高齢者の社会参加・社会貢献の増進に向けた介入研究

文献情報

文献番号
200619013A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の社会参加・社会貢献の増進に向けた介入研究
課題番号
H16-長寿-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
新開 省二(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 佳典(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 佐久間 尚子(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 角野 文彦(滋賀県東近江地域振興局地域健康福祉部(東近江保健所))
  • 吉川 武彦(中部学院大学大学院人間福祉学研究科)
  • 内田 勇人(兵庫県立大学環境人間学部)
  • 西川 武志(北海道教育大学教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、介入研究とその評価を通じて、地域福祉と学校教育という二つの領域での、高齢者の社会参加・社会貢献プログラムを提案することである。3年目の平成18年度は、それぞれの介入事業を継続しながらアウトカム評価およびプロセス評価を行った。
研究方法
1.埼玉県鳩山町をモデル地域として、町内のニュータウン(NT)を介入地域、NT以外(本村)を対照地域に設定し、中高年者の力を活用し地域福祉の向上をねらう介入研究を行ってきた。今年度はアウトカム評価のために、同町中高年者(55歳?79歳)の1/3無作為抽出標本(n=2,123)を対象に追跡調査を実施するとともに、これまでのデータを活用して、中高年者のソーシャルネットワークのパターンとその特徴を分析した。
2.世代間交流型社会貢献プログラム(”REPRINTS”)を考案し、全国3カ所(東京都中央区、神奈川県川崎市多摩区、滋賀県長浜市)で介入研究を行ってきた。今年度は第三期事業をスタートしサンプルサイズを拡大するとともに、アウトカム評価のために横断調査および追跡調査を行った。さらに、各地域における本事業の定着化、継続化を目的として、参加者(ボランティア)による完全自主運営化を支援した。
結果と考察
1.介入地域(NT)における55歳から64歳の年齢層での社会活動・奉仕活動、学習活動という二つの側面の社会活動性が増進した。活動性が高まった人では、もともと地域共生意識やソーシャルサポート・ネットワークが高い特徴があった。中高年者のネットワークのパターンは「地縁・血縁型」、「趣味・学習型」、「仕事・学校型」の3つに分類することができた。中高年者の社会参加を促進する戦術として、地域共生意識とネットワークパターンを考慮したアプローチが有効である。本年度から地域福祉ボランティア単独による活動(地域健康教室)がスタートした。
2. REPRINTS活動を続けることで、健康度自己評価、抑うつ、自己効力感は有意に改善または改善傾向が認められた。認知機能では言語の音韻課題などで群間差が生じる兆しがみられ、より長期に観察すると介入効果が現れる可能性がある。REPRINTS事業の導入後、しだいに保護者や一般市民の間で事業に対する認知度や評価が高まっていることが確認できた。年度末までにREPRINTSボランティアによる自主運営化がほぼ達成できた。
結論
本研究で実施した二つの介入プログラムは、高齢者の社会参加・社会貢献のプログラムとして有効性と実行可能性があり、広く普及されるべきである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200619013B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の社会参加・社会貢献の増進に向けた介入研究
課題番号
H16-長寿-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
新開 省二(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 佳典(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 佐久間 尚子(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 角野 文彦(滋賀県東近江地域振興局地域健康福祉部(東近江保健所))
  • 吉川 武彦(中部学院大学大学院人間福祉学研究科)
  • 内田 勇人(兵庫県立大学環境人間学部)
  • 西川 武志(北海道教育大学教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、介入研究とその評価を通じて、地域福祉と学校教育という二つの領域での、高齢者の社会参加・社会貢献プログラムを提案することである。
研究方法
