核医学的手法による血管内不安定プラーク治療薬開発支援システムの構築

文献情報

文献番号
200609046A
報告書区分
総括
研究課題名
核医学的手法による血管内不安定プラーク治療薬開発支援システムの構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-ナノ-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 美香子(浜松医科大学光量子医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 間賀田 泰寛(浜松医科大学光量子医学研究センター)
  • 寺本 昇(国立循環器病センター研究所 放射線医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近、動脈硬化を引き起こす症候群として、『メタボリックシンドローム』が注目を集めている。動脈硬化病巣に生成する不安定プラークは、容易に破綻し心筋梗塞・脳梗塞発症の原因となるため、早期に検出し治療を行うことが重要である。PETやSPECT等の核医学画像法によれば、プラークに特徴的な機能変化を捉え、プラークの性質を診断できると考えられる。本研究は、プラーク構成成分の機能的改善を伴った不安定プラークの治療効果を判定するシステムを、核医学の手法に基づいて構築し、効率的・効果的な治療薬開発支援を目指すものである。
本年度は、プラークの不安定性には炎症反応が大きく関与していることから、マクロファージをターゲットとし、PET用イメージング剤 [18F]FDGを用いて治療効果の追跡が可能であるか検討した。
研究方法
動脈硬化治療薬プロブコールを含む餌を、動脈硬化モデル動物であるWHHLウサギに与え検討を行った。なお、コントロール群には通常餌を与えた。[18F]FDGを耳静脈よりボーラス投与し、[18F]FDG投与180分後から15分間PET撮像を行った。また、血管の位置を同定するために造影CTの撮像を行った。両群とも、薬剤投与前、薬剤投与1, 3, 6ヶ月後にPET, CT撮像をした。また、6ヶ月後のイメージング実験後、大動脈を摘出し薄切切片を作成して染色後、内膜および血管断面積、マクロファージの数を計測した。
結果と考察
薬剤投与前ではすべての個体において血管が描出された。コントロール群では[18F]FDG集積量は時間の経過とともに徐々に増加し、6ヶ月後まで血管が描出されていたが、プロブコール投与群では血管への放射能集積は3ヶ月後から減少し、6ヶ月後には血管は描出されなかった。また、プロブコール投与6ヶ月後では、マクロファージの浸潤量はコントロール群に比べ有意に減少していた。一方、内膜の肥厚度には両群間に差は認められなかった。よって、[18F]FDG集積量の減少はマクロファージ浸潤量の減少、つまり、プラークの安定化を反映したものであると考えられる。また、血中コレステロール濃度には変化は認められなかった。
結論
本検討により、血中脂質レベルを評価することでは捉えられなかったプラーク安定化の過程を、[18F]FDG-PETを用いて追跡することに成功し、[18F]FDG-PETにより薬の治療効果を評価できることが示された。このことは、治療方針の決定や新しい治療薬の開発に大きく貢献すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-