新しい日米科学技術に関する研究(毒性学研究)

文献情報

文献番号
199700183A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい日米科学技術に関する研究(毒性学研究)
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 雄二(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野純(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 佐々木久美子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 埴岡伸光(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 北嶋聡(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近、野生動物の生殖機能低下に対する環境汚染物質の関与が指摘されており,その主要な作用機序として内分泌系の撹乱が考えられている.そして、この様な事がヒトに対しても起こっているのではないかという危惧が広がっている。この様な物質としては,意図的に環境中に放出される化学物質ばかりでなく,ダイオキシン類等非意図的汚染物質も含まれている.その作用機序の解明、それに基づく生物学的スクリーニング法の開発、ヒト及び環境へのリスク評価法等に関する研究が米国を初め国際的に精力的に進行中である。そこで、我が国においても,このようなダイオキシンおよび内分泌系撹乱化学物質の実態把握と科学的根拠に基づいた対応が必要である.その為に米国の研究機関におけるこれらに対するの研究状況を調査し,この課題に携わっている研究者と直接意見交換を行い、もって今後の研究の展開の基盤となす。
研究方法
1)試験管内内分泌障害性試験法に関する情報収集:イーストや培養細胞を用いた、核内受容体・受容体応答配列、及びレポーター遺伝子を用いた系に関する分子生物学的情報を収集する。
2)実験動物を用いた内分泌障害性試験系に関する情報収集:卵巣摘出動物、卵巣機能開始前の幼若動物を用いた試験法、など、高感度な実験法に関する情報の収集。
3)高次系に対する影響に関するに関する情報収集:神経系、内分泌および内分泌系といった、高次性機能に対する影響の解析に関する情報の収集。
結果と考察
米国国立毒性研究センターのDr. Sheehanのもとを訪れ、内分泌障害性化学物質の影響に関する研究についての、情報収集を行った。特に注目に値する3つの情報を得ることが出来た。1つは、rodentでのsex hormone-binding proteinであるAFP (alphafetoprotein)に対する、約20種の各種内分泌障害性化学物質の結合実験に関するもの。内分泌障害性化学物質の分布・動態に注目したこの手法に関する情報は、内分泌障害性化学物質の生物反応のみを解析する従来の手法に、新らたな視座を与え、内分泌障害性化学物質の生物影響の把握をより正確にするものとして有益なものであった。2つめは、in vivoでの内分泌障害性化学物質の生物影響を検討する上で、発生過程の子宮形成に対する影響をも考慮した実験についてのもの。従来のadult実験動物の子宮に対する影響の観察に加え、彼らのグループでは、より広い視点から、発生過程の子宮形成に対する影響を検討しており、その結果、子宮腺の形成や子宮上皮細胞の形成などがその観察のendpointとして重要であることを示唆するデータを示した。成体のみならず、発生過程をも加味した評価系を考慮することの重要性をあらためて認識した。3つめは、実際に彼らの実験として進行中の実験計画に関する情報であり、以下のような5種の内分泌障害性化学物質を用いた、3世代にわたる毒性実験を、免疫学的手法、行動学的手法をも含め、1998年から2003年までかけ、検討するというもの。その化学物質は、1) Methoxychlor, 2) Genistein, 3) Nonylphenol, 4) Vinclozolin, 5) Ethinyl Estradiolであった。このプロジェクトの科学的な目的を尋ねたところ、明確な返答はなく、早急に、また出来るだけ大規模な検索をはかる、というコメントを受け取った。内分泌障害性化学物質の生体への影響解析の緊急性をあらためて印象づけられるものであった。
結論
今回訪問したFDA、EPA、NIEHS、CIITの研究室では、それぞれ内分泌障害性化学物質に関して積極的且つ先端的な研究が行われており、日本での省際的な内分泌障害性化学物質に関する研究に国立医薬品食品衛生研究所が参加するに際して、今回の調査研究で得られた情報は有意義であった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)