マイクロアレイ技術を用いたATLのゲノムワイドな解析による新規治療標的分子の探索

文献情報

文献番号
200607061A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロアレイ技術を用いたATLのゲノムワイドな解析による新規治療標的分子の探索
課題番号
H18-ゲノム-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一成(国立感染症研究所)
  • 小川 誠司(東京大学医学部附属病院)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所)
  • 澤 洋文(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
37,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLは、HTLV-1の感染後数十年を経て発症する極めて悪性度の高い末梢性T細胞腫瘍であり、今後120万人のキャリアから約5万から10万人のATLの発症が推定されるが、現時点では有効な治療手段・発症予防法が全く知られていない。本疾患の克服は我が国の医療・行政上の極めて重要な課題である。本分担研究は、近年のゲノム科学の進歩を背景として、最先端のマイクロアレイ技術を駆使した大規模ゲノミクスにより、ATLの発症に関わるゲノム変異を網羅的に探索し、同定された変異の生物学的・機能的な解析によるATL発症の分子メカニズムの解明を通じて、本疾患に対する新規分子標的薬剤・診断技術の開発のための基盤を構築する。
研究方法
JSPFADおよび関連施設で集積された75例のATL検体について、Affymetrix GeneChip 250Kアレイおよび我々が独自に開発したCNAG/AsCANRプログラムを用いてゲノムコピー数およびアレル不均衡の網羅的な解析を行った。同定された異常領域の一つ(6q21)より同定された標的癌抑制遺伝子の候補Blimp-1について、同遺伝子の異常にともなうATL発症の分子メカニズムを検討した。
結果と考察
Affymetrix_ GeneChipおよぴCNAG/AsCNARを用いた75症例のATLのゲノム異常の網羅的解析により、ATLで特徴的に認められるゲノム異常として、1q, 3p, 3q, 7q, 9q, 14q, 16p, 18q, 19pにおけるコピー数の増加, 2q, 4p, 5q, 6q, 7q, 9q, 10p, 13q, 18pにおけるコピー数減少が同定された。ATLで共通に欠失をみとめる領域のうち、6q21に集積するホモ接合性欠失の詳細なマッピングから、ATLで変異を生じその発症に関わる標的遺伝子候補としてBlimp-1を見いだした。Blimp-1の機能解析からは、同分子がRb依存性に細胞周期のG1停止を、また、p53依存性にG2停止を誘導すること、G1停止はCDK阻害因子p21およびp57の発現誘導を介していることが示された。
結論
高密度SNPアレイを用いたATL75例におけるゲノムコピー数解析により、ATLで特異的に認めら多数の増幅領域・欠失領域およびアレル不均衡を示す領域を同定した。このうち、6q21の共通欠失領域についてその標的となる遺伝子Blimp1を同定し、Blimp1が細胞周期制御を負に制御する癌抑制遺伝子である可能性を示した。また、ATLにおいてサイトカイン産生の異常がその発症に関与する可能性をしめした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-