1.埼玉県鳩山町をモデル地域として、町内のニュータウン(NT)を介入地域、NT以外(本村)を対照地域に設定し、中高年者の力を活用し地域福祉の向上をねらう介入研究を行った。そのスキームは、地域福祉ボランティアの育成→行政、専門機関、ボランティアの3者による介護予防教室の開催→ボランティアのスキルアップ→ボランティアによる自主活動の展開、というものである。この間アウトカム評価のために、同町中高年者(55歳?79歳)の1/3無作為抽出標本(n=約2,000)を対象に縦断調査を実施した。
2.世代間交流型社会貢献プログラム(”REPRINTS”)を考案し、全国3カ所(東京都中央区、神奈川県川崎市多摩区、滋賀県長浜市)で介入研究を行った。これは参加者が3ヶ月間の研修を経て、ローテーションを組みながら地元の小学校や幼稚園を訪問し、児童を対象に図書の朗読いわゆる「読み聞かせ」ボランティアを行うものである。ボランティア群(155名)に対して対照群(200名)を設定し、アウトカム評価を縦断的な健康度測定や質問紙調査によって、①ボランティア参加者(心身機能)、②児童(高齢者イメージ)、③学校、④保護者の側面から行った。
結果と考察
1.介入地域(NT)における55歳から64歳の年齢層での社会活動・奉仕活動、学習活動という二つの側面の社会活動性が増進した。活動性が高まった人では、もともと地域共生意識やソーシャルサポート・ネットワークが高い特徴があった。中高年者のネットワークのパターンは「地縁・血縁型」、「趣味・学習型」、「仕事・学校型」の3つに分類することができた。中高年者の社会参加を促進する戦術として、地域共生意識とネットワークパターンを考慮したアプローチが有効と考えられた。
2. REPRINTS活動を続けることで、健康度自己評価、抑うつ、自己効力感は有意に改善またはその傾向が認められた。認知機能では言語の音韻課題などで群差が生じる兆しがあり、より長期に観察すると介入効果が現れる可能性がある。ボランティアと接触頻度の高い児童では高齢者イメージが維持・改善し、保護者はREPRINTS事業が児童の情操教育に好影響をもつと認識していた。
結論
二つの介入プログラムは有効性と実行可能性が確認されたことから、地域福祉型とREPRINTS型の高齢者の社会参加・貢献プログラムを提案する。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
中高年者の社会参加・社会貢献のモデルは多いものの、あるプログラムが本人の心身機能に及ぼす影響や社会的な効果を学術的に評価した研究はほどんどない。本研究では地域福祉および学校教育への社会参加プログラムを考案し、それを介入研究の手法で評価したもので、新規性および独創性が高い。地域福祉型プログラムでは介入地域と対照地域の中高年者の社会活動性や地域福祉の向上という視点から、学校教育型プログラムでは世代間交流による児童や保護者への影響という視点からアウトカム評価を行い、その有効性を確認した。
臨床的観点からの成果
地域福祉型プログラムでは介入地域における中高年齢層の社会活動性の増進を認めている。そのことが地域高齢者の生活不安や閉じこもりの減少など地域福祉の向上につながったかどうかは、現在実施中の追跡調査の結果を待って検証する。学校教育型プログラムは、高齢者による児童への絵本や図書の「読み聞かせ」を中核とした活動であり、研究当初から対照群を設定して認知機能の変化を追跡している。これまでのところ言語の音韻課題などで群間差が生じる兆しがみられ、より長期に観察すると介入効果があらわれる可能性がある。
ガイドライン等の開発
本研究により二つのプログラムの有効性と実行可能性がほぼ確認されたので、まず報告書に地域福祉型プログラムと学校教育型プログラム(別称、”REPRINTS”)として掲載した。今後パンフレットあるいはマニュアルにまとめ一般に公表する予定である。
その他行政的観点からの成果
今後少子高齢社会のひずみが拡大するわが国においては、退職後の中高年者による社会貢献が大きな意義を有する。地域福祉と学校教育は特にそのニーズが高い領域である。同時に社会参加を通じてより心身の健康が保たれ、医療や介護といった社会的コストの抑制にもつながる。しかし現状では退職者が地域社会にうまく溶け込んでいるとは言い難い。これ諸点を考慮したとき、本研究で有効性と実行可能性が示された二つのプログラムは、退職後の中高年者による社会貢献を行政施策として推進する際大いに活用されるべきものと考えられる。
その他のインパクト
地域福祉型介入研究の一部はNHK(首都圏ネットワーク)で報道された。REPRINTSボランティア(学校教育型介入研究)も数回にわたり民放で報道されるとともに、全国新聞に数回紹介記事が掲載された。本研究成果をもとに平成17年度2回にわたり「地域への軟着陸-退職後も社会参加でイキイキと-」と題する公開講座を開催した(主催:東京都老人総合研究所)。なお「団塊の世代の地域参加」等をテーマとした市区町村の研修・講演会などで講師を務めることも多くなってた。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
30件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
藤原佳典, 渡辺直紀, 西真理子, 他
