標的ペプチド付加型感温性ナノミセル及び高周波焦点照射による局所DDSの開発

文献情報

文献番号
200609006A
報告書区分
総括
研究課題名
標的ペプチド付加型感温性ナノミセル及び高周波焦点照射による局所DDSの開発
課題番号
H16-ナノ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川正勝(名糖産業 名古屋研究所)
  • 河野健司(大阪府立大学 工学部)
  • 湯尾明(国立国際医療センター 血液疾患研究部)
  • 畠清彦(癌研究会 付属病院)
  • 山下克美(金沢大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
32,513,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 理想的な化学療法を実現するため、標的病巣をMRIを用いて的確に検出し、選択的に薬物を送達する技術の確立を目的とする。即ち、標的ペプチドを結合させた磁性体ナノ粒子等を用いて、特異的な画像を取得する一方,温度で融解するリポソームと抗癌剤を使用することで、加温誘導による局所DDSを可能にするための基盤開発を目的とした。
研究方法
本システムをに必須要件であるMRI造影剤としての磁性体ナノ粒子、その表面にぺプチドを付加するための技術および、加温誘導で内包された抗ガン剤を効率的に放出させる感温性リポソームの創出のための開発を行った。
結果と考察
標的ペプチドを結合させた磁性体ナノ粒子を担癌マウスに投与後、MRI解析することで、腫瘍組織を画像化することが可能になった。また、担癌マウスに抗ガン剤を包埋したリポソームを投与し、局所に加温誘導すると、腫瘍の増殖を阻害できることが分かった。
結論
本システムは、非侵襲的診断/治療を可能にする新しい医療技術の開発に貢献できるものと期待されす。今後、難治性腫瘍である膵臓癌の検出、治療法開発に発展させる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200609006B
報告書区分
総合
研究課題名
標的ペプチド付加型感温性ナノミセル及び高周波焦点照射による局所DDSの開発
課題番号
H16-ナノ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川正勝(名糖産業名古屋研究所)
  • 河野健司(大阪府立大学工学部)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター 血液疾患研究部)
  • 畠 清彦(財団法人癌研究会附属病院化学療法科)
  • 山下 克美(金沢大学大学院自然科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MRIで病変を検出しながら、高周波照射を用いて局所DDSを行うためのシステム開発を目指す。そのため、標的ペプチドを搭載した磁性体ナノ粒子による微少病変のMRI検出と加温誘導に厳格に制御される感温性リポソームの開発を具体な到達目標とした。
研究方法
各種磁性体ナノ粒子を作成し、マウスに投与した後の血中半減期をT2緩和時間を測定することで解析した。さらに標的ペプチドを種々のモル比で磁性体ナノ粒子に結合させ、試験管内およびin vivoでの標的細胞をMRIにより検出した。温度応答性高分子を用いて作成したリポソームの温度反応性を検証した。抗ガン剤を包埋した感温性リポソームを担癌マウスに投与した後、局所に加温誘導することで、腫瘍増殖に対する阻害効果を解析した。
結果と考察
鉄磁性体ナノ粒子の血中滞留時間は表面の陰性荷電量に依存し、粒子サイズに逆相関した。磁性体1分子に対して10-15個のペプチドを付加することにより、標的分子への強い結合性が検出された。In vitroでペプチド結合型磁性体ナノミセルを標的分子発現細胞に作用させると、標的分子発現細胞がMRIにより再現良く検出された。さらにマウスin vivoでも腫瘍組織に集積した磁性体をMRIで検出できることが分かった。分子量10000程度の温度応答性共重合体を用いたリポソームは、40℃以上において内包物の放出が促進され、45℃付近で極めて速く融解することで、内容物を放出する特性を示した。また、この共重合体の複合化は、血中滞留性に優れているPEG修飾リポソームへの温度感受性の付与に対しても有効であり、高い温度応答機能と良好な血中滞留性を併せ持つリポソームの構築に成功した。次に、このリポソームを担癌マウスに尾静脈投与し、その後の腫瘍の局所加温(10分間、45℃)による腫瘍への影響を観察した。その結果、局所加温した場合に腫瘍成長が強く抑制された。また、リポソーム投与後の加温のタイミングとして、投与12時間および24時間後に加温することにより抗腫瘍効果が高まることがわかった。
結論
本プロジェクトにより、微少病変の画像化と局所DDSのためのシステムの可能性が示された。今後、難治性腫瘍である膵臓癌を標的としたシステム開発を目指す。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
標的化に良好な磁性体ナノ粒子を作成し、これに標的ペプチドを付加したプローブを用いて、癌病変のMRI画像の得る事が可能になった。一方,42度で急激に融解する温度反応性リポソームを開発し、このリポソームに抗癌剤を包埋し、外部から加温誘導することで、局所における癌組織の増殖を抑制することが可能になった。
臨床的観点からの成果
理想的な化学療法を実現するためには、標的病巣を的確に検出し、選択的に薬物を送達する技術の確立が必要である。最近、MRIにより病変を検出しながら、高周波照射を用いて患部温度を上昇させることで、温熱加療を可能にする医療機器が開発された。本研究課題で開発されたシステムは、このような機器を用いた非侵襲的治療法の実現に貢献するものであり、この3年間で得られた研究成果は、今後の臨床展開において、重要な情報となる。
