転写因子E2Fによる癌レギュローム解析から抗がん剤の安全性予測へ向けた研究開発

文献情報

文献番号
200612014A
報告書区分
総括
研究課題名
転写因子E2Fによる癌レギュローム解析から抗がん剤の安全性予測へ向けた研究開発
課題番号
H17-トキシコ-若手-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 健一(明治大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品低分子化合物、とくに抗がん剤は薬効と毒性がしばしばオーバーラップする。さらに細胞のもつ遺伝型に薬効が左右されることが珍しくない。抗がん剤として開発される新規低分子化合物が正常細胞に対しては副作用を示さず、一方、がん細胞に対しては増殖に対し抑制的に作用するかどうか、簡便なアッセイで予測できれば未然に医薬品開発のコストを低減できるし、患者に対しても不要な侵襲を防止でき、国民の福祉に貢献可能である。
研究方法
本研究では、転写因子E2F1とE2F4のゲノムワイドなプロモーター選択性と既知抗がん剤による細胞傷害とのパラメトリックな関係を基盤データとして整備し、医薬品候補化合物の安全性を細胞レベルで簡便に予測可能な実験基盤の確立を目指す。このためE2F1とE2F4の全標的遺伝子を同定する。そして既知抗がん剤投与後に標的遺伝子プロモーターに結合するE2F1ならびにE2F4の定性定量解析を実施する。
結果と考察
5-FUをがん細胞に暴露した際には細胞死が、正常細胞に暴露した場合ではG1停止(修復可能なDNA障害)が惹起される濃度、あるいはそういった状態に細胞が至らない濃度におけるE2F結合パターンを探索・収集し、検討した7遺伝子の中から、今後有益と考えられる情報を得ることができた。今回、検討を加えた7遺伝子はいずれも細胞周期の制御、DNA複製・修復などに関与することが知られており、機能的な側面からもE2F下流遺伝子として興味深く、これまでにない抗がん剤の副作用検出系と成りうる可能性の端緒を示しえた。
結論
細胞に抗がん剤を投与し、細胞機能に影響を与えない濃度においても、影響を与える濃度と同等のE2F1あるいはE2F4と各遺伝子プロモーターとの結合性パターンの抽出が可能であった。これは我々が予想したように、プロモーター近傍に存在するE2F結合コンセンサス配列でE2F1とE2F4が競合的に作用しあうことで特定の遺伝子発現を制御する事実を示唆する。従って、抗がん剤によるDNAダメージや細胞環境の変化を鋭敏に感知したE2F1およびE2F4とクロマチンとの結合性に立脚した本研究計画はこれまでにない抗がん剤の副作用検出系と成りうる可能性が高いと言える。今回得られた検討結果を基盤として、さらに多数の遺伝子、抗がん剤について情報を蓄積する必要性が高い。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-