遺伝子治療薬の生体内投与後の毒性発現機構解析に関する研究

文献情報

文献番号
200612013A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療薬の生体内投与後の毒性発現機構解析に関する研究
課題番号
H17-トキシコ-若手-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
水口 裕之(独立行政法人 医薬基盤研究所 基盤研究部 遺伝子導入制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在臨床で汎用されているアデノウイルス (Ad) ベクターをはじめ、種々の改良型Adベクターをin vitro、in vivo に作用後の遺伝子発現情報を網羅的に解析(トランスクリプトーム解析)し、毒性発現に至る遺伝子やタンパク質を同定し、遺伝子治療の安全性の向上や実用化に向けての基礎情報を得ることを目的とする。
研究方法
マウスに Ad ベクターを投与後、血清中 IL-6 濃度および肝障害の指標として血清中 AST 濃度を測定した。また、Ad ベクターにより変動した遺伝子を解析するため、Ad ベクターを投与したマウスから肝臓と脾臓を摘出し、GeneChip 解析を行った。さらに、毒性発現に関与する生体内分子を明らかにするため、MyD88 および TLR9 欠損マウスから採取した各種細胞を用いて Ad ベクター感染実験を行った。毒性発現の軽減を目的として、糖修飾カチオン性リポソームをキャリアーとして NF-κB デコイを前投与し、その後 Ad ベクターを投与したときの自然免疫誘導能について検討した。
結果と考察
Ad ベクターにより変動する遺伝子群を網羅的に解析した結果、肝臓ではなく主に脾臓において炎症性サイトカイン・ケモカイン遺伝子の発現上昇が観察され、主要なサイトカイン産生細胞は脾臓のコンベンショナル樹状細胞であることが明らかとなった。また、MyD88 欠損あるいは TLR9 欠損マウス由来の細胞を用いて検討した結果、マクロファージでは MyD88/TLR9 非依存的に IL-6 を産生したのに対し、樹状細胞では MyD88/TLR9 依存的に IL-6 を産生した。したがって、Ad ベクターによる炎症性サイトカイン産生機構は細胞種によって異なる可能性が示唆された。さらに、肝臓や脾臓のマクロファージに親和性を有する糖修飾カチオン性リポソームを用いて NF-κB デコイを前投与した結果、Ad ベクターによる炎症性サイトカイン産生が低下しただけではなく、肝障害も有意に抑制された。したがって、NF-κB デコイを用いることにより、Adベクター投与後の自然免疫誘導や肝障害を抑制できる可能性が示唆された。
結論
1.Ad ベクター投与による炎症性サイトカイン産生は主に脾臓の樹状細胞で行われる。
2.Ad ベクターによる炎症性サイトカイン産生機構は細胞によって異なる。
3.NF-κB デコイの前投与により、Ad ベクターによる毒性発現は抑制される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-