ガイドライン等の開発
その他行政的観点からの成果
その他のインパクト
温度応答性リポソームに関する報道。
日経サイエンス、2006年9月号 18ページ。「熱すると抗ガン剤を放出」
朝日新聞夕刊(2006. 5. 15)「抗がん剤放出にメ温度スイッチモ.実験でがん抑制効果」
日経新聞朝刊(2006. 5. 15)「抗がん剤集中投与微小カプセル開発」
日刊工業新聞(2006. 5. 15)「体外から温めると壊れるDDS高効率にがん狙い撃ち」
毎日新聞夕刊(2006. 5. 22)「温めると壊れる微小カプセル.抗がん剤病巣狙い撃ち」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hoshino S, Sun B, Konishi M, et al
Vpr in plasma of HIV-1-positive patients is correlated with the HIV-1 RNA titres.
AIDS Res. Hum. Retrovir. , 23 , 393-399  (2007)
原著論文2
Nakai-Murakami C, Shimura M, Kinomoto K, et al.
HIV-1 Vpr induces ATM-dependent cellular signal with enhanced homologous recombination.
Oncogene , 26 , 477-486  (2007)
原著論文3
Tachiwana H, Shimura M, Nakai-Murakami C, et al.
HIV-1 Vpr induces DNA double-strand breaks.
Cancer Res. , 66 , 627-631  (2006)
原著論文4
Terui Y, Sakurai T, Mishima Y, et al.,
Blockade of bulky lymphoma-associated CD55 expression by RNA interference overcomes resistance to complement-dependent cytotoxicity with rituximab.
Cancer Sci. , 97 , 72-79  (2008)
原著論文5
Uchida S, Kubo A, Kizu R, et al.
amino acids C-terminal to the 14-3-3 binding motif in CDC25B affect the effciency of 14-3-3 binding
J. Biochem. , 139 , 761-769  (2006)
原著論文6
Uchida S, Kuma A, Ohtsubo M, et al.
Binding of 14-3-3b but not 14-3-3a controls the cytoplasmic mocalization of CDC25B: binding site preference of 14-3-3 subtypes and the subcellular localization of CDC25B.
J. Cell. Sci. , 117 , 3011-3020  (2004)
原著論文7
Mizoguchi I, Ooe Y, Hoshino S, et al.
Improved gene expression in resting macrophages using an oligonucleotide derived from Vpr of human immunodeficiency virus type-1.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 338 , 1499-1506  (2005)
原著論文8
Shimura M, Tokunaga K, Konishi M, et al.
Premature sister chromatid separation in HIV-1-infected peripheral blood lymphocytes.
AIDS , 19 , 1434-1438  (2005)
原著論文9
Shimura M, Saito, A, Matsuyama S, et al.
Element array by scanning x-ray fluorescence microscopy after CDDP treatment.
Cancer Res. , 65 , 4998-5002  (2005)
原著論文10
Taguchi T, Shimura M, Osawa Y, et al.
Nuclear trafficking of macrophages by an ologopeptides derived from Vpr of human immunodeficiency virus type-1.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 320 , 18-26  (2005)
原著論文11
Uchida S, Ohtsubo M, Shimura M, et al.
Nuclear export signal in CDC25B.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 316 , 226-232  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-