難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発

文献情報

文献番号
200609039A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性循環器疾患を克服する超小型ナノ神経センサー兼刺激治療装置の開発
課題番号
H18-ナノ-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉町 勝(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性心不全では、自律神経異常(交感神経増加・迷走神経低下)が病態を増悪させ、この神経治療が生存率を格段に改善することが実証されている。しかし現存の薬物治療ではこれを治療困難であり、一方、電気的神経医療は連続モニター時間が2-3時間に限定され、また神経束内神経線維を選択刺激できないため内臓機能を個別に治療困難な欠点を有する。そこで本研究は、自律神経を神経線維高選択的にモニターし且つ刺激できる神経装置の開発を目的とする。
研究方法
ヒト心不全の克服を目指して、MEMS(micro electronics machine system)技術を駆使して、神経よりも細いナノ超微小針電極(~100本)を絶縁性高分子と集積化した超小型神経センサー兼刺激装置を開発する。簡単な外科手術によって、上下センサチップで神経をソフトに挟んで装着し、適当な電極の組合せから意図する神経線維の活動を長期安定に高選択的にモニターでき、且つ高選択刺激できる。
結果と考察
平成18年度(初年度)は、神経装置を試作した。神経膜をソフトに貫き且つ十分な機械的強度を持つ微小針電極の針材を、有限要素法応力シミュレーション等によって検討し、機械的強度に優れるタングステン(W)に決定した。これに安全生体材料(パリレン)を薄膜コート(2μm)し、電解エッチングで先端ナノ先鋭化処理した。ウサギ腓骨・脛骨神経への刺入テストによって、神経膜貫通性や強度の点から針シャフト径を50μmと決定した。このW針を電極間隔100μmに2列12ピン集積化し、世界最小レベルの電極アレイの神経装置を開発し、急性動物実験においてウサギ腓骨・脛骨神経に植え込み、適当な電極の組合せから、循環調節(血管収縮)性交感神経活動を選択的にモニター(安静時活動およびストレス負荷による増加反応等)することに成功した。また、頚部迷走神経に植込み、心臓枝活動を選択モニターすることにも成功した。ヒト自律神経モニターに用いる神経は直径0.5-1.5 cmであり、この仕様で50―150本の針電極を1本の神経に挿入できるため、実用に十分な空間分解能(神経線維選択能)であると考えられた。
結論
ヒト自律神経を神経線維選択的にモニターし刺激できる装置のプロトタイプを開発できたと思われる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-