蛋白質セラピー法とバイオナノカプセルによる持続性脳腫瘍治療薬の開発

文献情報

文献番号
200609041A
報告書区分
総括
研究課題名
蛋白質セラピー法とバイオナノカプセルによる持続性脳腫瘍治療薬の開発
課題番号
H18-ナノ-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松井 秀樹(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 富澤 一仁(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 二木 史朗(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 妹尾 昌治(岡山大学 大学院自然科学研究科)
  • 伊達 勲(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 上田 政和(株式会社ビークル)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、我々が開発した新しいドラッグデリバリー(DDS)手段である「蛋白質セラピー法」を応用し、抗癌剤や癌抑制蛋白質を直接、あるいはバイオナノカプセル(BNC)に封入した形で、脳腫瘍細胞に導入する治療法を開発することを目的とする。
 
研究方法
 抗EGFR抗体を付加したBNCを作製し、その脳腫瘍特異性、導入効率について脳腫瘍細胞を用いて検討する。p53ペプチドをD体で作製し、その抗腫瘍効果についてコントロールペプチドと比較検討した。
結果と考察
 抗EGFR抗体を付加することにより脳腫瘍に特異的に標的化するBNCの開発に成功した。D-isomerpで合成したp53C末端ペプチドにポリアルギニンを付加することにより、長期に抗腫瘍効果が持続することを確認した。
 今年度研究計画していたことを、予定どおり実施することができた。当初、抗体をBNCに付加する技術開発が困難であると考えられていたが、BNCのPreS1領域置換が予想以上にトラブル無く、開発できたことが大きかった。来年度以降は、本技術の精鋭化を行い、BNCにボロン製剤を封入し、脳腫瘍細胞に特異的に導入可能な中性子補足剤の開発研究を実施予定である。
結論
1. 抗EGF受容体抗体付加したBNCの作製・・・BNCの表面にprotein Aを発現したBNCの作製を行った。さらに、脳腫瘍に高い発現が認められるバリアントⅢ型EGF受容体を認識する抗体を作製することに成功した。この抗体を付加したBNCの開発を行い、In vitroでバリアントⅢ型受容体を特異的に認識することを確認した。
2. 細胞培養での腫瘍特異的導入の実証・・・1で開発した抗EGF受容体抗体を結合したBNCをバリアントⅢ型受容体発現脳腫瘍の培養液中に添加すると、BNCが効率よく脳腫瘍細胞内に導入されることが確認できた。一方、正常グリア細胞には、ほとんど導入されなかった。本研究で開発したEGFR抗体付加型BNCが脳腫瘍に特異的に導入されることが確認できた。
3. 光学異性体型p53 C末端ペプチドの開発・・・抗腫瘍効果を有するp53のC末端ペプチドにポリアルギニンを付加したペプチドをD体で作製することに成功した。さらに、このペプチドを脳腫瘍患者から樹立したグリオーマ細胞の培養液に添加すると効率よく腫瘍内導入できた。また、L体で作製した同ペプチドと抗腫瘍効果について比較検討したところ、D体で作製したペプチドは1回投与で抗腫瘍効果を認めたが、L体のペプチドは抗腫瘍効果を発揮するためには連日投与が必要であった。以上のように、長期間抗腫瘍効果を持続できる抗腫瘍ペプチドの開発に成功した。

公開日・更新日

公開日
2007-07-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-