高齢者排尿障害に対する患者・介護者、看護師向きの排泄ケアガイドライン作成、一般内科医向きの評価基準・治療効果判定基準の確立普及と高度先駆的治療法の開発

文献情報

文献番号
200619004A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者排尿障害に対する患者・介護者、看護師向きの排泄ケアガイドライン作成、一般内科医向きの評価基準・治療効果判定基準の確立普及と高度先駆的治療法の開発
課題番号
H16-長寿-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 菊夫(国立長寿医療センター 手術・集中医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 百万(名古屋大学大学院 医学系研究科 病態外科学講座 泌尿器科学)
  • 井川 靖彦(信州大学医学部 泌尿器科学講座)
  • 柿崎 秀宏(旭川医科大学 泌尿器科学講座)
  • 宮川 征男(鳥取大学医学部 腎泌尿器学)
  • 菅谷 公男(琉球大学医学部 器官病態医科学講座 泌尿器科学分野)
  • 長谷川友紀(東邦大学医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
  • 山元ひろみ(ユニ・チャーム株式会社)
  • 渡邉 順子(聖隷クリストファー大学看護学部)
  • 泉 キヨ子(金沢大学大学院 医学系研究科 保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,975,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の尿失禁・排尿障害に対しては、介護者、看護師、内科医がそれぞれの役割を果たし、泌尿器科医もこれまでの治療法では対処不能の難治性排尿障害に対して先駆的治療法を開発する必要がある。
研究方法
1)介護・看護師レベル:後藤は排泄ケアマニュアルの最終版を作成した。山元はマニュアル中の排尿チェック表についての教育DVDを作成した。渡邉は病院における排尿ケアの実態調査を、泉は施設高齢者の実態調査を行った。2)一般内科医レベル: 長谷川は、地域の診療所医師が行った高齢者排尿障害診療データの解析を行った。岡村は、一般内科医のための高齢者排尿障害診療マニュアルの改訂を行った。3)泌尿器科レベル:過活動膀胱に対して宮川と岡村が膀胱壁内A型ボツリヌストキシン(BTX)注入療法、排尿収縮力低下に対して岡村が尿道括約筋内BTX注入療法、井川と柿崎が過活動膀胱に対するレジニフェラトキシン(RTX)膀胱内注入療法、菅谷が夜間頻尿に対するメラトニン治療を検討した。
結果と考察
後藤と岡村はマニュアルを改訂し、山元はDVDを作成した。渡邊は入院した高齢者のおむつ使用は不適切であるとした。泉は、療養型施設において排尿ケアマニュアルを導入後3年間のうちに排泄ケアの標準化が行われるようになったとした。長谷川は一般内科医がマニュアルに従って排尿障害の診療を行うと、ほぼ泌尿器科医と同等な診療が可能であるとした。岡村は尿排出障害に対する尿道括約筋内BTX注入療法の有効率は0%(0/3)、過活動膀胱に対する膀胱壁内BTX注入療法の有効率は40%(2/5)であるとした。宮川は、過活動膀胱患者13名にBTX膀胱壁内注射療法を行い、効果判定を行った症例では尿失禁がほぼ消失したと報告した。菅谷は、夜間頻尿に対するメラトニンの効果はリルマザホンとほぼ同程度であるとした。井川は、間質性膀胱炎(IC)において膀胱粘膜知覚過敏があることを示した。柿崎は、難治性の過活動膀胱を有する14例にRTX膀胱内注入療法を施行し、4例で尿失禁改善を確認した。RTX膀胱内注入療法が有効であった症例ではマーカインテストの陽性率が75%(3/4)であった。
結論
