心不全に対しβ遮断薬療法を安全かつ有効に導入するための統合的ゲノム薬理学研究

文献情報

文献番号
200610052A
報告書区分
総括
研究課題名
心不全に対しβ遮断薬療法を安全かつ有効に導入するための統合的ゲノム薬理学研究
課題番号
H18-ファーマコ-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩尾 洋(大阪市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 洋(北海道大学大学院医学研究科)
  • 葭山 稔(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 寺崎 文生(大阪医科大学医学部)
  • 藤尾 慈(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ファーマコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において、慢性心不全患者が増加し、医学的にも、社会的にも問題になっている。近年、β遮断薬が、心不全患者の予後、心機能を改善することが大規模臨床試験により明らかにされた。しかしながら、β遮断薬が有効性を示す患者は、約60?70%と言われており、無効な例では、β遮断薬の薬理作用(陰性変力作用)のために心不全が悪化する危険がある。本研究の目的は、ゲノム情報に基きβ遮断薬療法への反応性を予測すること、そのために必要な遺伝子多型判定機器を開発することにある。
研究方法
ゲノム疫学的アプローチ
1)β遮断薬の薬効を決定する遺伝子多型候補として、心不全との関係が文献的に報告された遺伝子と、心不全モデル動物で発現が変動した遺伝子の中から、日本人の多型頻度が10%以上である遺伝子多型を選出した。
2) 心不全の拡張型心筋症患者で、β遮断薬治療への反応性と遺伝子多型との相関に関する遺伝子多型の判定を行った。
分子薬理学的アプローチ
雄性カニクイザルにエピネフリンを投与しカテコラミン心不全モデルを作製し、β遮断薬投与後の効果を解析した。
結果と考察
1)遺伝子多型の選出
心不全に関与すると文献的に報告されている73遺伝子に、心不全モデル動物からの関連19遺伝子を加え、合計92遺伝子合計213遺伝子多型を選出した。
2)retrospective pharmacogenomics study
β遮断薬治療をうけている拡張型心筋症患者での検討により、ノルエピネフリントランスポーター(NET)、CD53、トロンボスポンジン(THBS)1、NFAT5遺伝子の遺伝子多型が、β遮断薬の心機能の改善と相関することが明らかになった。
3)心不全のβ遮断薬治療の薬理機序を解明するためのモデル動物として今回、カニクイザルを用いた心不全モデルの作製に成功した。
今回行なったゲノム疫学的研究の結果をセカンドポピュレーションで検証すること、また、カニクイザル心不全モデルで候補遺伝子の機能解析をすることが重要である。
結論
平成18年度、ゲノム疫学的アプローチの結果として、ノルエピネフリントランスポーター(NET)に加え、CD53、トロンボスポンジン(THBS)1、NFAT5の遺伝子多型が、β遮断薬の薬効と相関を示すことが明らかになった。また、分子薬理学的アプローチの結果として、ヒト心不全に対するβ遮断薬療法をmimicするカニクイザルカテコールアミン心不全モデルを確立した。

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