核酸をコアとするナノ微粒子による薬物・免疫治療システムの開発

文献情報

文献番号
200609029A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸をコアとするナノ微粒子による薬物・免疫治療システムの開発
課題番号
H17-ナノ-若手-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
西川 元也(京都大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 プラスミドDNA(pDNA)またはナノサイズのデンドリマー様DNA構造体を用いることで抗癌剤を癌組織へターゲティング可能なナノ粒子を構築し、癌への薬物ターゲティングが可能な新規ナノ粒子型ドラッグデリバリーシステムを開発する。
研究方法
 それぞれ半分ずつ相補的な3種類の30塩基のオリゴヌクレオチド(ODN)を混合することでY型ODN(Y-ODN)を調製した。このときY-ODNの1箇所あるいは3箇所を強力なCpGモチーフに置換したY-ODNも新たに設計した。マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞に添加し、TNFおよびIL-6、IL-12濃度を測定した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動により各ODNの血清中安定性を評価した。細胞取り込みにはFITC標識ODNを用いた。各ODN処理による癌細胞増殖抑制効果はメラノーマ細胞増殖を指標に判定した。pDNAをドキソルビシン(DXR)と混合することでpDNA-DXR結合体を調製した。肝転移モデルマウスに結合体を投与し、肝転移抑制効果を評価した。
結果と考察
 配列中に強力なCpGモチーフを含まないODNの場合にもY-ODNの添加により有意に高いサイトカイン産生が認められた。Y型化による安定性の増大は認められなかったが、細胞への取り込みが有意に増大した。ODNに強力なCpGモチーフを挿入することで産生されるサイトカインは顕著に増大し、CpGモチーフを3個挿入したY-3CpG ODNではモチーフが1個のみのものよりも有意に高いサイトカイン産生ならびに癌細胞増殖抑制効果を示した。CpGモチーフを挿入したY-ODNにより非常に高いレベルのサイトカイン産生が得られたことから、こうしたユニークな構造を有するDNA構造体により有効な免疫治療が実現できる可能性が示された。今後、デンドリマー様DNA構造体の設計・開発を進めていく予定である。一方、DXR結合体での評価においては、DXRをpDNAに結合することで高い癌細胞増殖抑制効果が得られた。担癌マウスにおいてもDNA投与によるサイトカイン産生が認められ、pDNA-DXR結合体の投与で高い肝転移抑制効果が得られた。
結論
 CpGモチーフを含むDNAを用いることでTh-1型サイトカインを誘導可能であり、ODNのY型化により免疫活性化能の増大が得られた。また、DXRをDNAに結合することで高い抗腫瘍効果を得た。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-