排泄ケアマニュアルや一般内科医向きの高齢者排尿障害診療マニュアルは、今後さらに利用が進むものと思われる。過活動膀胱に対しては、RTX膀胱内注入療法、BTX膀胱壁内注入療法はある程度有効であったが、対象者が高齢者ゆえに世界に発信できるような泌尿器科専門医レベルの高齢者排尿障害に対する新規治療法の開発はなかなか難しいことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200619004B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者排尿障害に対する患者・介護者、看護師向きの排泄ケアガイドライン作成、一般内科医向きの評価基準・治療効果判定基準の確立普及と高度先駆的治療法の開発
課題番号
H16-長寿-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 菊夫(国立長寿医療センター 手術・集中医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤百万(名古屋大学大学院医学系研究科 病態外科学講座 泌尿器科学)
  • 井川靖彦(信州大学医学部 泌尿器科学講座)
  • 柿崎秀宏(旭川医科大学 泌尿器科学講座)
  • 菅谷公男(琉球大学医学部 器官病態医科学講座 泌尿器科学分野)
  • 宮川征男(鳥取大学医学部 腎泌尿器学)
  • 長谷川友紀(東邦大学医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
  • 山元ひろみ(ユニ・チャーム株式会社)
  • 渡邉順子(聖隷クリストファー大学 看護学部)
  • 泉キヨ子(金沢大学大学院医学系研究科 保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の尿失禁・排尿障害に対しては、介護者、看護師、内科医がそれぞれの役割を果たし、泌尿器科医もこれまでの治療法では対処不能の難治性排尿障害に対して先駆的治療法を開発する必要がある。
研究方法
1)介護者・看護師レベル:後藤は排泄ケアマニュアルの妥当性を検証し、最終版を作成した。山元はおむつ選択のアルゴリズムを作成、排尿チェック表の教育DVDを作成した。渡邉と泉は、病院における排尿ケアの実態調査を、泉は施設高齢者の実態調査を行った。2) 一般内科医レベル:長谷川は、地域の診療所医師が行った高齢者排尿障害診療データの解析を行った。岡村は、診療所に通院する高齢者の排尿障害の頻度調査と一般内科医のための高齢者排尿障害診療マニュアルの作成・改訂を行った。3)泌尿器科レベル:過活動膀胱に対して宮川と岡村が膀胱壁内A型ボツリヌストキシン(BTX)注入療法、排尿収縮力低下に対して岡村が尿道括約筋内BTX注入療法、井川と柿崎が過活動膀胱に対するレジニフェラトキシン(RTX)膀胱内注入療法、菅谷が夜間頻尿に対するメラトニン治療を検討した。
結果と考察
後藤と岡村はマニュアル、山元はおむつ選択のアルゴリズムと教育DVDを作成した。渡邊は入院した高齢者のおむつ使用は不適切であるとした。泉は、療養型施設において排尿ケアマニュアルを導入後3年間のうちに排泄ケアの標準化が行われるようになったとした。長谷川は一般内科医がマニュアルに従って排尿障害の診療を行うと、ほぼ泌尿器科医と同等な診療が可能であるとした。また、診療所に通院する高齢者のおよそ1/3の人々が、評価が必要な排尿障害を有していることを明らかにした。岡村は尿排出障害に対する尿道括約筋内BTX注入療法の有効率は0%(0/3)、過活動膀胱に対する膀胱壁内BTX注入療法の有効率は40%(2/5)であるとした。宮川は、過活動膀胱患者13名にBTX膀胱壁内注射療法を行い、効果判定を行った症例では尿失禁がほぼ消失したと報告した。菅谷は、夜間頻尿に対するメラトニンの効果はリルマザホンとほぼ同程度であるとした。井川は、間質性膀胱炎(IC)において膀胱粘膜知覚過敏があることを示した。柿崎は、難治性の過活動膀胱を有する14例にRTX膀胱内注入療法を施行し、4例で尿失禁改善を確認した。RTX膀胱内注入療法が有効であった症例ではマーカインテストの陽性率が75%(3/4)であった。
結論
排泄ケアマニュアルや一般内科医向きの高齢者排尿障害診療マニュアルは、今後さらに利用が進むものと思われる。過活動膀胱に対しては、RTX膀胱内注入療法、BTX膀胱壁内注入療法はある程度有効であった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性過活動膀胱や排尿筋収縮力低下など高齢者に見られる排尿障害は、現在ある治療では治癒が難しいことが多い。一方、一般内科医の排尿障害診療レベルが高くなれば、泌尿器科ではそのような難治例を扱うことが増加すると考えられる。この研究では、難治性排尿障害に対する新規治療法を試み、Botoxが過活動膀胱に有効であるなど一定の成果を得た。また、高齢者を対象とした臨床試験では判定基準のハードルを下げる必要があることが認識できた。
