ゲノム情報に基づくホルモン補充療法合併症の発症予測システムの開発

文献情報

文献番号
200619005A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報に基づくホルモン補充療法合併症の発症予測システムの開発
課題番号
H16-長寿-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高柳 涼一(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 古野 純典(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 林 純(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 岡村 孝(久留米大学 医学部)
  • 大中 佳三(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 河手 久弥(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,162,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ホルモン補充療法は近年の大規模臨床試験にて静脈血栓症や冠動脈疾患のリスク増加が報告され、その将来性が不明瞭である。本研究ではその異常が日本人の血栓性素因として重要な凝固制御因子プロテインSについて、妊娠や性ホルモンのプロテインSへの影響と、プロテインSの遺伝子変異や遺伝子多型の血栓症、心血管疾患発症への関与を検討する。
研究方法
1)検診受診女性を対象にプロテインS抗原量、プロテインS遺伝子の変異と遺伝子多型(SNPs)について解析する。
2)コホート集団の女性を対象に頸動脈エコーによる内膜中膜肥厚度、心血管疾患や血栓症の病歴、プロテインS測定、生化学データおよびゲノム情報についての解析を行う。
3)新たに確立したマウスプロテインS測定系を用いて、妊娠や性ホルモン投与のマウスプロテインSへの影響を検討する。
4)ホルモン補充療法や選択的エストロゲン受容体モジュレーター投与を受けている者を対象に血栓症や心血管疾患発症を一次エンドポイントとした前向き研究をスタートする。
結果と考察
1)一般住民女性のうちプロテインS抗原量低下者を0.8%、遺伝子変異を有する者を3.2%に認め、その頻度がけして稀でないことが明らかになった。またプロテインS抗原量と相関する新しいプロテインS遺伝子のSNPsを見いだした。
2)プロテインS活性は年齢と正相関を示した。頸動脈エコーによる動脈硬化度は年齢、プロテインS活性、ホモシステイン、高感度CRP、HbA1cなどと正相関を、副腎アンドロゲンDHEA-Sとは負の相関を認めた。多変量解析では年齢との相関が強く、年齢調整後の解析ではHbA1cのみに有意な相関を認めた。
3)妊娠、エストロゲン投与、絨毛性ゴナドトロピン投与のマウスにおいてプロテインSの低下を認め、肝臓におけるプロテインS発現抑制が関与していた。
4)コホート集団からの参加と関連施設において前向き研究の登録を開始し、約50名の参加を得た。登録数をさらに増加させ追跡調査を行うことが重要と考えられた。
結論
1)一般住民女性におけるプロテインS低下と遺伝子変異の頻度、2)プロテインS抗原量と相関する新しいプロテインS遺伝子多型の同定、3)マウスモデルでの妊娠や性ホルモン投与によるプロテインSの低下とそのメカニズムなどについての研究を行い、4)ホルモン補充療法者等を対象とした前向き研究を開始した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200619005B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノム情報に基づくホルモン補充療法合併症の発症予測システムの開発
課題番号
H16-長寿-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高柳 涼一(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 濱崎 直孝(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 古野 純典(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 林 純(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 岡村 孝(久留米大学 医学部)
  • 大中 佳三(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 河手 久弥(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ホルモン補充療法は近年の大規模臨床試験にて静脈血栓症や冠動脈疾患のリスク増加が報告され、その将来性が不明瞭である。本研究ではその異常が日本人の血栓性素因として重要なプロテインSについて、性ホルモンによる発現調節機構の解明、コホート集団での血栓症や心血管疾患発症への関与の検討、ホルモン補充療法者を対象とした前向き研究などを行うことによりゲノム情報に基づくホルモン補充療法合併症の発症予測システムの開発を行う。
研究方法
1)ヒトプロテインS遺伝子のpromoter活性に対する性ホルモン(特にエストロゲン)の影響を検討する。
2)プロテインS遺伝子promoter領域の遺伝子多型(SNPs)を解析する。
3)コホート集団の女性を対象に動脈硬化度評価、病歴、プロテインS測定、生化学データおよびゲノム情報についての横断的解析を行う。
4)マウスプロテインS測定系を確立し、妊娠や性ホルモン投与のマウスプロテインSへの影響を検討する。
5)エストロゲン補充療法やSERMの投与を受けている者を対象に前向き研究を行う。
結果と考察
1)エストロゲンはプロテインS遺伝子promoter活性を抑制し、その応答領域は古典的エストロゲン応答配列とは異なっていた。
2)プロテインS遺伝子promoter領域に複数のSNPs(一部は新規)を認め、プロテインS抗原量と相関する新しいSNPsを見出した。また住民女性でのプロテインS抗原量低下者やプロテインS遺伝子変異の頻度を明らかにした。
3)プロテインSは年齢と正相関を示した。動脈硬化度は年齢、プロテインS、HbA1cなどと正相関を示したが、年齢調整後の解析ではHbA1cのみに有意な相関を認めた。
4)妊娠や性ホルモン投与のマウスにおいてプロテインSの低下を認め、主に肝臓におけるプロテインS発現抑制が関与していた。
5)コホート集団からの参加と関連施設において前向き研究の登録を開始し、約50名の参加を得た。さらに登録数を増加させ追跡調査を行うことが重要と考えられた。
結論
1)エストロゲンによるプロテインS遺伝子の転写抑制とメカニズム、2)住民女性におけるプロテインS低下と遺伝子変異の頻度、3)プロテインSと相関する新しいSNPsの同定、4)マウスでの妊娠や性ホルモン投与のプロテインSへの影響とそのメカニズムなどの研究を行い、これらをもとに5)ホルモン補充療法者等を対象とした前向き研究を開始した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般住民女性におけるプロテインS低下や遺伝子変異の頻度を明らかにするとともに、プロテインSと相関する新しいプロテインS遺伝子多型を同定した。マウスプロテインS測定系を新たに開発し、マウスでの妊娠や性ホルモン投与によるプロテインS低下とそのメカニズムの解明などを行った。マウスのプロテインS測定の報告はこれまで例がなく、性ホルモンによるヒトのプロテインSの調節機構を解明するうえで非常に有用なモデルと考えられる。
臨床的観点からの成果
ホルモン補充療法や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)投与を受けている者を対象に血栓症や心血管疾患発症を一次エンドポイントとしたprospective studyを開始した。prospective studyの継続により、ホルモン補充療法によるプロテインSを中心とした凝固制御系への影響を介した血栓症や心血管疾患発症への影響を明らかにすることが期待される。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドライン等の開発へはいたっていない。
その他行政的観点からの成果
ホルモン補充療法は欧米に比べてわが国では普及率が低い。その理由のひとつにホルモン補充療法に伴う副作用に対する不安等が考えられている。しかしながら欧米人と日本人では副作用の内容や頻度も異なるため、本研究を通じてゲノム情報に基づいた日本人のホルモン補充療法でのテーラーメイド医療の指針の確立に貢献し、またホルモン補充療法に対する理解と普及にも役立つと考えられる。
その他のインパクト
「プロテインS及びプロテインCの活性測定方法並びに活性測定試薬」の特許を出願中である。またプロテインSを含む血栓性素因に関する研究成果についてホームページ(http://www.med.kyushu-u.ac.jp/cclm/tadasiikensai/kessennsoin.htm)に掲載をおこなった。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-