膵上皮幹細胞による糖尿病細胞治療に関する研究

文献情報

文献番号
200608073A
報告書区分
総括
研究課題名
膵上皮幹細胞による糖尿病細胞治療に関する研究
課題番号
H18-再生-若手-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 一真(京都大学医学部附属病院 探索医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 正顕(神戸学院大学薬学部 社会薬学部門)
  • 片山 弘一(京都大学医学部附属病院 探索医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14年に実施された糖尿病実態調査によると、我が国の糖尿病患者数は約740万人にのぼる。従来のインスリン薬物療法や食事運動療法では、重度糖尿病患者の血糖値を生理的範囲内にコントロールすることは困難であることから、糖尿病の移植医療に期待が寄せられている。現在、エドモントンプロトコールによる膵島移植が糖尿病に対する根治療法として注目視されているが、深刻なドナー不足が解消される見通しが立たないことから、多数の糖尿病患者に適用することは現実的に困難である。本研究の目的は、このようなドナー不足の問題を解決するために、in vitroで長期間自己複製可能な体性幹細胞から膵β細胞を分化誘導する方法を開発することである。
研究方法
研究代表者らは、マウス新生児膵から膵上皮幹細胞候補(Pancreatic epithelial stem: PES)細胞を単離培養することに成功した。このPES細胞は、旺盛な増殖力を長期間保持し、遺伝子プロファイルは膵原基細胞のものと酷似していた。そこで、研究代表者らは以下の3つの課題について研究を行った。
①PES細胞から膵β細胞への分化誘導法の確立
膵発生学上、重要な転写因子のうち11種類をアデノウイルスベクターによりPES細胞に導入し、膵β細胞関連遺伝子を評価した。
②分化誘導したPES細胞の機能評価
転写因子を導入したPES細胞の電気的興奮性をPatch Clamp法により検討した。
③ヒトPES細胞の単離培養法の確立
膵臓ガンの手術で摘出された成体ヒト膵組織を材料に、ヒトPES細胞樹立を試みた。
結果と考察
①PES細胞から膵β細胞への分化誘導法の確立
NeuroDの導入によりグルコース応答性インスリン分泌を担うATP感受性カリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、開口放出関連因子の発現誘導を認めた。また、MafAを補うことによりインスリン遺伝子の誘導が認められた。
②分化誘導したPES細胞の機能評価
転写因子を導入したPES細胞では、電位依存性カルシウムチャネルの活性を認めた。
③ヒトPES細胞の単離培養法の確立
数例の膵ガン摘出患者から組織の提供を受け培養を試みたが、現在のところ樹立に至っていない。
結論
研究代表者らが同定したPES細胞は、糖尿病の細胞治療のソースとして有望な特徴を保持していると考えられた。

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