がん診断・治療両用高分子ミセルターゲティングシステム

文献情報

文献番号
200609040A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診断・治療両用高分子ミセルターゲティングシステム
課題番号
H18-ナノ-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
横山 昌幸(財団法人神奈川科学技術アカデミー)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所)
  • 濱口 哲弥(国立がんセンター中央病院)
  • 川上 茂(京都大学大学院薬学)
  • 川口 隆憲(福島県立医科大学 病理学第2講座)
  • 堀 勝義(東北大学 加齢医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高分子ミセルドラッグキャリヤーシステムは、合成高分子が数百分子会合しその内核に疎水性薬物を保持してターゲティングができる。特に10?100nmの直径の極めて小さなナノサイズであることで、EPR効果(固形がん組織血管の透過性が亢進している性質)を利用して固形がんにターゲティングできることが大きな特長である。      
 本研究の目的は、薬物ターゲティングによりがん化学療法の 有効性を飛躍的に高めるとともに、微小がんを検出できるMRIシステム開発にある。
研究方法
(1)ブロックコポリマーの合成
 高分子ミセルを形成するブロックコポリマーとしてポリエチレングリコール-ポリ(アスパラギン酸)にエステル形成にて各種疎水基をアスパラギン酸残基に導入したものを合成した。
(2)薬物封入挙動と活性解析
 カンプトテシンやレチノイン酸の薬物とブロックコポリマーをCHCl3に溶かし、溶媒を蒸発させてから、蒸留水を入れて超音波照射をして高分子ミセルを得た。
 抗がん活性はマウス大腸癌細胞CT26を移植したモデルを用い、癌体積の変化と生存日数を測定した。
(3)MRI造影剤用高分子の合成
MRI造影能を有するGdイオンを結合したブロックコポリマーを合成した。ポリエチレングリコール-ポリアスパラギン酸ブロックコポリマーのアスパラギン酸残基に1級アミノ基をエチレン鎖を介して導入し、続いてキレート基であるDTPA基を導入した。最後に塩化ガドリニウムを反応させ造影機能を有するポリマーを得た。
結果と考察
本年度の具体的成果は以下の通りである。
(1)高分子ミセルを形成する高分子合成法が確立した。
(2)カンプトテシンとレチノイン酸封入ミセルでがんへのターゲティングが実証された。
(3)葉酸修飾によるアクティブターゲティング型高分子ミセルが作製された
(4)分化誘導剤4-HPR封入ミセルを作製した。
(5)MRI造影剤で高分子組成とT1緩和能の関係を明らかにした。
(6)高分子ミセルの大量投与によっても、正常組織に病理的変化が認められないことが確認された。
(7)ウインドウチャンバー法によるがんへのミセル集積挙動の解析法の確立
 薬物やMRI造影剤成分を封入した高分子ミセルの作製が滞りなく進展した。また、キャリヤーの毒性評価やがん組織浸透性観察の手法が確立した。
結論
以上の結果は、3年計画の1年目としては順調な進行であるとともに、次年度以降の研究班内で連携して行う共同研究を強力に推進する基盤が確立したことを意味する。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
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