肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立

文献情報

文献番号
200612009A
報告書区分
総括
研究課題名
肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立
課題番号
H17-トキシコ-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三高 俊広(札幌医科大学 医学部附属がん研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、肝前駆細胞である小型肝細胞を用いて肝毒性の評価解析方法を確立し、GeneChipによる遺伝子発現解析を組み合わせて薬剤の副作用や相互作用を予測する技術を開発しようとするものである。またヒト正常肝臓より小型肝細胞を分離培養する方法を確立し、不足しているヒト肝細胞の供給に道を付けたいと考えている。
研究方法
・毛細胆管へ分泌される代謝産物の同定方法の確立
成体ラット肝臓より小型肝細胞を分離・培養し、毛細胆管を形成させ実験に用いた。
・女性ホルモン異常状態(疑似妊娠状態)における薬剤の代謝酵素遺伝子誘導発現の解析
 ラット小型肝細胞の網羅的遺伝子発現をGeneChipにより解析し、成熟肝細胞、再生肝細胞、乳児期の肝細胞などと比較した。
・ヒト小型肝細胞を効率よく分離培養する方法の確立
ヒト小型肝細胞は、(A)札幌医科大学病院にて、大腸癌の肝転移などによって施行された肝切除術の摘出組織の正常と思われる部分肝組織から分離した細胞(札幌医科大学倫理委員会承認)、(B)中国RILD社より心臓死後に分離されたヒト小型肝細胞分画の細胞(札幌医科大学倫理委員会承認)、の2つの方法により得られた細胞を用いて、ヒト小型肝細胞コロニーが出現するかどうか検討した。
結果と考察
・成熟化した小型肝細胞においては、生体内の肝細胞と同様にOatps, Ntcp, Mrp2, Bsepなどのトランスポータータンパクが発現しおり、細胞を障害せずに毛細胆管中から代謝産物を回収した。
・CD44陽性細胞と培養小型肝細胞の遺伝子発現パターンは良く似ており、また再生肝細胞と成熟肝細胞では、増殖関連遺伝子以外の遺伝子発現パターンは似ていた。小型肝細胞は成熟肝細胞とは明らかに別の細胞群であることが証明された。
・凍結保存をした小型肝細胞においてCYP2Bの活性が誘導されない原因がCARの発現低下によることがわかった。血清添加で回復すること、また甲状腺ホルモンを培養液に加えることでCYP2B1遺伝子の発現を回復させられることがわかった。
・ヒト小型肝細胞は、ヒアルロン酸をコートした培養皿と無血清培養液を併用すると分離培養可能なことがわかった。
結論
ヒト小型肝細胞の分離培養が可能になったので、ラット小型肝細胞で確かめられた方法を準用して、
In Vitroで薬剤の代謝・排泄機序を解析できる可能性がでてきた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
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