微細鉗子・カテーテルとその操作技術の開発

文献情報

文献番号
200609003A
報告書区分
総括
研究課題名
微細鉗子・カテーテルとその操作技術の開発
課題番号
H14-ナノ-指定-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
垣添 忠生(国立がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 寿光(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 石山 和志(東北大学電気通信研究所)
  • 大原 健一(ペンタックス株式会社ライフケア事業本部医用機器事業部)
  • 玉川 克紀(株式会社玉川製作所)
  • 荒井 保明(国立がんセンター中央病院)
  • 佐竹 光夫(国立がんセンター東病院)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
44,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超早期で微小ながんの、低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療を可能とする、微細鉗子・カテーテルなどの医療機器を開発する。特に消化管や血管などを介することで組織に損傷を与えない、生体構造と適合性の良い本来適切な診断・治療技術開発とする。
研究方法
 構造が簡単で安価であり、体外から非接触で確実な動力を発揮する磁気を動力や誘導として用い、微細加工技術を導入することで微細医療機器を開発する。磁気誘導医療自体は全く新規の開発であるため、基礎的な技術や機器装置の開発から段階的に行うと共に、医療の現場での磁気誘導医療の早期具現化も行う。この具現化を基にして、局所診断・治療の鍵となる微細内視鏡システムを開発すると共に、将来のための発展的な開発も行う。
結果と考察
 磁気誘導医療の早期具現化として、胃がんの内視鏡的切除時に病変を把持して、体外から加えた磁気により固定および牽引する、磁気誘導微細鉗子(磁気アンカー)とその駆動装置を使用した臨床試験は、予定症例の集積を終了した。現在結果を纏めて解析しているが、特記すべき有害事象もなく、切除時間の短縮や難度の低下などに期待されている。この結果を基に、現在標準化のための開発を開始したところである。
 微細内視鏡開発も磁気誘導医療の具現化を受けて、実際的な診断・治療を目的に基本的な外径を0.5mmへと更に細径化した。十分な誘導力を発生するための磁性体量を確保するために複合構造としたが、軽量化と高磁力化を両立するため開発した超伝導電磁石で誘導を行うと、屈曲の支点となる部分の組織への傷害が懸念された。そこで開発方針を柔軟性と耐久性の両立に変更して、新たな微細内視鏡を開発した。動作実験と改良を繰り返して磁力を強化した超伝導電磁石を動物実験施設に搬入し、腎動脈内(ブタ)での誘導実験を行った。磁気とX線透視装置の光電子増倍管が干渉するためにブラインド操作で行ったが、干渉のないフラットパネルX線透視装置を使用すれば十分誘導できると期待される結果を得た。以上の結果を基に、並行で行っている自動誘導などの要素技術開発も導入し、更に発展的な開発研究を行っていく予定である。
結論
 早期胃がんの内視鏡的切除用磁気アンカー機器装置は臨床試験を終了し、標準化のための開発を開始した。微細内視鏡は動物実験段階に達し、今後も継続して開発していく。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200609003B
報告書区分
総合
研究課題名
微細鉗子・カテーテルとその操作技術の開発
課題番号
H14-ナノ-指定-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
垣添 忠生(国立がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 寿光(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 石山 和志(東北大学電気通信研究所)
  • 大原 健一(ペンタックス株式会社ライフケア事業本部医用機器事業部)
  • 玉川 克紀(株式会社玉川製作所)
  • 荒井 保明(国立がんセンター中央病院)
  • 佐竹 光夫(国立がんセンター東病院)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超早期で微小ながんの、低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療を可能とする、微細鉗子・カテーテル等の医療機器を開発する。特に消化管や血管等を介することで組織に損傷を与えない、生体構造と適合性の良い適切な診断・治療技術開発とする。
研究方法
 構造が簡単で安価であり、非接触で確実な動力を発揮する磁気を動力に用い、微細加工技術を導入して微細医療機器を開発する。磁気誘導医療自体は新規の開発であるため、基礎的な開発から段階的に行うと共に、医療の現場で磁気誘導医療の早期具現化も行う。これを基に診断・治療の鍵となる微細内視鏡システムを開発すると共に、将来のための発展的な開発も行う。
結果と考察
 基礎実験の結果磁気吸引力と磁気トルクを利用することとし、必要となる各種基本的磁気誘導装置の概念を特許出願すると共に実際に各種基本装置を開発した。
 磁気誘導医療の早期臨床導入を目的に、早期胃がんの内視鏡的切除の際に病変を微細鉗子で把持し、体外から印加した磁気で固定、牽引する、磁気誘導微細鉗子(磁気アンカー)とその駆動装置を開発した。動物実験を含めた動作検証の結果を受け、臨床試験計画を作成して倫理審査委員会の許諾を得て臨床応用を開始したが、平成18年度に予定症例を集積して終了した。現在結果を纏めて解析中であるが、特記すべき有害事象もなく、切除時間の短縮や難度の低減に期待されている。この結果から、標準化のための作業を開始した。
 微細内視鏡は先端に強磁性体キャップを装着することで屈曲機構を省略し、外径0.8mm、イメージファイバー数3000本でまず試作した。磁気アンカーの具現化を受けて基本的外径を0.5mmへと更に細径化し、磁性体量の確保のために複合構造とした。磁気誘導装置の軽量化と高磁力化のために超伝導電磁石を開発して誘導実験を行うと、屈曲による組織傷害が懸念されたために、開発方針を柔軟性と耐久性の両立に変更して新たな微細内視鏡を開発した。X線透視装置の光電子増倍管は磁気と干渉するため、ブラインド操作で腎動脈内(ブタ)で誘導操作を行ったが、干渉のないフラットパネルX線透視装置を使用すれば十分適切な誘導が可能であったと期待される結果を得た。
結論
 磁気アンカーは臨床試験によって適切な医療機器と考えられ、臨床標準化開発が必要と考えられた。また微細内視鏡は動物実験段階に達し、今後も継続して開発研究を進めるべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 磁気誘導をカテーテルの誘導補助に導入しようという取り組みは古くからあるが、効果が不明確であるためか現在一般的に施行されていない。これに対して意義の明確な磁気誘導医療技術として、早期胃がんの内視鏡切除時に、手術の助手のように磁気誘導微細鉗子で切除を補助する、磁気アンカー機器装置を開発した。本邦において進んでいる内視鏡治療と胃がん診療を組み合わせ、新たな技術である磁気誘導の医療への導入を行うなど、国際的にも本邦の技術を示す意義の大きな開発成果であると考えられる。
臨床的観点からの成果
 診断機器の進歩と普及によって多数発見される、超早期で微小ながんを含む病変に対して、これまでの診断・治療を行った場合には精度が低く、侵襲も過剰である可能性がある。そこで消化管や血管などの体腔を介した、本来適切な生体構造との適合性が良い、低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療機器の開発が必要である。この点で磁気アンカーは早期胃がんの内視鏡的な切除を標準化する技術であり、また微細内視鏡は生検から局所治療まで広く応用可能な技術であり、臨床的意義は大きいと考えられる。
ガイドライン等の開発
 これまでガイドライン等の開発は行っていない。しかし将来磁気誘導微細鉗子(磁気アンカー)による早期胃がんの内視鏡的切除が標準化される段階で、磁気アンカー機器装置を使用した適切な切除法としてガイドラインを作成する可能性はあると考えられる。また磁気誘導医療が標準化する場合には、強力な磁気装置を医療に使用するための安全指針の作成を行う可能性はある。
その他行政的観点からの成果
 磁気アンカーを使用した早期胃がんの内視鏡的切除はこれまでに、BT戦略会議用資料、ナショナルセンターの独立行政法人化を考える有識者会議の資料、オランダ健康福祉大臣視察時の提示資料、また次世代医療機器評価指標策定事業の医療機器審査WGのナビゲーション医療分野のモデル機器として使用されている。
その他のインパクト
 当該研究は、臨床応用、更に臨床医療における標準化を目的に開発研究を行っている。そのために重要な特許出願を重視し、これまでにこの事業に関連する特許出願は、海外での出願の2件を含む計49件となっている。また新たな医療技術として何度かマスコミにも取り上げられるなど、一般国民への啓蒙活動も行っている。

