ゲノム情報を活用した薬物トランスポータ発現量予測システムの構築とテーラーメイド薬物療法への応用

文献情報

文献番号
200610036A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を活用した薬物トランスポータ発現量予測システムの構築とテーラーメイド薬物療法への応用
課題番号
H17-ファーマコ-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
乾 賢一(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 義生(財団法人田附興風会医学研究所 北野病院)
  • 小川 修(京都大学医学部附属病院 器官外科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ファーマコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
36,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、薬物トランスポータ発現量の個体差が、臨床効果の変動因子として重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。しかし、種々薬物トランスポータの発現制御機構並びに発現量の個体差を規定する因子については不明の点が多い。そこで、本研究課題では、ゲノム情報を活用して、薬物トランスポータの発現量を予測できる新システムを構築し、テーラーメイド薬物療法へ応用することを目的とする。
研究方法
腎臓や肝臓に発現する薬物トランスポータの発現解析を行った。また、同組織からゲノムDNAを抽出し、各臓器における主要薬物トランスポータのrSNP解析を行った。さらに、in vitroの系において薬物トランスポータの転写制御機構について解析した。さらに長年分子実体の不明であった腎刷子縁膜側に発現するH+/有機カチオンアンチポータ(MATE1及びMATE2-K)のcDNAを単離し、個別化薬物療法への応用のための基礎情報を収集した。なお、本研究計画は、京都大学大学院医学研究科・医学部医の倫理委員会の審査を受け、研究科長より承認を得ている。
結果と考察
昨年度解析が不十分であった肝薬物トランスポータ(22種類)の発現量プロファイルを調べた。その結果、OCT1、OAT2が高発現しており、OATP1B1、MATE1もそれらに次ぐ高い発現を示した。腎臓(OCT2、OAT1、OAT3、MATE1)並びに肝臓(OCT1)に主に発現する括弧内の薬物トランスポータのプロモーター解析を行い、それぞれの基礎発現を規定しているトランス因子並びにシスエレメントの同定に成功した。また、小腸ペプチドトランスポータ(PEPT1)の絶食による発現誘導には、核内受容体PPAR alphaが、中心的な役割を果たしていることを実証した。上述した薬物トランスポータのrSNPを探索したところ、MATE1のSp1結合部位に存在する有望なrSNPを同定した。ヒト(h)MATE1及びMATE2-Kの分子同定に成功した。いずれのトランスポータも主に腎臓に発現し、尿細管上皮細胞の刷子縁膜に局在していた。輸送解析の結果、MATEは逆向きのH+勾配を駆動力として種々のカチオン性薬物を輸送することが判明した。またhMATE1やMATE2-Kは、白金系抗がん剤であるオキサリプラチンを輸送したが、シスプラチンは輸送せず、MATEsによる排泄の有無が白金系抗がん剤の腎毒性発現機序に一部に関与していることが示唆された。
結論
これらの研究成果は、ゲノム情報を利用した薬物トランスポータ発現量予測システムの構築のための、有用な基礎的知見になりうると考えられる。

公開日・更新日

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