自立と介助の両側面からアプローチしたベッドの開発

文献情報

文献番号
200619008A
報告書区分
総括
研究課題名
自立と介助の両側面からアプローチしたベッドの開発
課題番号
H16-長寿-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 信寿(慶應義塾大学)
  • 石渡 利奈(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,758,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベッド上での生活を余儀なくされる高齢者・障害者の最大限の自立を促進し、介助者の役割を最小限に設定した上で介助者負担を軽減する新しいベッドの開発を行う。このため、以下の目標を設定し、今年度は主に⑤を行った。
① 覚醒度の向上策の提案
② 自立活動要件の提案
③ 介助の腰部負担軽減策の提案
④ ベッドの試作
⑤ ベッドの評価
研究方法
ベッドの改良および効果の検証のため、以下を行った。
(1) 前年度に製作した実験用7分割ベッドの基本性能を評価した。
(2) 7分割ベッドと従来のギャッチベッドにおける体圧集中、尻すべり量を計測した。
(3) ワークサンプリング法により、ベッド周りでの一日の介助作業を調査した。
(4) 体格対応支持面長を推定する身体幾何モデルを開発し、低負担飲食姿勢の条件を検討した。
(5) 身体幾何モデルの応用により、7分割ベッドの屈曲動作に追従するマットレスの寸法・伸縮条件を求めた。
(6) 臥床者が自分で位置の調節や収納を行うことができるテーブルを設計した。
(7) 臨床場面で各個人への適切な設定を行うための覚醒度モニタリング手法を検討した。
結果と考察
(1) 駆動機構と安全システムについて問題があることがわかった。このため、スライドレールや支持面構造の剛性強化、アクチュエータと下肢フレームの干渉を避ける改良を行った。
(2) 7分割ベッドでは、胸部角度45度以上で臀部の圧力が特に減少し、尻すべり量は、従来ベッドより平均6mm少なかった。
(3) 介助時間に対するベッド周りの介助時間割合を算出した結果、本ベッドの利用により、約50%の時間割合で介助負担が軽減することがわかった。
(4) 提案した低負担飲食用ベッド角度と、幾何モデルにより推定した支持面寸法により、臥床者の体格に合った低負担飲食条件を実現できる。
(5) 背上げ動作に追従するには、マットレス下面が胸部で80mm、腰部で210mm、臀部で130mm程度伸び、膝部では120mm程度縮む必要があることがわかった。
(6) 身体前後方向と高さ方向の位置調節を行う多自由度アームを設計し、テーブルの収納機構を検討した。
(7) 眼球運動と開眼度の画像計測により、プライバシーに配慮しつつ、臥床者の状態をモニタリングできることを示した。
結論
以上より、7分割ベッドと作業用什器によって、臥床者の自立および介助者負担の軽減が実現されることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200619008B
報告書区分
総合
研究課題名
自立と介助の両側面からアプローチしたベッドの開発
課題番号
H16-長寿-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 信寿(慶應義塾大学)
  • 石渡 利奈(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベッド上での生活を余儀なくされる高齢者・障害者の最大限の自立を促進し、介助者の役割を最小限に設定した上で介助者負担を軽減する新しいベッドの開発を行う。このため以下の目標を設定した。

①覚醒度の向上策
活動促進の基本として覚醒度を高める方策を検討する

②自立活動要件
臥床状態で自立的活動を行うための開発要件を検討する

③介助の腰部負担軽減
介助姿勢を計測して腰痛との関係を調べ、負担軽減方策を検討する

④ベッドの試作
ベッド上での自立と介助負担の軽減を実現するベッドを試作する

⑤ベッドの評価
試作したベッドの評価をし、その効果を検証する
研究方法
①筋刺激に着目した背折れ姿勢と不安定枕を提案し、各種生理量、および読書時眼球運動の画像解析による覚醒指標により効果を検証した。
②飲食・書字・モニタ作業に注目し、身体モデルと3次元計測装置により作業姿勢と什器の設計条件を求めた。
③体幹部3軸角度計を用いて、おむつ交換と移乗介助作業における腰部負担を計測した。また、介助現場での長時間姿勢計測を行った。
④ベッド支持面分割数と調節箇所、調節範囲の検討、基本構造と駆動方法の検討を行った。
⑤開発したベッドと従来ベッドを用いて、飲食時の筋負担の評価や、体圧集中および尻すべり量などの身体負担の評価を行った。
結果と考察
①両向上策において身体負担の増加は認められず、覚醒度が有意に向上した。これより、背折れ姿勢および不安定枕は覚醒度を向上させる良好な方策であることが示唆された。
②身体特徴点を基準とし、各作業に適した什器配置範囲を提案した。提案姿勢では、作業の筋負担と体圧集中の軽減が確認できた。また、最適配置を実現するための什器を設計した。
③二人介助体制は負担軽減に有効であることが定量的に示され、一人介助でも、ベッドを高くし、作業スペースを広げ、簡単な補助具を活用することが推奨された。また、長時間計測より、本ベッドの利用により、約50%の時間割合で介助負担が軽減することがわかった。
④支持面の分割数を7とし、身体支持条件を定量化するための各種センサを設置した実験用7分割ベッドを試作した。
⑤本ベッドおよび提案した周辺什器により、飲食時の筋負担が有意に軽減し、体圧集中および尻すべり量も低減された。
結論
以上より、ベッド上での覚醒度の向上策と自立活動要件を示し、ベッド周りでの介助における腰部負担軽減策を示した。これらの結果に基づいて実験用7分割ベッドを試作し、本ベッドと作業用什器により、臥床者の自立および介助者負担の軽減が実現されることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者の自立度を高める什器設計を目的とし、覚醒度、生活動作、快適性の面から科学的な根拠を得るための方法論を確立した。また、現場での介助負担を調査するため、動作に干渉せず、長時間身につけたまま姿勢計測を行える計測装置を開発した。本研究において開発したこれらの計測手法は、ベッド以外の機器や生活状況においても、多くの応用範囲が期待できる。
臨床的観点からの成果
ベッド上での自立度の向上策として、覚醒度、生活動作、快適性のそれぞれの側面から最適な環境を提案した。また、ベッド周りの介助負担について、現場での長時間計測および実験室内での詳細計測を行うことにより、ベッドに対する要求機能を提案した。これらの成果は、臥床生活を送る高齢者・障害者の生活の質の向上する根本的な解決策となるのみならず、介助に携わる者の負担を軽減し、ケアの質を高めるものである。
ガイドライン等の開発
ベッド上において、快適性を維持したまま覚醒度を向上させる手法を示した。また、介助人数やスペース、什器設定などによる介助負担の違いを定量的に明らかにし、それに基づいて介助負担を軽減するための環境調整や介助方法を提案した。さらに、現場での介助負担の長時間計測により、負担が集中する時間等を明らかにし、介助者の勤務体制の見直しなどを提案した。
その他行政的観点からの成果
ベッド周りの介助は福祉現場の多くの場面で行われ、その介助負担の軽減方策を明らかにしたことは、腰痛などの労働災害の防止に有用な知見を提供することが可能となる。これにより、看護・介護職の労働衛生問題の解決という行政課題にむけても効果が期待できる。
その他のインパクト
本研究で開発したベッドについて、日経産業新聞に以下の記事が掲載された。
2006年2月14日 日経産業新聞009ページ
「介護ベッド開発用装置」慶大 快適な姿勢を調査

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐々木由理、川本貴志、山崎信寿
快適背上げ姿勢探索用ベッドの開発
人間工学 , 42 (6) , 373-380  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-