Cleavase fragment length polymorphism (CFLP)法を用いた遺伝子変異のマススクリーニング法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199700179A
報告書区分
総括
研究課題名
Cleavase fragment length polymorphism (CFLP)法を用いた遺伝子変異のマススクリーニング法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
前沢 千早(国立療養所盛岡病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物工学の急速な進歩により,これまで原因不明の難病とされてきた多くの疾病に於いて,その病態形成に係わる遺伝子異常の存在が明らかとなってきている。このような状況に於いて,より正確かつ簡便な遺伝子診断法の確立は,治療方針の決定にとってきわめて重要な事である。本研究課題では,cleavase length fragment polymorphism (CFLP)解析を用いた遺伝子変異の簡便かつ正確な診断法を開発する。
研究方法
複数の癌抑制遺伝子(p53, APC, PTEN, PTCH)の全翻訳領域を,蛍光標識されたプライマーにより1000~1500 bpの長さでRT-PCRにより増幅する。PCR産物を一本鎖DNAのself hybridization pointで特異的に切断する,耐熱性の酵素にて処理する。auto sequencerにて電気泳動し,Gene Scan (PE-ABI社製)を用いてfragmentのpattern解析を行う(CFLP解析)。同時にsequencingにて遺伝子産物の塩基配列を決定し,false-positive,-negativeの確認を行う。従来のPCR-SSCP解析の結果と対比し,PCR-CFLP解析の優劣を検討する。
結果と考察
(1)CFLP解析による遺伝子変異の検出。食道癌50例,胃癌30例,大腸癌10例でp53, APC, PTEN, PTCHの変異を解析した。それぞれの遺伝子変異はp53: 食道癌28/50(56%);胃癌19/30(63%);大腸癌9/10(90%),APC : 食道癌0/50(0%);胃癌0/30(0%);大腸癌8/10(80%), PTEN: 食道癌0/50(0%);胃癌0/30(0%);大腸癌0/10(0%), PTCH: 食道癌2/50(4%);胃癌0/30(0%);大腸癌0/10(0%)であった。PTENの解析では,homologyのきわめて高いPTEN2の同定にも役立った。(2)direct sequencingならびPCR-SSCP解析のと対比。全例のsequencingとCFLPの解析結果では大腸癌の2例で,APC遺伝子にfalse-negativeがあったのみで,CFLP解析のsensitivityは97%ならびにsepecificityは100%であった。PCR-SSCPはfalse-negativeが13例,false-positiveが1例ありCFLP法に比較して感受性ならびに特異度も劣る結果となった。CFLPの解析結果はpoint mutationを含めた遺伝子の構造異常を解析する上で,従来法に比較して,sensitivityならびにspecificityとも高く,mass screening法として優れたものであると思われた。また,一回の解析で解析可能な領域が広く,cost benefitの面でも優れている。false-negativeとなった例ではPCR産物が1500 bpと比較的長い解析領域に存在したpoint mutationであり,一本鎖DNAの高次構造に影響を与えない変異であった可能性が考えられた。このようなDNAの高次構造に影響を与えない変異の検出法には問題が残った。
結論
CFLP法よる遺伝子異常の解析は,従来法に比較して優れた遺伝子変異のmass screeningとなる可能性が示唆された。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)