侵襲の運命決定因子HMGB1を分子標的とした救命的治療法の開発

文献情報

文献番号
200615013A
報告書区分
総括
研究課題名
侵襲の運命決定因子HMGB1を分子標的とした救命的治療法の開発
課題番号
H18-トランス-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 征郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 紘一(慶應義塾大学医学部)
  • 石坂 彰敏(慶應義塾大学医学部)
  • 野口 隆之(大分大学医学部)
  • 中島 利博(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
  • 前川 剛志(山口大学医学部)
  • 安波 洋一(福岡大学医学部)
  • 松下 健二(国立長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
67,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HMGB1を分子標的としたショックの救命的治療法の開発を目的とする。HMGB1は細胞外では損傷部位の修復に働くが、全身を循環すると、ショックを惹起する。すなわち、局所性HMGB1は、障害局所の修復に働くが、循環性HMGB1はショックを引き起こす。本研究は、循環血中のHMGB1のインターベンションによるショックの救命的治療法の確立を目指す。
研究方法
1.ラットの左肺を全摘し、HMGB1の動態と健側肺への影響を検討
2.盲腸結紮切断ラットを作製、抗HMGB1抗体の効果を検証
3.頭部外傷ラットモデルとくも膜下出血患者での脳脊髄液(CSF)HMGB1の動態
4.ラットエンドトキシンモデルにおけるエンドトキシン吸着カラムの効果
5.ラットにトロンビン±HMGB1投与のモデルを作成し、両者による相乗作用についての検討。
6.マウス肝内同種同系膵島移植の拒絶反応のおけるHMGB1の作用
7.HMGB1の細胞質、細胞外遊離に関する基礎的研究:変異HMGB1発現のTgクマウスの作成
結果と考察
研究結果:左肺全摘術では健側肺で炎症が惹起され、HMGB1も発現した。また実験的重症肺感染実験敗血症モデルラットにおいては、HMGB1が循環血中に増加し、中和抗体投与により生存率の改善を認めた。そしてHMGB1吸着カラムも著しく生存率を向上させた。HMGB1は臓器障害のマーカーとしてだけでなく、それ自体が次の臓器障害を招くことが中枢神経系、移植片拒絶反応でも証明された。さらにHMGB1にトロンビンが共存すると、これらは相乗的にDICや臓器障害を惹起することを判明した。
考察:今回の一連の研究から、損傷部位あるいは移植片周囲の局所のHMGB1は損傷組織の修復に働くが、全身化すると、遠隔臓器にoccult injury の状態を引き起こすことが明らかとなった。これに second attack, 例えば細菌感染、あるいはトロンビンが加われば、他臓器障害が引き起こされることが予想された。そしてこのHMGB1は late phaseのメディエーターとして治療の分子標的となることが明らかとなった。
結論
HMGB1のダイナミズムが、細胞、臓器、個体レベル(ヒトおよびラット、マウス)で明らかになった。動物ならびにヒト臨床例での多くの研究から、血中HMGB1が多臓器不全、さらにはショックのメディエーターであり、中和抗体、吸着カラムの有効性がラットにおいて証明された。次には大型動物、そしてヒトへの展開を期すつもりである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
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