臓器移植の社会基盤整備に関する研究-脳死臓器提供を承諾した家族の心情と臓器移植コーディネーターによるドナー家族ケアに関する経年的調査研究

文献情報

文献番号
200608050A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植の社会基盤整備に関する研究-脳死臓器提供を承諾した家族の心情と臓器移植コーディネーターによるドナー家族ケアに関する経年的調査研究
課題番号
H17-再生-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
研究分担者(所属機関)
  • 朝居 朋子(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
  • 芦刈 淳太郎(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
  • 横田 裕行(日本医科大学附属病院高度救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,274,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
より良い家族支援体制構築のための基礎資料を得るべく、1.脳死臓器提供者家族(以降ドナー家族)の心理に関する研究、2.日本臓器移植ネットワークの行なったドナー家族対応の実態調査、3.ドナー家族の心理過程について研究を行う。又、4.諸外国におけるドナー家族支援の調査を行なう。この結果から移植コーディネーター(以降Co)による家族支援の標準モデルを検討・作成し、移植Coの質の向上を目指した教育・研修プログラムを開発するものである。 

研究方法
1.直接家族対応した24移植Coへ脳死臓器提供のプロセスにおける家族の懸念・関心に関する調査実施し、間接的にドナー家族の心情を類推。2.脳死臓器提供40事例への家族対応実態調査結果を統計解析。3.脳死患者家族(9家族)にlonginterview法による半構造的面接を行い、家族の心理過程の探索的研究を行った。4.日本人・日系人が多いカリフォルニアの臓器あっせん機関を訪問、家族対応に関する資料・情報を収集。北米の移植Coの教育機関NATCO主催のドナーコーディネーターコースを受講。

結果と考察
1.家族の主な懸念・関心は臓器提供時は情報公開とプライバシーの保護・臓器提供承諾する家族の範囲・提供後の身体の外見、臓器提供後は家族の喪失感や悲嘆だった。2.提供後1年間は移植Coが全提供家族対応(平均9.1回)しており、特に提供後3ヶ月以内が多く、その75%が移植者経過報告であった。臓器提供中の家族は情報公開に最も困惑していたが、臓器提供後には新聞記事などの入手希望家族や自発的に取材に応じる家族もいた。3.患者家族は突然の死別への戸惑い、入院中の現実生活と「死別」との葛藤、理解と体験の現象との不一致など、短期間の間に相反する思いの中にあることが予測された。また現段階では脳死下臓器提供は患者の生前意思が大きく働いていることが予想された。 
結論
本邦の脳死臓器提供においては厳格な手順に従うこと、社会への情報公開が必須などから、特異的な家族の心情への影響があり、移植Coの対応はその特異性に配慮していた。又、脳死患者家族には戸惑い、葛藤、不一致など多くの相反する思いの中にいることが推察された。
今後は、本研究で得た基礎資料を基に、海外における臓器提供者家族フォローのあり方を参考に、わが国における臓器提供者家族支援の標準モデルの検討・作成へと繋げたい。

公開日・更新日

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