歩行中の路面落下刺激に対するヒトの姿勢調節能力

文献情報

文献番号
199700171A
報告書区分
総括
研究課題名
歩行中の路面落下刺激に対するヒトの姿勢調節能力
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、歩行中の路面落下刺激に対する動作および神経筋応答を調べることであった。
研究方法
路面落下装置(Fall Plate)を用いて静止立位時と歩行時に落下刺激を与え、それに対する下腿筋群の応答を調べる実験を行った。大型床反力計上にFall Plateを置き、前後に同じ高さの木製の台を設置し長さ約5mの歩行路を作成した。その歩行路上を歩いている最中にFall Plateを落下させ、それに対する応答を筋電図を用いて調べた。Fall Plateは被検者がFall Plateを踏み、床反力が体重の50%から70%に達したときに落下した。予測の影響を除去するために、落下は無作為間隔で起こるように調節した。筋電図はテレメーター法を用い、片側の眼輪筋,三角筋,大腿直筋,前脛骨筋、ヒラメ筋、内側腓腹筋、外側腓腹筋から記録した。
路面落下刺激に対する身体応答の動作学的特徴を明らかにするために,三次元動作解析装置(VICONシステム,Oxford Metrics社)を用いて動作解析を行った.
結果と考察
立脚期初期の落下刺激に対して下腿の筋群に潜時100ms以内の反応が認められた。この応答は静止立位時に比べて、歩行時に増強し、しかも下腿三頭筋群の中で内側腓腹筋で最も顕著に増強した。さらに,眼輪筋や三角筋のように近位の筋ほど応答の潜時が短く,この応答が中枢性に起源があることが示唆された.動作解析の結果,路面落下後,上肢の前方挙上,立脚時間,遊脚時間の延長にともなう歩行周期の増加が観察された.上肢の挙上は,特に第一回目の落下刺激に対して顕著に現れ,その後の刺激に対しては応答が減弱する傾向があった.この結果は刺激に対する生体側の適応を表していると考えられ,下肢の筋電図の結果とも一致した.
落下刺激による応答性分はその潜時から前庭脊髄反射である可能性が高いが,その一部に驚愕反応も含まれていると考えられる。いずれにしても、今回の研究結果は、歩行中の落下刺激によって、前庭感覚の機能を評価できる可能性を示唆している。
結論
歩行中の落下刺激によって、下腿の筋群に前庭脊髄反射が現れることが示された。今後、転倒のメカニズムとこの反射との関係を明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)