生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療

文献情報

文献番号
200609037A
報告書区分
総括
研究課題名
生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療
課題番号
H18-ナノ-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 寛(宮城県立がんセンター・乳腺外科)
  • 武田 元博(東北大学大学院工学研究科・医工学、乳腺外科)
  • 石田直理雄(産業技術総合研究所)
  • 川添 良幸(東北大学金属材料研究所・計算材料学)
  • 仲田 栄子(東北大学医学部保健衛生学科・診療放射線技術科学)
  • 水関 博志(東北大学金属材料研究所・計算材料学)
  • 小林 正樹(東北工業大学電子工学科・微弱光計測)
  • 権田 幸祐(東北大学先進医工学機構・ナノバイオロジー)
  • 名嘉 節(東北大学多元物質科学研究所・磁気工学)
  • 亀井 尚(東北大学病院・食道外科学)
  • 甘利 正和(東北大学病院・乳腺外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんは1981年以来、わが国の死亡原因の第1位を占める。我々はナノテクノロジーにより開発した1分子および深部蛍光計測技術を発展させ、がん治療における薬物搬送システム(DDS)及び生体のメカニズムを解明し、新たながんの診断・治療法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
1.高感度計測のための蛍光・X線・MRIナノマーカーの開発に向けて、ナノサイズヨウ化銀ビーズの体内分布をX線CT、TEMを用いた観察を行った。シリカ凝集法であるStober 法により、MRI造影剤としてガドリニウムナノ粒子を作製した。
2. 細胞内タンパクの動態観察のため、量子ドットでラベルした抗HER2抗体を乳がん細胞移植マウスに静注し、in vivo単粒子イメージングを行った。また、量子ドットの明滅、非特異的結合の抑制を目的に、それぞれグルタチオン、アルブミンを投与した。
3.生体深部に存在する蛍光マーカー検出を目的に、超音波変調蛍光検出法により、水槽にイントラリピッドと蛍光標的を入れた模擬生体を用い、その深部にある蛍光色素の検出実験を行った。
結果と考察
1.ヨウ化銀ビーズのラットにおけるLD50を決定することができた。また透過型電子顕微鏡で体内各臓器の分布を明らかにした。Si-Gdナノ粒子を作成し、MRIで水に比べて高信号を発することを確認できた。今後、長期毒性を含めた安全性評価を進める必要がある。
2.抗HER2抗体-量子ドット複合体の乳がん細胞移植マウスにおける体内動態を1分子レベルで追跡することに成功した。また、量子ドットの明滅や非特異的結合をそれぞれグルタチオン、多量のアルブミンを投与することで抑制できた。この手法により、生体内および細胞内における薬物の動態や作用、さらに生体のシグナル伝達の直接観察が可能となった。
3.超音波による音響学的効果を利用した蛍光計測により、従来法に比べて大幅に深部に存在する蛍光色素の検出に成功した。
結論
1分子蛍光計測法は、生体内および細胞内における薬物の動態や作用、さらに生体のシグナル伝達を直接観察し得ることから、生体の様々な分子機構やメカニズムの解明に大きく寄与できるものと考えられる。また、超音波変調蛍光検出法は生体深部に存在する腫瘍を検出する上で不可欠な方法と言える。以上、本年度は超高感度蛍光計測による1分子追跡や、深部蛍光色素の検出に成功するなど、ほぼ計画通りに研究を遂行することができた。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
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