臨床的観点からの成果
高齢者の排尿障害に対しては、人間の尊厳」擁護、QoL向上、医療レベル向上の観点から、①介護者・看護師が行う排泄ケアの向上、②一般内科医の排尿障害診療レベルの向上、③泌尿器科専門医レベルでの新規治療法の開発が必要である。本研究により作成された「排泄ケアマニュアル」、「一般内科医のための高齢者排尿障害診療マニュアル」はすでに公表され、一定の評価を受けている。平成19年度の研究で改訂作業がなされ、特に後者のマニュアルはアウトカムスタディーによりその有用性が確立された。
ガイドライン等の開発
高齢者排尿障害の分野では、今後、泌尿器科専門医よりも介護者・看護師や一般内科医の役割が大きくなると考えられ、ガイドラインよりも、現場ですぐに役に立つようなマニュアルが有用であると考えられる。本研究では、介護者・看護師向けと一般内科医向きの2つのマニュアルが作成された。後者のマニュアルは、高齢者排尿障害のキーワードでのGoogle検索では、3番目にノミネートされている。
その他行政的観点からの成果
排泄ケア向上に関するアウトカムスタディーは、研究体制が整えることがたいへんに難しい。その困難にも関わらず、後藤は排泄ケアマニュアルを老人施設へ導入してその有用性を確立した。今後、このマニュアルを全国レベルで活用することによって、本邦における実地の高齢者医療のレベルアップが期待できる。
その他のインパクト
名古屋大学排泄情報センター、NPO愛知排泄ケア研究会を主宰する後藤は、 平成16, 17年に市民公開講座「在宅での排泄ケアを考える」、「肌ざわりから 考える排泄ケア」、「超高齢化社会の2大問題!排尿障害と痴呆症について考 える」、「排泄する場を考えよう」を開催した。また、平成18年度に行われた ワークショップ「介護保険:排泄ケアの位置づけ」の記事が、1月9日付けの中 日新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岡村菊夫、長田浩彦、長浜克志、他
一般内科医向きの排尿障害重症度評価基準
日本泌尿器科学会雑誌 , 97 , 568-574  (2006)
原著論文2
岡村菊夫、野尻佳克、山本楯、他
診療所における下部尿路症状アンケート調査
日本老年医学会雑誌 , 43 , 498-504  (2006)
原著論文3
岡村菊夫、長浜克志、長田浩彦、他
高齢者のための排尿障害重症度評価基準
日本排尿機能学会誌 , 16 , 202-207  (2005)
原著論文4
Kimio Sugaya, Saori Nishijima, Masami Oda, et al.
Change of blood viscosity and urinary frequency by high water intake
International Journal of Urology , 14 , 470-472  (2007)
原著論文5
Kimio Sugaya, Saori Nishijima, Tomoko Owan, et al.
Effects of walking exercise on nocturia in the elderly
Biomedical Research , 28 (2) , 101-105  (2007)
原著論文6
Kikuo Okamura, Yoshikatsu Nojiri, Makoto Hirano, et al.
Lower urinary tract symptoms (LUTS) in people aged 50 or older consulting general practitioners
Geriatrics Gerontology International , 7 , 147-153  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-