腸粘膜M細胞を標的としたドラッグデリバリー・システムの開発

文献情報

文献番号
200609018A
報告書区分
総括
研究課題名
腸粘膜M細胞を標的としたドラッグデリバリー・システムの開発
課題番号
H17-ナノ-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 勉(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 宏(東京大学医科学研究所)
  • 竹田 潔(九州大学生体防御医学研究所)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所)
  • 若月 芳雄(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では臓器移植によるGraft versus host disease (GVHD)が増加している。また炎症性腸疾患(IBD)の増加も著しい。これらの治療薬のステロイドや免疫抑制薬は全身投与では様々な副作用が生じる。したがって腸粘膜特異的なDDSの開発が必要である。腸粘膜M細胞は細菌など抗原を消化せずに粘膜に取り込み、粘膜リンパ装置の抗原提示細胞に送り込む細胞である。私達はM細胞が一定の大きさの粒子を取込むことに着目し、ポリ乳酸マイクロスフェア(PL-MS)に薬剤を包埋して、腸粘膜に対するDDSの開発をおこなった。
研究方法
(1)PVAの重合度、PLGAの溶解濃度を変化させ、PL-MSサイズに及ぼす影響を検討した。また安定したPL-MSの作製を試みた。(2)PL-MSを臨床応用するため、large scaleでPL-MSを効率的、画一的に安定して得られる方法を検討した。(3)ステロイド含有PL-MSの効果を高めるため、IL10発現カチオン化ゲラチン、Bifidobacterium lognam菌成分を同時に包埋し腸炎モデルに投与し、効果をステロイドPL-MS単独と比較した。(4)腸管M細胞の性状、分布、役割を検討するために、M細胞特異的UEA-1レクチンによるM細胞染色をおこない、FACS解析をおこなった。またコレラ毒素にてM細胞を増加させ、マイクロアレイでM細胞特異的遺伝子の同定をおこなった。(5)潰瘍性大腸炎患者にデキサメサゾンPL-MSを投与し、その効果を検討した。
結果と考察
(1)安定した大きさの粒子のPL-MSの産生が可能となった。そのサイズが3.5μの場合が最も粘膜に吸収されやすく、5μ以上になると腸管への吸収は低下するが、粘膜に長くとどまる事が判明した。(2)超音波照射時間240秒、ホモジナイザー処理時間90秒の条件で、3−5μのPL-MSを薬剤部においてGMPにのっとり、large scaleで作製が可能となった。(3)IL10プラスミド、Bifidobacterium lognamの同時投与により、ステロイドPL-MSのみより、マウス実験腸炎に対してより強い治療効果が示された。(4)M細胞は遠位小腸粘膜にも多数存在した。またM細胞特異的な遺伝子として、PGRP-S, Sgne-1などが同定された。(5)潰瘍性大腸炎患者4名にデキサメサゾン含有PL-MSを投与し、全例に優れた効果が確認された。
結論
デキサメサゾン含有PL-MSは難治性の潰瘍性大腸炎患者に対して優れた効果を示し、さらなる臨床応用が期待された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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