間葉系幹細胞に由来するヒト肝細胞の移植に関する基盤開発研究

文献情報

文献番号
200608049A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞に由来するヒト肝細胞の移植に関する基盤開発研究
課題番号
H17-再生-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(国立がんセンター研究所・がん転移研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 畑田 出穂(群馬大学・遺伝子解析施設・分子生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、間葉系幹細胞から分化誘導したヒト肝細胞の能力と安全性をin vitroでの培養実験や、実験動物モデルにおける安全性などの観点から徹底的に検討することに重点を置く。本研究によってヒト肝細胞の機能と安全性が証明されれば、この細胞を実際の移植用細胞として利用するための臨床応用研究の基礎を確立することが出来る。さらに新規薬物の毒性試験や安全性試験にも本研究によって得られるヒト肝細胞は有用であり、従来の動物などに代わる信頼性の高いヒト肝細胞の利用が可能になればその経済的効果は大である。
研究方法
平成18年度は安全性に関して,未分化および分化誘導したヒト肝細胞の正常マウス肝臓への移植や皮下への移植を実施し、長期観察による(1-2年)造腫瘍性の有無の検討を開始した。さらに分化した肝細胞の網羅的遺伝子発現解析やメチル化解析に必用なRNAやDNAを採取し、そのクオリティーを評価し、解析の準備を整える。
結果と考察
癌患者の皮下脂肪から採取した間葉系幹細胞は,in vitroの分化により,肝臓の機能を持つ細胞へと変化した。これらの細胞を,SCID マウスにやヌードマウスに移植し,その安全性を確認する実験を行った。経過観察では、ヒト間葉系幹細胞から分化した肝細胞様細胞の染色体は正常であるほか、これらの細胞を肝臓に移植した群のマウスは全て健康であり,血液検査によるGOT,GPTなどの値も正常値である。また皮下に移植した群では,肉眼的には全く腫瘍の形成等の所見は得られていない。未分化の間葉系幹細胞を移植したマウス全20匹を移植後1年6ヶ月で解剖して検討したところ,肝臓を始め,全身での腫瘍等の所見は認められなかった。肝細胞に分化した細胞の造腫瘍性については継続観察中である。
結論
間葉系幹細胞からin vitroにて分化した肝細胞様細胞の動物個体レベルでの移植による安全性の検討は順調に進みつつあり,肝臓や骨髄に置ける急性の毒性や造腫瘍性は今までのところ見られていない。分化した肝細胞の網羅的な遺伝子発現解析,ならびにメチル化の網羅的解解析にも既に着手し,データが蓄積している。最終年度はこれらの動物での移植実験の結果や,ヒト正常肝細胞と比較した遺伝子発現や遺伝子のメチル化の状態を網羅的に把握し,遺伝子のエピジェネティックな変化や,遺伝子発現の変化等にも注目した検討も加え,移植細胞としての安全性に関する総合評価を行う。

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