糖鎖シグナルの異常による肺気腫の発生機構の解明と治療戦略

文献情報

文献番号
200607063A
報告書区分
総括
研究課題名
糖鎖シグナルの異常による肺気腫の発生機構の解明と治療戦略
課題番号
H18-ゲノム-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 直之(大阪大学微生物病研究所寄附研究部門疾患糖鎖学(生化学工業))
研究分担者(所属機関)
  • 松本 明郎(大阪大学微生物病研究所寄附研究部門疾患糖鎖学(生化学工業))
  • 三善 英知(大阪大学(大学院)医学系研究科生化学)
  • 顧 建国(東北薬科大学薬学部細胞制御学教室)
  • 別役 智子(北海道大学病院第一内科)
  • 前野 敏孝(群馬大学医学部附属病院呼吸器アレルギー内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 肺気腫を代表疾患とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)は日本での推定患者数が530万人以上、また2020年までには先進国における死亡原因の第3位になることが予想される主要疾患であり、医療費のみならず労働力に対する社会的影響も重大である。そのため、病因の解明に加え疾患特異的な治療手段の開発が急務とされている。
 我々はα1,6フコース転移酵素(Fut8)欠損マウスを用い、コアフコースの欠損がTGF-β受容体機能を直接的に抑制し肺気腫様病態を惹起することを示した。糖鎖異常によるシグナル異常という新しい解釈を用いてヒトの肺気腫病態への理解を深めるとともに、治療手段を提供していくことを目標として本研究を開始した。
研究方法
1.TGF-β受容体の糖鎖修飾にもとづく機能制御メカニズムの基礎的解析:培養細胞系における発現系を確立し、受容体機能に対するFut8活性が及ぼす影響を検討する。
2.タバコ等によるFut8修飾および制御の有無を培養細胞と動物において検討:肺気腫発症の第一原因である喫煙がFut8活性に与える影響の評価と肺気腫様病変の発症に対する喫煙とFut8活性の相乗効果について検討を行なう。
3.ヒト肺気腫患者より採取された気管支肺胞洗浄液におけるFut8活性の測定:ヒトにおけるFut8活性と肺気腫の発症または病態形成との関連性について検討する。
結果と考察
 平成18年11月より実質的に開始されたため、各研究課題が準備段階にある。
1:培養細胞系を用いたTGF-β受容体機能を解析する技術を応用し、Fut8ノックアウトマウス由来の線維芽細胞内におけるTGF-β受容体機能を観察することを目的とした実験を進めた。受容体発現系に用いる各種プラスミドの構築ならびにそのアッセイ系の確立をおこなっている。
2:喫煙がFut8活性に与える影響の評価と、肺気腫様病変の発現に及ぼす喫煙とFut8活性の相乗効果について動物モデルならびに培養細胞系の双方から検討を開始した。動物モデルでは通常6ヶ月間の喫煙暴露が必要なため、現在長期ならびに短期間モデルに対する喫煙暴露実験を行なっている。
3:ヒト肺気腫患者由来の気管支肺胞洗浄液(BALF)から取得された細胞を用い、Fut8活性と病態との関連性を調べるためのサンプル収集を倫理委員会の承認のもと開始した。
結論
1:線維芽細胞における発現系の構築を終え、アッセイに用いるプラスミド構築・アッセイ系の確立を行なっている。
2:Fut8ヘテロノックアウトマウスに対する喫煙暴露実験を実施中である。
3:気管支肺胞洗浄液より回収された細胞におけるFut8活性の測定法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
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