角膜上皮細胞の生体外での未分化能維持の研究

文献情報

文献番号
200608074A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜上皮細胞の生体外での未分化能維持の研究
課題番号
H18-再生-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川北 哲也(東京歯科大学市川総合病院)
研究分担者(所属機関)
  • 榛村 重人(慶応大学 医学部 眼科)
  • 比嘉 一成(東京歯科大学市川総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マウス角膜上皮未分化細胞をモデルとして、より少ない組織から未分化上皮細胞を分離し、その表現型を保持したまま増殖させる方法を開発し、そのメカニズムを解明する。さらにその増殖プロセスで、細胞培養条件の変化により、異常分化する可能性があるかどうかを検討する。
研究方法
1.我々が樹立したマウス角膜上皮未分化細胞を、羊膜上培養後、重層化マウス上皮シートを作成した。その一部を、移植前に分化マーカー(p63、Keratin 12、Keratin 14、Involucrin、Pax6)の発現を、免疫染色、RT-PCRを用いて調べた。
2. ウサギの角膜上皮と輪部上皮を擦過除去し、結膜を輪部で全周に渡り切除することにより、角膜輪部機能不全モデルを作成し、同時にマウス角膜上皮シート移植を施行した。
3. この細胞を、細胞播種密度を変えて培養し、α-SMAの発現を調べた。また上皮マーカーであるp63との二重染色を行った。そのメカニズムについて、Smad-TGF-βシグナリング (Smad4)、Wntパスウェイについて、免疫組織学的検討を行った。(β-catenin, LEF-1, E-cadherin)また、高細胞密度で培養した細胞培養液を回収しELISA法でTGF-βの濃度を確認した。
結果と考察
1.長期継代培養した細胞からも重層化マウス上皮シートを作成できた。免疫染色ではKeratin 12(-)、Pax6(-)、Keratin 14(+)Keratin 10 (-) p63(+)Involucrin上層(+)で、RT-PCRの結果も同様であった。
2. ウサギ角膜輪部機能不全モデルへの上皮シート移植は、炎症が強いため上皮の生着が困難であった。現在、炎症の少ない同条件で実験可能なウサギ角膜上皮欠損モデルを作成中である。
3. 高細胞密度の領域で、α-SMAの発現を認めた。さらに同領域で、Smad-TGF-βシグナリング 、Wntパスウェイ(β-catenin, LEF-1, E-cadherin)の活性化を認めた。細胞培養液中のTGF-β1,2の濃度は上皮を刺激するレベルに上昇した。
結論
角膜輪部由来のひとつの細胞から角膜を覆える上皮シートが作成できたが、移植実験はいまだ成功していない。角膜輪部上皮細胞といった組織分化度の高い細胞でも、上皮間葉系移行を起こし瘢痕を引き起こしうる未分化細胞が存在し、生体でも同様の事が起こっている可能性が示唆された。

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