文献情報
文献番号
200609020A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの超早期診断・治療のための高感度分子イメージングプローブの開発
課題番号
H17-ナノ-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐治 英郎(京都大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 久下 裕司(京都大学 薬学研究科)
- 平岡 真寛(京都大学 医学研究科)
- 近藤 科江(京都大学 医学研究科)
- 福山 秀直(京都大学 医学研究科)
- 中本 裕士(京都大学 医学研究科)
- 村山 秀雄(独立行政法人 放射線医学総合研究所 イメージング物理研究チーム)
- 高野 純(株式会社 島津製作所 分析計測事業部ライフサイエンスビジネスユニット)
- 清水 公治(株式会社 島津製作所 医用機器事業部技術部)
- 北村 圭司(株式会社 島津製作所 医用機器事業部技術部)
- 小田 一郎(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
- 天野 昌治(株式会社 島津製作所 医用機器事業部技術部)
- 渡部 勝憲(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
- 小関 英一(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
- 河野 理(株式会社 島津製作所 医用機器事業部技術部)
- 熊澤 良彦(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
- 大井 淳一(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
- 戸波 寛道(株式会社 島津製作所 基盤技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
27,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、がんの発生、転移の超早期から腫瘍細胞特異的に発生あるいは存在する分子をイメージングの標的とする病態生理学的観点と、標的に出来るだけ多くの放射能を集積させる製剤学的観点の両面を統合したアプローチにより、微小がんを超高感度で検出しうる分子イメージングプローブの開発を行い、がんの超早期診断・治療に資することである。
これを達成するため、病態生理学的観点から、がんの発生、転移の超早期から形成される低酸素環境に密接に関連するHypoxia-inducible factor-1 α(HIF-1α)を選択し、製剤学的観点から、プレターゲティング法による標的指向性の向上と、デンドリマーによる高感度化を試みる。
これを達成するため、病態生理学的観点から、がんの発生、転移の超早期から形成される低酸素環境に密接に関連するHypoxia-inducible factor-1 α(HIF-1α)を選択し、製剤学的観点から、プレターゲティング法による標的指向性の向上と、デンドリマーによる高感度化を試みる。
研究方法
まず、昨年度開発に成功したHIF-1αの酸素依存的分解に関連する融合タンパク質プローブPCOSの細胞膜透過性を、既存の膜透過配列であるHIV Tatペプチドと比較した。次に、PCOSおよびそれに結合する放射性ビオチン誘導体[I-125]IBBの担がんマウス体内動態、腫瘍移行性とインビボでのプレターゲティング法の有効性を評価した。他方、高感度プローブの開発ではビオチン化デンドリマーの体内動態を検討した。
結果と考察
FACSを用いて評価したところ、PCOSの細胞膜透過性はTatペプチドよりも2倍以上高く、有用であることが示された。インビボの検討では、[I-125]IBBは腫瘍に集積しなかったが、PCOSは投与24時間後で1.6 %ID/gと腫瘍集積性を示し、S/N比の指標となる対血液比は5.1であった。PCOSを投与した後に[I-125]IBBを投与するプレターゲティング法を行った場合は、上記と同等の腫瘍集積および対血液比を投与6時間後で達成できた。さらに投与24時間後における対血液比は13と2倍以上に拡大した。また、デンドリマー投与3時間後の血中放射能は0.1 %ID/g以下であり、クリアランスは速やかであった。
結論
PCOSがインビボにおいても腫瘍内で安定に存在すること、プレターゲティング法による撮像時間の短縮およびS/N比の向上が可能であること、デンドリマーの血液クリアランスが速やかであることを明らかとした。これらの成果から、PCOSのプレターゲティングと標識ビオチン誘導体を利用することで短時間での腫瘍低酸素領域の高感度イメージングの可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2007-04-12
更新日
-