再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200615003A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究
課題番号
H16-トランス-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 武嗣(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 庭屋 和夫(国立循環器病センター)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、組織バンクが整備されたことで、提供された同種血管や心臓弁が使用されつつあり、良好な成績が報告されている。しかし、我が国では提供数が絶対的に不足している。我々は、同種あるいは異種組織から細胞成分を消失させた後に患者の細胞を組み込んだテーラーメード型組織移植を目指している。この再生型組織移植では、固定化されておらず細胞も除去されているため、移植後に自己細胞が侵入することで自己組織化される。これにより、移植後に成長する移植組織が作出し得ると考えられる。
研究方法
脱細胞化処理:ドナーとなるミニブタから下行大動脈を採取した。980MPaの超高静水圧印加処理を10分間行って細胞を破壊した。続けて、PBSをベースとする洗浄液及びエタノールで撹拌洗浄した後、組織を凍結乾燥し熱架橋処理を施し、エラスターゼで処理することによってエラスチンを分解除去した
同種移植実験:同種ミニブタに脱細胞化下行大動脈を用いた組織移植を行った。所定期間経過後、移植組織を摘出し、組織学的所見を検討した。なお、動物実験に関しては、麻酔や鎮痛剤の使用、最小使用数となるような実験計画の立案など、所属施設における規定に従い、実験動物の愛護に配慮した。
結果と考察
エラスチンを除去した大動脈組織内では、エラスチン線維が完全に除去されていた。これに伴って組織内の空隙の増加も観察され、移植後の細胞浸潤及び自己組織化を促進することが期待できた。エラスチンの分解に伴って破断強度は未処理大動脈よりも低下したが、未処理肺動脈よりは大きかった。肺動脈以上の強度を有していれば、移植用組織として用いることができると考えている。得られた再生型血管を同所性に移植したミニブタは、全例で死亡を認めなかった。移植3ヶ月後に摘出したところ、組織の拡張や瘤化の所見を認めず、石灰化も全く認めなかった。
結論
欧米では脱細胞化処理に薬液を用いた方法で、既に数グループが再生型血管や心臓弁の臨床応用を開始している。一部では、動物由来組織を用いた臨床応用も行われている。我々は、医療機器メーカーであるニプロ株式会社と事業化を前提とした共同開発を進めると共に、脱細胞化同種血管及び心臓弁の臨床応用を前提とした研究計画を、国立循環器病センター倫理委員会並びに高度先駆的医療・研究審査委員会に提出し、許可を得た。今後数年以内に、臨床応用を実施したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200615003B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究
課題番号
H16-トランス-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 武嗣(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
  • 庭屋 和夫(国立循環器病センター)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、組織バンクが整備されたことで、提供された同種血管や心臓弁が使用されつつあり、良好な成績が報告されている。しかし、我が国では提供数が絶対的に不足している。我々は、同種あるいは異種組織から細胞成分を消失させた後に患者の細胞を組み込んだテーラーメード型組織移植を目指している。この再生型組織移植では、移植後に自己細胞が侵入することで自己組織化されるため、移植後に成長する移植組織が作出し得ると考えられる。
研究方法
脱細胞化処理:ドナーとなるミニブタから心臓弁、大動脈を採取した。超高静水圧印加処理にて細胞を破壊し、PBSをベースとする洗浄液で洗浄し(1群)、さらにエタノールで洗浄した(2群)。さらに続けて、凍結乾燥した後に熱架橋処理し、エラスターゼで処理することでエラスチンを分解除去した(3群)。
同種移植実験:各組織を同種ミニブタに同所性に移植した。所定期間経過後、移植組織を摘出し、組織学的所見を検討した。なお、動物実験に関しては、麻酔や鎮痛剤の使用、最小使用数となるような実験計画の立案など、所属施設における規定に従い、実験動物の愛護に配慮した。
結果と考察
肺動脈弁:移植6ヶ月後の1群は、正常な状態及び形態を保ち、閉鎖等の機能も良好であった。弁葉の先端部分を除いた全域の組織内での平滑筋細胞や線維芽細胞の豊富な細胞浸潤を認め、表面は先端部分を含めて完全な内皮細胞の生着を認めた。石灰化は全く認めなかった。
下行大動脈:全群とも内腔面は平滑で、血栓も認めなかった。1群では、移植6ヶ月後には大部分が自己組織化されていたが、内部には石灰化を認めた。2群では、移植3ヶ月後以降、内膜付近に僅かにカルシウム沈着を認めたものの、軽微であった。また、移植12ヶ月後では、移植時の約1.5倍の大きさとなり、前後の血管と一体化していた。3群では、移植3ヶ月後までの観察であるが、他群より良好な細胞浸潤を認めた。石灰化も全く認めなかった。1群での石灰化は、リン脂質等細胞成分の残存、あるいはエラスチン線維の変性と考えられた。
結論
欧米では脱細胞化処理に薬液を用いた方法で、既に数グループが再生型血管や心臓弁の臨床応用を開始している。一部では、動物由来組織を用いた臨床応用も行われている。我々は、医療機器メーカーであるニプロ株式会社と事業化を前提とした共同開発を進めると共に、脱細胞化同種血管及び心臓弁の臨床応用を前提とした研究計画を、国立循環器病センター倫理委員会並びに高度先駆的医療・研究審査委員会に提出し、許可を得た。今後数年以内に、臨床応用を実施したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200615003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでに我々がオリジナルとして開発した超高静水圧印加を基盤とした処理方法によって、ミニブタ肺動脈弁組織および下行大動脈組織からミニブタ由来細胞を除去した。処理した組織は、力学特性を有効に維持しつつ、細胞成分や雑菌、ウイルス、内在性レトロウイルスが除去されていた。また、回転型細胞播種装置および循環培養装置を組み合わせることで、脱細胞化した組織内腔面に、血管内皮細胞を播種することができた。
臨床的観点からの成果
脱細胞化した各組織をミニブタに同所性に置換移植した。肺動脈弁では、6ヶ月後に摘出したところ、弁機能は正常で、弁尖先端部にまで至る良好な再細胞化を認め、石灰化等の異常所見は全く認めなかった。下行大動脈では、研究当初、石灰化を認めたが、処理方法を改良することで石灰化を抑制することが可能となり、12ヶ月後では移植組織の約1.5倍程度への成長も認め、周囲組織と完全に同化することを認めた。
ガイドライン等の開発
脱細胞化処理方法およびその安全性評価の国際的標準化に向けて、国内外の研究グループと情報交換を続けている。
その他行政的観点からの成果
我が国発の医療技術を開発することで、将来的な国民医療費の削減に貢献したいと考えている。
その他のインパクト
下記の報道等で紹介された。
ブタ大動脈弁の脱細胞化に成功 ヒトへの異種移植に前進.日経バイオビジネス 2004年8月号 p21.
心臓弁・血管再生 動物の組織活用.日本経済新聞 2004年11月22日 p19.
創造主義宣言 超テク国への道.日経産業新聞 2004年12月28日 p1.
超テク誕生 日本の現場. 日本経済新聞社.2005年刊 p155.
人工心臓弁 移植先の心臓と一体化. 日刊工業新聞. 2005年9月9日号.
日経ナノテクノロジー. 2005年9月11日号.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
117件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Numata S, Fujisato T, Niwaya K, et al
Immunological and histological evaluation of decellularized allograft in a pig model: Comparison with cryopreserved allograft.
J Heart Valve Dis , 13 (5) , 984-990  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-