シニアボランティアとの交流が児童の高齢者イメージに及ぼす影響-世代間交流型ヘルスプロモーションプログラム"REPRINTS"より
日本公衆衛生雑誌  (2007)
原著論文2
吉田裕人, 藤原佳典, 天野秀紀, 他
介護予防事業の経済的側面からの評価-介護予防事業参加群と非参加群の医療・介護費用の推移分析-
日本公衆衛生雑誌 , 54 (4) , 148-159  (2007)
原著論文3
藤原佳典, 西真理子, 渡辺直紀, 他
都市部高齢者による世代間交流型ヘルスプロモーションプログラム-"REPRINTS"の1年間の歩みと短期的効果-
日本公衆衛生雑誌 , 53 (9) , 702-712  (2006)
原著論文4
菅万理, 吉田裕人, 藤原佳典, 他
縦断的データからみた介護予防健診受診・非受診の要因
日本公衆衛生雑誌 , 53 (9) , 688-701  (2006)
原著論文5
田中千晶, 吉田裕人, 藤原佳典, 他
地域高齢者における身体活動量と身体、心理、社会的変数との関連
日本公衆衛生雑誌 , 53 (9) , 671-680  (2006)
原著論文6
内田勇人, 朝井由香里, 藤原佳典, 他
地域在宅高齢者における車両スピード認知と身体能力との関連
厚生の指標 , 53 (10) , 7-12  (2006)
原著論文7
藤原佳典, 天野秀紀, 吉田裕人, 他
在宅自立高齢者の介護保険認定に関連する身体・心理的要因. 3年4ヶ月間の追跡調査から
日本公衆衛生雑誌 , 53 (2) , 77-99  (2006)
原著論文8
Fujita K, Fujiwara Y, Chaves PHM, et al.
Frequency of going outdoors as a good predictors for incident disability of physical function as well as disability recovery in community-dwelling older adults in rural Japan
J Epidemiol , 16 (6) , 261-270  (2006)
原著論文9
Ishizaki Y, Yoshida H, Suzuki T, et al.
Effects of cognitive function on functional decline among community-dwelling non-disabled older Japanese
Arch Gerontol Geriatr , 42 , 47-58  (2006)
原著論文10
藤原佳典
高齢者によるボランティア活動の意義と心身の健康に及ぼす影響-productivityとしての理論から実践的課題へ-
秋田公衆衛生雑誌 , 4 (1) , 12-20  (2006)
原著論文11
新開省二
閉じこもり予防
総合リハビリテーション , 34 , 1041-1045  (2006)
原著論文12
藤原佳典, 杉原陽子, 新開省二
ボランティア活動が高齢者の心身の健康に及ぼす影響-地域保健福祉における高齢者ボランティアの意義-
日本公衆衛生雑誌 , 52 (4) , 293-307  (2005)
原著論文13
新開省二
介護予防チェックリスト
公衆衛生 , 69 , 630-633  (2005)
原著論文14
新開省二, 藤田幸司, 藤原佳典, 他
地域高齢者における"タイプ別"閉じこもりの出現頻度とその特徴
日本公衆衛生雑誌 , 52 , 443-455  (2005)
原著論文15
新開省二, 藤田幸司, 藤原佳典, 他
地域高齢者におけるタイプ別閉じこもりの予後. 2年間の追跡研究
日本公衆衛生雑誌 , 52 , 627-638  (2005)
原著論文16
新開省二, 藤田幸司, 藤原佳典, 他
地域高齢者におけるタイプ別閉じこもり発生の予測因子. 2年間の追跡研究から
日本公衆衛生雑誌 , 52 , 874-885  (2005)
原著論文17
Fujiwara Y, Chaves PHM, Takahashi R, et al.
Arterial pulse wave velocity as a marker of poor cognitive function
J Gerontol Med Sci , 60 (5) , 607-612  (2005)
原著論文18
Lee Y, Shinkai S
Correlates of cognitive impairment and depressive symptoms among older adults in Korea and Japan
Int J Geriatr Psychol , 20 , 576-586  (2005)
原著論文19
藤田幸司, 藤原佳典, 熊谷修, 他
地域在住高齢者の外出頻度別にみた身体・心理・社会的特徴
日本公衆衛生雑誌 , 51 , 168-180  (2004)
原著論文20
金貞任, 新開省二, 熊谷修, 他
地域中高年者の社会参加の現状とその関連要因-埼玉県鳩山町の調査から-
日本公衆衛生雑誌 , 51 , 322-334  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-