脱細胞化スキャフォールドを用いる新規再生筋組織作製の基礎研究

文献情報

文献番号
200608076A
報告書区分
総括
研究課題名
脱細胞化スキャフォールドを用いる新規再生筋組織作製の基礎研究
課題番号
H18-再生-若手-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
江橋 具(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里俊哉(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、動物の骨格筋や心筋を超高静水圧印加処理することにより、脱細胞化筋スキャフォールドを作製し、これに未分化・未熟な細胞を播種して三次元培養することで、大きく厚みのある再生型筋肉移植片を生体外にて構築させることを目的とする。
研究方法
 ブタ大腿筋や心筋を3.0 mm の板状にスライスし、筋線維の方向が長軸となる長方形に細切した。これをPBSに浸漬して980 MPaの超高圧力を10分間施圧し、細胞を破壊、その後洗浄工程を経て脱細胞化筋スキャフォールドとした。
 作製したスキャフォールドは、通常の細胞懸濁液の滴下ではほとんど細胞が接着しなかったことから、細胞播種法を検討した。すなわち、遠心操作による方法、フィブリンやコラーゲンのゲルに懸濁して接着させる方法、さらに有針注射器や無針注射器を用いる方法について検討した。
 骨格筋から作製したスキャフォールドを用いた細胞培養を行った。培養細胞はブタ骨格筋筋芽細胞やラット大腿骨由来骨髄細胞などを用いた。細胞を播種したのち、スキャフォールドを伸長させてから静止して培養を行う「伸長刺激」を行い、細胞の分化に及ぼす影響を調べた。
結果と考察
 作製したスキャフォールドは良好に脱核されており、力学特性としての弾性率を引張り試験により計測したところ、脱細胞化処理の前後でほとんど変化がなかったことから、筋肉再生のためのスキャフォールドとして適切であると考えられた。
 骨格筋、心筋それぞれから作製したスキャフォールドはもとの組織学的構造の違いから、空隙率や孔径に差があり、特に心筋から作製した場合には骨格の密度が高かったため、既存の細胞播種法では細胞をスキャフォールド表面および内部に接着させることはできなかった。そこで新規細胞播種法として、糖尿病患者が自己インスリン注射用に用いる無針注射器を用いて細胞をスキャフォールドに播種する方法を開発し、注射器の噴出圧力などの適切な播種条件を決定することで、脱細胞化心筋スキャフォールドの内部に細胞を点在させることが可能になった。
 脱細胞化骨格筋スキャフォールドは、遠心操作によりラット骨髄由来幹細胞を播種して3日間静置培養し、その後スキャフォールドを筋線維方向に長さ 10% 伸長して、細胞への伸長刺激を開始した。すると、伸長刺激を開始してから3日後に細胞が伸長方向に細長く伸びて一部では筋管細胞様の形態を示した。
結論
骨髄由来幹細胞は伸長刺激により筋細胞へ分化する可能性が示唆された。

公開日・更新日

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