ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発

文献情報

文献番号
200609026A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発
課題番号
H17-ナノ-若手-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木村 剛(国立大学法人東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古薗 勉(国立循環器病センター研究所 生体工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノメディシン研究領域における重要課題の一つである遺伝子送達システムの開発においては、低い細胞傷害性、高い遺伝子導入効率を兼ね備える遺伝子ベクターが望まれている。本研究事業では、効率的遺伝子導入のためのpH応答性ナノ無機粒子の創出と超高圧技術を用いたナノ無機粒子を含有する非電荷の水素結合性高分子と遺伝子との複合体である「ナノ無機粒子/水素結合性高分子/遺伝子複合体」の創製により、低毒性、高遺伝子発現効率なナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの開発を目的としている。
研究方法
異なる酸溶解性を示すナノサイズのpH応答性ナノ無機粒子の創出について、湿式法により種々の組成の無機塩を調製し、それらのサイズ・溶解性等の物性を詳細に検討した。また、超高圧法にて得られる水素結合性高分子/遺伝子複合体のサイズ制御と超高圧処理による遺伝子の構造・機能について検討した。さらに、pH応答性ナノ無機粒子を含有するナノ無機粒子/高分子/遺伝子複合体を調製し、培養細胞への遺伝子送達を行い、細胞傷害性、遺伝子導入について検討した。
結果と考察
湿式法によるナノ無機粒子の調製においては、リン酸・炭酸混合液の混合比を制御することで、目的とするpH=5.5付近での溶解を示すpH応答性ナノ無機粒子が得られた。超高圧法にて得られる水素結合性高分子/遺伝子複合体のサイズ制御については、二種の水素結合性高分子の混合溶液への超高圧印加によりサイズ制御が可能となった。また、超高圧印加によるDNAの構造変化が示されたものの、遺伝子導入において重要である被転写・翻訳活性は向上された。さらに、pH応答性ナノ無機粒子を含有するpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体が超高圧法により得られた。その複合体を用いた細胞へのin vitro遺伝子導入では、細胞傷害性は示されず、また、昨年度のナノHApに比して効率的な細胞内取り込みが示された。しかしながら、その遺伝子発現効率は十分ではなく、今後、効率の向上を主眼にナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの最適化に関する検討を要すると考えられる。
結論
超高圧法によるナノ無機・有機ハイブリッド型遺伝子ベクターの創出について検討した。超高圧法により水素結合を介したpH応答性ナノ無機粒子/水素結合性高分子/DNA複合体が得られ、細胞内送達が達成された。低毒性、高遺伝子導入効率な遺伝子ベクターとしての可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-