茯苓丸群、他の漢方薬群は変化を認めなかった。うつ状態を評価するSelf-Rating Depression Scaleは、40点以上のうつ状態と考えられる症例において、対照群は変化しなかったが、桂枝茯苓丸群では有意に改善し他の漢方薬群も改善傾向を示した。自覚症状において桂枝茯苓丸群で軽度の改善を認め、脳卒中発症率は他の漢方薬群において対照群に対して改善傾向を認めた。2)当帰芍薬散投与群において機能低下と自立度低下の抑制を認めた。3)当帰芍薬散投与により神経心理検査のうち選択的注意課題で改善傾向を認めた。4)脳卒中発症後の体重減少により消失するピークAを明らかにした。また、黄連解毒湯投与によりSHRSPの血圧の有意な低下と脳卒中発症の遅延作用が認められた。
結論
本研究により脳血管障害における発症予防から後遺症残存後までの各病期における漢方薬の有用性を明らかにすることが可能となった。また、各病期における適正方剤を現代医学的な観点から鑑別することが可能となり脳血管障害における漢方薬治療の治療指針の基礎を確立することができた。今後、さらに症例数の追加やエビデンスを蓄積し脳血管障害における漢方薬治療の診療ガイドラインを確立することで、健全な長寿社会の発展に寄与できると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200619014B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の脳血管障害の進展予防を目的とした漢方薬によるテーラーメード医療の開発
課題番号
H17-長寿-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 博三(富山大学医学部和漢診療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 祥泰(島根大学医学部附属病院)
  • 済木 育夫(富山大学和漢医薬学総合研究所)
  • 嶋田 豊(富山大学医学部和漢診療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中発症の予防効果、脳卒中患者の機能障害や能力低下の抑制効果など漢方薬の脳血管障害に対する効果を多角的に検討するとともに適応病態を解明することを目的とした。
研究方法
1)多施設において無症候性脳梗塞患者を登録し、桂枝茯苓丸群、他の漢方薬群、対照群に分け3から8年間経過を観察し、精神症状、自覚症状、脳卒中発症等に与える影響を検討した。2)脳血管障害後遺症患者で中等度の介護度を有する患者を無作為に当帰芍薬散投与群と非投与群の2群に分け、脳卒中機能評価と機能的自立度評価を実施し12ヶ月間経過観察した。3)当帰芍薬散をアルツハイマー型認知症の患者に3ヶ月投与し、その効果を事象関連電位および神経心理検査により検討した。4)無症候性脳梗塞患者に当帰芍薬散を投与し血液レオロジー因子等に及ぼす影響を検討した。5)高齢者の認知機能障害の進展予防に対する漢方薬の効果を客観的に検討するため記憶課題を作成し課題施行時の脳賦活の部位とそれに対する加齢の影響を機能的MRIにより検討した。6)脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP)における脳卒中発症前後の血漿プロテオームを解析し、脳卒中発症関連因子と黄連解毒湯の及ぼす影響を検討した。
結果と考察
1)平均約5年間経過後の結果では、精神症状において意欲低下を評価するApathy Scaleは、対照群が悪化傾向を示したのに対して漢方薬内服者は変化を認めなかった。うつ状態を評価するSDSは、うつ状態と考えられる症例において、対照群は変化しなかったが、桂枝茯苓丸群では有意に改善し他の漢方薬群も改善傾向を示した。脳卒中発症率は他の漢方薬群において対照群に対して改善傾向を認めた。2)当帰芍薬散投与群において機能低下と自立度低下の抑制を認めた。3)当帰芍薬散投与により神経心理検査のうち選択的注意課題で改善傾向を認めた。4)眼球結膜微小血管の血流量が増加し、血液レオロジー因子の全血粘度と赤血球変形能が改善と過酸化脂質値の低下を認めた。5)帯状回の加齢性賦活変化が記憶障害に対する漢方薬の効果を検討する上で有用である可能性が示された。6)脳卒中発症後消失するピークAを明らかにした。また、黄連解毒湯投与によりSHRSPの血圧の有意な低下と脳卒中発症の遅延作用が認められた。
結論
本研究事業のこれらの結果により脳血管障害における発症予防から後遺症残存後までの各病期における漢方薬の有用性を明らかにすることが可能となった。また、各病期における適正方剤を現代医学的な観点から鑑別することが可能となり脳血管障害における漢方薬治療の治療指針の基礎を確立することができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脳血管障害における発症予防から後遺症残存後までの各病期における漢方薬の有用性を明らかにすることが可能となり、各病期における適正方剤を現代医学的な観点から鑑別するできる可能性が示唆され、脳血管障害における漢方薬治療の治療指針の基礎を確立することができた。
臨床的観点からの成果
脳卒中発症の危険因子で、うつ症状などを随伴する無症候性脳梗塞に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方治療の有用性、脳卒中後遺症患者の機能低下と自立度低下に対する当帰芍薬散の有用性を明らかにした。さらに、当帰芍薬散の微小循環改善作用とアルツハイマー型認知症患者の選択的注意課題改善作用が示唆された。
ガイドライン等の開発
脳卒中予備軍、脳卒中後遺症患者に対する漢方薬の有効性が明らかになりつつあり、今後のガイドライン作成の基礎となりうる。
その他行政的観点からの成果
脳卒中後遺症患者の在宅治療を推進する上で、当帰芍薬散は機能低下と自立度低下の抑制作用を有することが明らかとなった。
その他のインパクト
今後関連学会で報告する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Goto H., Kiga C., Nakagawa T. et al.
Effects of two formulations for overcoming oketsu on vascular function and expression patterns of plasma proteins in spontaneously diabetic rats.
Journal of Traditional Medicine , 22 (4) , 237-243  (2005)
原著論文2
Yanaga A., Goto H., Nakagawa T. et al.
Cinnamaldehyde Induces Endothelium-dependent and -independent Vasorelaxant Action on Isolated Rat Aorta.
BIOLOGICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN , 29 (12) , 2415-2418  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-