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
82件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計49件
その他成果(特許の取得)
0件
出願49件、取得3件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi T, Tamakawa T, Kakizoe T, et al.
Magnetic anchor for more effective endoscopic mucosal resection.
Japanese Journal of Clinical Oncology , 34 (3) , 118-123  (2004)
原著論文2
Nomori H, Kobayashi T, et al.
Fluorine 18-tagged fluorodeoxyglucose positron emission tomographic scanning to predict lymph node metastasis, invasiveness, or both, in clinical T1 N0 M0 lung adenocarcinoma.
The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery , 128 (3) , 396-401  (2004)
原著論文3
Nomori H, Kobayashi T, et al.
11C-Acetate positron emission tomography imaging for lung adenocarcinoma 1 to 3 cm in size with ground-grass opacity images on computed tomography.
The Annals of Thoracic Surgery , 80 (6) , 2020-2025  (2005)
原著論文4
Uchino H, Kakizoe T, et al.
Cisplatin-incorporating polymeric micelles (NC-6004) can reduce nephrotoxicity and neurotoxicity of cisplatin in rats.
British Journal of Cancer , 93 (6) , 678-687  (2005)
原著論文5
Matsushita H, Kakizoe T, et al.
A new method for isolating colonocytes from naturally evacuated feces and its clinical application to colorectal cancer diagnosis.
Gastroenterology , 129 (6) , 1919-1927  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-